“検索の巨人”を討てるか――中国が放つ「バーティカル」「モバイル」の刺客
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20339427,00.htm
島田昇(編集部)

2006/12/19 21:41

 “検索の巨人”Googleに対抗できるのか――。

 成長市場として注目される中国で検索関連事業を展開する企業は、このような質問をよく受けるという。

 11月に開催されたNew Industry Leaders Summit(NILS)の講演では、こうした質問に答えるのに適任と言える登壇者を招き、中国の検索関連事業における最新情報が披露された。

 登壇者は、中国で旅行情報に特化した検索サービスを展開するQunar.com Co-founder兼CEOのFrederick Demopoulos氏、同じくモバイル検索大手のYiCha Online Inc CEOのBin Liu氏の2人で、Adobe Systems Incorporated Director of Emerging Market Investmentsの田中章雄氏がモデレーターを務めた。

画像の説明 Adobe Systems Incorporated Director of Emerging Market Investmentsの田中章雄氏

 まず、田中氏は中国の検索市場に関する概況を解説。田中氏によると、現在、世界で7億人のネットユーザーに対して7分の1にあたる1億人が中国人で、同じく20億人の携帯電話利用者の5分の1にあたる4億人が中国人という状況だという。世界のネットアクセスランキングでも、Google、 Yahooなどの巨人がひしめく上位10位サイトの中で、4位、6位、10位に中国企業がランクインされているとした。

 3~4年前、日本や韓国の企業が提供するサイトも上位10位の中に見られたが、現時点で両国のサイトは見当たらない。つまり、検索を軸とする傾向にある上位サイトの入れ替わりは激しく、その大きな特徴として今、次世代ネット社会を意味するWeb 2.0のトレンドと並び、「中国」が目立って有力サイト運営企業として頭角を表してきているというのだ。

 その代表格として最初に紹介されたのが、中国語で「今日何処に行くの」という意味の「Qunar」を社名に冠したQunar.com。Co- founder兼CEOのFrederick Demopoulos氏によると、同社は2005年5月の設立から18カ月間で、中国の旅行サイトでナンバー3の地位を手に入れた。成長の原動力となったのが、特定分野に特化した検索エンジン「バーティカル検索」の存在だ。

画像の説明 Qunar.com Co-founder兼CEOのFrederick Demopoulos氏

 Qunar.comにおけるビジネスの特徴は、エンドユーザーだけではなく、旅行関係の情報を提供したいと考えている企業にとって有益なマーケティングツールとなるような提案をしている点。これを支える検索エンジンは、通常の検索では得られない整理された旅行情報を提供することに重点を置いて設計されている。

 また、すべての情報がリアルタイムの情報更新を反映した形で提供されることも大きな特徴だ。特に、旅行商品は空室状況や価格が刻々と変化することが多いため、こうした商品特性に見合った機能を搭載していることは重要で、需要もあろう。

 さらには、検索結果の品質保証を行っていることも特筆すべき点だ。何度検索しても目的のものが見つからないということがないよう、旅行に特化した検索エンジンであることから、著名な旅行サイト100社以上と契約している強みを活用し、その中から利用者が満足しうる最低限の検索結果を出せるようになっているとしている。


 その結果として中国で3位の旅行サイトとなり、そこから見えてきたユーザー層についても触れた。一言で言うと、彼らのユーザー層は富裕層となる。

 ユーザープロファイルを見ると、全ユーザーの35%が年間で4回以上旅行しており、そのうちの63%がオンライン上で予約。しかも、その72%がクレジットカードを利用している。Frederick Demopoulos氏によると、中国ではクレジットカードを持っている人が国内の数%程度なので、これらもろもろのプロファイルを見ると、ユーザー層のメーンが富裕層であることは明らかだ。

 そのため、同社では比較的高いプレミアを付けての広告販売が実現できているという。収入源は85%を広告収入に頼っているが、コンバージョンレートが通常の検索経由に比べて8倍であるということをウリにしている。

 中国では現在、「ネットマーケティングの4割は旅行関係」(Frederick Demopoulos氏)であるということから考えても、今後も大きなマーケットに対する各種施策を打ち出すことで、成長が見込めると見ている。

 バーティカル検索ということにおいては、さまざまな分野でバーティカル検索が登場しているという。ここで共通して言えることも、 Frederick Demopoulos氏は「特定の情報に特化して品質保証をすることにより、通常の検索より高いプレミアを付けられることである」との考えを示した。

次にプレゼンテーションしたのはYiCha Online Inc CEOのBin Liu氏。モバイル市場の概況とモバイル検索について解説した。

 Bin Liu氏によると、現在、ネット接続機能搭載型携帯電話の普及が高いためモバイル市場における成長の速度は日本より中国の方が早いが、市場の構図として日本と似ているという。つまり、「公式」と「非公式」とに通信事業者の“管轄内”と“管轄外”に大きく市場は分断されているというわけだ。

 例えば、大手携帯通信事業者の公式サイトに1億1000万人が訪れるのに対し、検索経由でネットを閲覧するユーザーはその3分の1以下の3400 万人という状況。ただ、ユーザーからモバイルへの検索のニーズは増加傾向にあり、一般的な検索や生活に関連したレストランや写真などの検索にも活用され始めており、「モバイルの市場は巨大」との実感が日に日に増しているようだ。
画像の説明 YiCha Online Inc CEOのBin Liu氏

 これには、そもそもの人口と携帯電話利用者の圧倒的な数に大きく寄与している面も強い。中国では4億台のケータイが普及していて、そのうち1億台がネットに接続でき、1億人というPCのネットユーザーに拮抗している。しかも、携帯電話はその携帯性と即時性がPCよりもネット利用を大きく促進する可能性が考えられる。価格の面で見ても、PCでのADSLが100元なのに対し、携帯電話でのパケット通信定額制は20元となっている。

 そして同社が携帯電話利用者におけるネット利用で最大の着眼点は、個人情報に基づいた情報を提供できるということだ。具体的には、個人情報に基づいて推奨される検索結果や、過去の検索履歴を軸に検索結果を提案するというような手法となる。

 また、トップ50位のモバイルサイトの中で38社、さらに法人向けの2万サイトに検索情報を提供していることも同社の強み。これにより、Bin Liu氏は「中国のモバイル検索で50%以上のシェアは握っている」と認識している。

 現在、同社は中国におけるモバイル検索としては1位で、全モバイルサイトで見ても6位という位置付け。今月の中旬までに1日で710万クエリが検索されている。年末までに800万クエリまで伸び、2007年末までには第3世代携帯電話が普及する可能性なども勘案し、1日2000万クエリは見込めると見ている。

 中国のモバイル広告市場は2006年に日本円で10億円以上あるという。2010年では110億円になると言われており、Bin Liu氏は「予想より早いスピードで市場が立ち上がってくるかもしれない」との見方を示した。

 日本での展開については、「ローカルパートナーと組む形でアプローチできればいいと思っている」(Bin Liu氏)と言及している。

 ただ、これらについて田中氏は「中国はまだネット広告が発達していない。米国が約120億円、日本が約40億円なのに対し、中国は約8億円。ユーザー数の伸びに広告が追いついていないのが今の中国の現状」としており、利用者の伸びの一方で、検索に関する広告市場では多くの課題も残されている模様。中でも各方面から指摘されるGoogleの脅威に対する決定的な対抗策が見えないことは、依然として大きな課題として浮上し続けているようだ。