大棗の効果の基礎知識 (38):PTPに関する総説⑦ | besselwegのブログ

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昨日からの続き、図Bに関してです。
 
   SHP2
による脱チロシンリン酸化の系はPTP1Bとは違って、基本的にRasRafERKの経路の活性化を誘導するとされます。この点に関し次の作用が報告されています。

1) SHP2は、チロシンリン酸化を介してのRTKの細胞質内ドメインとRasGAPの結合を阻止、あるいはチロシンリン酸化を介したGab1RasGAPの結合を阻止することにより、RasGAPの機能を抑制します。上記のようにRasGAPの機能はRasの非活性化ですので、この場合結局Rasの機能亢進に働きます。

2) SHP2は、チロシンリン酸化を介したCSKPaxillinの結合を阻止します。CSKSrcの阻害作用を持ち、CSKの活性化は本来CSKSrcの非活性化→Rasの非活性化と繋がってゆきますので、SHP2はこの経路を抑制することにより結局Rasの活性化を引き起こすわけですね。

3) さらにSHP2により、Rasの抑制蛋白(regative regulator)であるSprouty蛋白が脱チロシンリン酸化します。その結果Sproutyの機能が抑制され、Rasの活性化が起こります。

4) SHP2Grb2SOSのリクルートメントのアダプターとして働きます。その結果Rasの活性化を引き起こします。

上記の1)4)の経路を通して、SHP2Ras経路を活性化すると考えられています。

 

それ以外にSHP2の作用としてRTKのチロシンリン酸化に引き続くGab1PI3Kの結合はSHP2により阻止されます。その結果下流の分子であるAKTの活性が調節されるわけですが、この様式(活性化、非活性化など)は細胞や受容体リガンドの種類により相違するようです。

さらに、SHP2によるJAK/STATJNKNFkB系に関与することも報告されています。

 本日のまとめですが、SHP2は基本的にRasの活性化を誘導すると言えますね。この点がシグナルの抑制に働くPTP1Bと違う点でしょう。
 本日は以上です。