クリッキング | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

クリッキング

先週はサンダルをせっせと作り、梅雨明けに間に合うように頑張っている生徒さんや、長い間のヒール地獄から抜け出た生徒さん、クロージングが終わり、やっとメーキングの部屋(シャバと呼んでいる)へ戻れた生徒さん達で、ワイワイやっておりました。

 また新しい生徒さんも今月は4名増えて、卒業する人と入れ替わりで新鮮な雰囲気もありました。毎年行っている教室の展示会を9月に予定しておりますので、そろそろ中だるみしている生徒さん達も、気合いを入れて頑張っていきましょう!


 前回はクリッキングについてのプチ講座。クリッキング(革の裁断)は木型作りや、底付けや、クロージングに比べると、靴作りの中では『地味』な仕事。木型作りのガッガッガ。。。と豪快に木やプラ型を大きなヤスリで削ったり、底付けの両手を思いっきり開いてウェルトを手縫いしたり、汗だくになってワニで革を引っ張ったり、ハンマーでガンガン打ったり。。。の派手な作業や、靴用ミシンでダダダーと革を縫ったり。。。って音の出るうるさい作業も無く、いたって地味。クリッカー(裁断師)の派手な動きは、巻いた革の束を肩に担いでテーブルに下ろし、ガーと広げるところぐらいかしら。。。

 裁断そのものに関しては、クリッキングナイフを90度に立てて、その角度をひたすらキープすれば良いのですが、最初はなかなかね、難しいです。

 私も最初の2,3年は革にナイフを入れる時は息を止めて切っていました。呼吸をすると肩が動いちゃうから。底付けのナイフの使い方とは使う筋肉が違いますし、肩を緩く動き易くしながら、角度をキープするのがポイントです。

 クリッカーの仕事は、ナイフを入れるだけでなく、革を選ぶところからが仕事です。『革』と一概に言っても、本当に色々あって、靴で使う『革』と鞄で使う『革』は違うし、洋服で使うのだって違うし。。。時々生徒が『東急ハンズ』で可愛い色の革を見つけたので、それで靴を作ります!とか言ってきますが、靴が作れなくはないですが、靴に必要な『強度』も『伸縮性』もないので、靴用としてはお勧めできないです。時間と労力を膨大に使って、すぐにへたれてしまう靴を作るのでは勿体ない。。。

 良い革を知るには、良い革を使ってみないと分からないし、何がどう良いのかって、言葉じゃ説明しづらいです。自分で革をスカイビングして、アッパー作ってつり込んでみて、やっとね、『良い革』と『凄く良い革』の差が分かりますし。。。

 イギリスへ革を買いに行くと、革屋さんが『これで靴を作ったら、写真送って!作り易かったか否かも教えてね』と言われます。初めて使う革はね、革屋さんも職人もちょっと緊張しますね。革屋さんで『新しい革だよ』と見せられて、一通りの革の説明を受けて、きめの細かさを目で見て、手で伸縮性を確認して、どんな靴になるのか想像して、買うか買わないかを決めるのですが、稀に、釣り込み段階で『げ!期待外れ!!』ってのもあります。タンナーさんもあの手この手で新しい革を作っているので、勉強は永遠に必須。



 革のどの個所から、どのパターンを取ってゆくかによって、仕上がりにも、底付けの作業にも影響してきます。また、革の種類によっても、靴のスタイルによっても、裁断の方向が違ったりしますので、革の知識も靴の知識も必要ですし、最良の場所を見つけ出す『目』も、厚さや伸縮性を確認できる『手』も必要ですし、なかなか奥が深いです。

  話は脱線しますが生徒さんから質問でましたので、基礎知識を。。。『皮』は鞣す以前のもので、『革』は鞣した状態の物です!初めの一歩かな。。。


 今週のプチ講座は、クロージング!!ミシンの使い方から。Thank you.