店長の城殿です。

美容師を長く続けていると、
「髪を綺麗にする」という言葉の意味を、昔よりずっと慎重に考えるようになりました。

髪は、一度の施術で驚くほど綺麗に見せることができます。

艶を出すこともできる。
手触りを変えることもできる。
広がっていた髪を収めることもできる。

だから、写真を見せて、
「一回でこんなに変わりました」
と言うこともできるんですよね。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。

ただ僕は、長く美容師をやってきた中で、
一回の施術だけを切り取って「髪が良くなった」と伝えることには、少し違和感があります。

髪は、そんなに単純ではないからです。

たとえば、傷んでいる髪そのものを、本当の意味で元通りにすることはできません。

髪は肌の傷のように、自分の力で治っていくものではない。

だから美容師にできるのは、今ある髪の状態を見極めて、必要以上に傷ませないこと。

そして、その人の髪が綺麗に見えない理由がどこにあるのかを考え、技術によって扱いやすくしていくこと。


僕は、そのほうがずっと難しい仕事だと思っています。

美容の仕事には、すぐに結果が見えるものと、時間をかけなければ見えてこないものがあります。

一回で劇的に変化させる技術もある。

でも、その「劇的な変化」が、半年後、一年後の髪にとって本当に良かったのか。

そこまで見なければ、本当の答えは分からないと思うんです。

僕が大切にしてきたのは、

今日、帰る時だけ綺麗であることではなく、
数ヶ月後に、
「あれ? 前より髪が扱いやすくなってる」
と本人が気づくような仕事です。

それは、ものすごく地味です。
SNSにも向いていない。
ビフォーアフターの一枚だけでは、なかなか伝わらない。

今日より次回。
次回より、その次。

カットの形、薬剤の選び方、髪に残す体力、日常での扱いやすさ。

その人の髪がこれからどうなっていくのかを想像しながら、一回一回の仕事を積み重ねていく。

僕にとっての「髪を綺麗にする」は、そういうことなんだと思います。

もちろん、お客様は髪の専門家ではありません。

一回目で変化が小さければ、
「効果がなかったのかな」
と思うこともあるでしょう。

反対に、一度で劇的に変われば、
「すごい技術だ」
と思うかもしれない。

だからこそ美容師側が、目の前の一回だけではなく、その先まで責任を持って考えなければならない。


「今日、一番綺麗に見せること」と、
「これから先、綺麗な髪でいられること」は、必ずしも同じではない。

ここは、ずっと大切にしてきました。

髪を綺麗にする仕事は、
何か特別なものを足し続ける仕事というより、
余計な負担を減らし、必要なことを見極め、少しずつ良い方向へ持っていく仕事なのかもしれません。

一回で魔法を見せる美容師より、
半年後、一年後に振り返った時、

「そういえば、昔より髪のことで悩まなくなったな」

そう思ってもらえる美容師でいたい。

僕が長い時間、美容師をやってきて思うのは、
本当に良い技術というのは、

施術したその日に一番大きな声を上げるものではなく、
時間が経ってからこそ答えが出るものなんじゃないかなと思っています。





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