20年前のお話です。
今とは全く事情が異なります。私の思い出話しだと思って読んでくださいね。


さて、速達で必要とされた書類一式を送ってから数日、送り返されてくることもなく、無事(?)応募締め切り日を迎えました。
まず、書類選考。通過すると横浜での面接に進めます。締め切り後2週間程度で結果が郵送されてくる予定でした。
人事を尽くして天命を待つ、といいます。送らなきゃいけないものは揃えて送ったので、あとは待つだけです。
日々の生活に忙しく(ちゃんと学校だって行ってました)時々ふと思い出すことはあっても、四六時中結果を気にして生活する余裕はありませんでした。

月が変わった頃、ポストの中に薄ーい封筒がペランと1枚届いていていました。沢山のチラシやDMの中に紛れていましたので、見逃しそうになるくらいの薄い封筒。
隅の方に劇団名と、ロゴというのでしょうか?竪琴のようなマークが印刷されていて、それに気付かなかったらうっかり捨ててしまいそうでした。
バイトから帰って来て、見つけたのがその封筒。 

あまりの薄さと頼りなさに、ああダメだったんだなーショボーンって勝手に思い込んでしまいました。

帰宅途中に寄ったコンビニの袋を台所に置いて、封筒の角をキッチンバサミで切って開けました。中を覗くと、白い紙が2枚ほど見えました。
そっと引き出して広げると
「面接審査のご案内」
の文字が目に入りました。

全く期待せず開けたからでしょうか?しばらく読むこともせず、ポカーンと口を開けて固まったのを覚えています。

しばらく字面を見つめて、ハッと我にかえりました。面接に進めた喜びはありましたが、まだ就職が決まった訳ではありません。次に進めた喜びより、面接で落とされるかもしれない不安の方が大きかったです。

面接は横浜市にある劇団本部。
日程は通知を受け取った5日ほど後。あまり日にちの余裕がありませんでした。 
「え?すぐ面接じゃん」と声に出して言ってしまいました。

だって、スーツをまだ用意してなかったんです。面接を受けたい会社は他にまだ見つかっていなかったし、劇団も面接まで進めるかどうか分からなかったので、いつ買おうか迷っていました。(ビンボー学生の哀しい性ですね)
翌日のバイト前に慌ててスーツを買いに行きました。

当時は、バブル崩壊後に長く続いた不景気の真ん中で、大学を卒業したものの勤め先が見つからないという「就職氷河期」と呼ばれる時代でした。企業説明会の案内を取り寄せようとハガキを送ったものの、待てど暮らせど音沙汰がないなんていうのはザラで、履歴書を何十枚、人によっては100枚以上書いたけれどまだ決まらない、面接なんて夢のまた夢😢なんていう話が其処此処で聞かれたものです。

そんな中で、リクルートスーツを買いに行って
「面接に進めたんです」
って言ったものだから、お店の方がそれはもう我が事のように喜んでくださっておねがい
「貴女ならきっと受かるわ。頑張ってね」
とスーツを袋に詰めて下さいました。
それまでスーツを用意しておかなかった私の不用意を責めることなく、応援までしていただけて、それだけで受かったような気がして、ニコニコしながらバイト先に向かいました。

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