少数派に向けて | 桂米紫のブログ

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米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。

何年芸歴を重ねようが……と言うか、芸歴を重ねれば重ねる程よりそう実感するのですが、やはり「芸は人なり」だと思います。


いや何も、「清廉潔白じゃない奴は芸事に携わるな!」って意味じゃありません。


むしろ人間的欠落や弱さがある方が人間として可愛いし、そんな可愛い人間が演じる芸は、間違いなく面白いはずです。


でも独善的な人間からはきっとその独善性が芸にも滲み出ているものでしょうし、他人を見下す人間の演じる芸には、どこかにそうした他人を見下す目線が込められているものです。

よくよく観察すれば。


まぁ余程のテクニックとか、また偽善力が備わった人間ならば、そんなことすら隠し通して完璧な芸が演じられるのかもしれませんが。



ただ、一つ付け加えるなら、受け取る側の人も様々な訳ですから、独善的な受け手は独善的な芸に惹かれるのかもしれませんし、他人を見下すことに抵抗のない受け手は、他人を見下す芸をすんなりと受け入れられるのかもしれません。


要は、何が正しいとか間違っているとかではなく、あくまで演じ手と受け手は写し鏡であり、つづまるところ「自分の本質に合った芸」と出会えるどうか、それだけのことなのだと思います。



そしてそれは逆も然りで、我々演じ手は「自分の本質に合った受け手」との出会いを、常に探し求めている訳です。


なのでえらいもので、僕の濃いファンでいてくださる方は、(失礼ながら)どこか僕と似ておられます。

もちろん皆さん僕ほどダメ人間ではありませんけども……本質的な部分で、似たところがおありです。

それは、匂いで分かります。


たとえまだまだ少人数でも、そういう方にお集まり戴けるのは、とても幸せなことだと感じております。



でも僕自身がミーハーなものがあまり好きではありませんので、きっとミーハーな方達からは好かれないと思っています。

あとチケットいっぱい買ってくれそうな派手好きのお金持ちや、社会的地位の高い偉い先生みたいな人に愛想するのも苦手なんで、そういう人達がいっぱいチケット買ってくれたり、またすごくいい評価を書き記してくれたりすることも、まぁないんじゃないか思います(大前提として、そもそもそんな実力も伴ってませんし。僕)。

ということはつまり、本当の意味での売れっ子には、到底なれそうもないってことですよ。


でもいいんです。
……いえ、決して負け惜しみではなくて。
……いや、ちょっと負け惜しみかもですが。


僕に似た感覚の人達が集ってくださることに最上級の喜びと、そして勇気を戴いております故。


あの、その、つまり……何が言いたいかと申しますとね……。

いつも集ってくださり、ありがとうございます。

ということであります。