私の胸には
タトゥーがある。
 
 
"その人"は
いつでも
私のことを
『薔薇』にたとえた。
 
「美穂は薔薇のようだよ」
私のことを
薔薇から生まれた
天使だと言った。
 
 
その人と
『永遠の愛』とは
どんなものなのかを
ふたりで話した。
 
たとえば消えない何かを
互いの体に残したなら
永遠の愛の証になるのかとか
そんなことを
ふたりで話した。
 
 
だんだんとその話は
エスカレートしていき
『永遠の愛』を得るために
私はひとつのことを
思いついた。
 
タトゥーを彫ること。
 
「ねぇ
もしも
私が胸にタトゥーを彫ったら
ずっと
愛し合っていられるかしら?」
 
その人は
興味深そうに
タトゥーの話に同意した。
 
私は
『永遠の愛』を勝ち得るために
胸にタトゥーを彫ることにした。
 
 
 
けれども
私は彫ってすぐに
大きな後悔に襲われた
というのか
ハタと我に返った。
タトゥーひとつで
永遠の愛を得ることが
できるとは
やっぱり到底
思えなくなっていた。
 
 
そして
私はその後悔を
その人には告げられずに
ひとりで
思い悩むことになってしまった。
 
 
 
『永遠の愛』を勝ち得るための
タトゥー。
そうよ、そう思えば
悪くはないわ、と
自分で自分に
幾度も言い聞かせたのに
結局
その人とは別れの道を
たどることになってしまった。
 
残ったのは無残に刻んだ
薔薇のタトゥーだけ。

 
……自分の体を粗末にした
そんな愚かな恋もあった……