「人混みに行くと、ものすごく疲れる」
「特定の人と会った後、なぜか身体が重い」
「朝起きた時から身体がだるい」
このような時に「邪気を受けたのでしょうか?」と聞かれることがあります。
私は鍼灸師として身体を診る一方、密教占術の鑑定時に「邪気」について御相談を受ける事は多々あります。
ただし身体の不調をすぐに「邪気のせい」「霊的なもののせい」と考えるわけではありません。
私がまず見るのは心・睡眠・食事・生活環境・元々の体質です。
症状によっては医療機関を受診することも大切です。
その上で、それだけでは説明しにくいものがある場合には、別の可能性についても考えていきます。
東洋医学でいう「邪気」とは?
「邪気」と聞くと、霊や悪い念のようなものを想像する方が多いかもしれません。
しかし東洋医学でいう「邪気」は、それだけを意味する言葉ではありません。
東洋医学では身体を健やかに保つ働きを「正気」と考え、それに対して身体の正常な働きを乱すものを「邪」と考えます。
代表的なものに
風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪(熱邪)
があります。
風、寒さ、暑さ、湿気、乾燥、熱など私達の身近にあるものでも身体に過度な影響を与えれば「邪」となるという考え方で、これを外因と言います。
例えば、寒さで身体が冷える。
湿気の多い時期になると身体が重くなる。
乾燥によって喉や皮膚に不調が出る。
暑さによって身体が消耗する。
このような事も、東洋医学では外から受ける影響と考えます。
つまり邪気とは、単純に「怖いもの」ではなく本来整っている状態を乱すものと考えると分かりやすいと思います。
なぜ邪気の影響を受けやすくなるのか
東洋医学には「衛気(えき)」という考え方があります。
衛気は身体の表面を巡り外からの影響から身体を守る働きをすると考えられています。
身体が元気で気血水がきちんと巡っている時は外から多少の影響を受けても自分で整えていく力があります。
反対に睡眠不足、疲労、食生活の乱れストレスなどが重なり身体の状態が崩れてくると外からの影響も受けやすくなります。
ですから「外から何か悪いものを受けた」と考える前に、まず自分自身が弱っていないかを見ることが大切です。
人から邪気を受けることはある?
「人混みに行くとしんどくなる」
「ある人と会うと、ものすごく疲れる」
こうした経験をする方も多いです。
ただ、それだけで「その人から邪気を受けた」と判断はしません。
人混みに行けば、音、匂い、人との距離、緊張など、多くの刺激を受けます。
また自分自身が疲れている時には普段なら気にならない刺激にも敏感になります。
一方、宗教的な立場では、誰かの悩みや怒りなど人の念や場所から受ける影響など体調だけでは説明しにくいものについて考えます。
大切なのは最初から一つの原因に決めつけないことです。
心の状態は身体に現れる
身体を見る時に忘れてはいけないのが「心」です。
怒・喜・思・悲・恐(五志)
こうした感情が長く続けば身体にも影響します。これを内因と言います。
実際、施術をしていて身体の状態についてお話を聞いていくと
「最近ずっと腹が立っている」
「家族のことで悩んでいる」
「仕事のことが頭から離れない」
という話が出てくることがあります。
身体だけを整えればいいのではなく、今、自分の心がどのような状態なのかを見る事も大切なのです。
大切なのは【気を滞らせない事】
私が日頃から大切だと思っているのは気を滞らせないことです。
東洋医学では身体の中を気血水が巡っていると考えます。
その巡りを整えるために特別なことばかりする必要はありません。
きちんと食べる。
しっかり眠る。
適度に身体を動かす。
身体を冷やさない。
水分をきちんととる。
まずは、こうした日々の生活を整えることです。
自宅で出来る方法として乾布摩擦やセルフ灸についてお話しすることもあります。
特に乾布摩擦は難しく考えずタオルなどで身体を優しくさする程度でも構いません。
※お灸をする場合は熱さを我慢せず火傷には十分注意してください。
子供の場合は大人と同じ刺激を与える必要はなく背中などを優しくさすってあげる程度でもよいと考えています。
動画でも、こうした日常的なセルフケアについてお話ししていますので是非、ご覧ください。
邪気を怖がる必要はありません
「邪気」という言葉を聞くと
「何か憑いているのでは?」
「あの場所が悪かったのでは?」
「あの人から何か受けたのでは?」と、不安になる方もいます。
しかし邪気を知る目的は、怖がることではありません。
今の自分は整っているだろうか?と、自分自身を見直すことの方が大切です。
これは養生ともいいます。
心は疲れていないか。
眠れているか。
食事はとれているか。
生活環境はどうか。
元々の体質によるものではないか。
それでも原因が分からない場合には必要に応じて医療や東洋医学そして場合によっては宗教的な観点も含めそれぞれの専門家に相談すればよいと思います。
何でも邪気のせいにしない。
でも最初から一つの可能性だけに決めつけない。
身体、心、生活、そしてその人を取り巻く環境を広く見る。
それが身体を診る鍼灸師として仏道を歩む者として
そして密教占術を通して人と向き合う中で辿り着いた私なりの「邪気との向き合い方」です。
※なお、ここでお話ししている内容は私自身が鍼灸師として施術をしてきた中での経験や考え方を含むものです。全ての鍼灸師が同じような診立てや考え方をするわけではございません。
鍼灸師によって施術方針や捉え方は異なりますので、その点は御理解くださいませ。
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