「囚われ人―Of Human Bondage―」
ウィリアム・サマーセット・モーム
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眠り続ける幼い少年は連れて行かれた。
少年の母親は悲しみに打ちひしがれてむせび泣いた。
「あの子はどうなってしまうの?可哀そうに。」
月極契約の看護婦が女をなだめた。
やがて女は泣き疲れて静かになった。
医師は部屋の反対側のテーブルに向かった。
テーブルにはタオルが敷かれてあり、そのタオルの下には死産した赤ん坊が寝かされていた。
医師はタオルをめくって中を見た。
女のいるベッドからは仕切りで医師の姿は見えなかった。
しかし彼女には医師が何をしてるのか察しがついた。
「女の子?それとも男の子?」女は看護婦にささやいた。
「お坊ちゃんですよ、2人目のね。」
女は無言だった。
まもなくして、フィリップ付きの看護婦が戻って来た。
そしてベッドにやって来た。
「フィリップ坊ちゃまはすっかりお休みです。」
沈黙が流れる。
それから医師は再び女の脈を測った。
「差し当って、私が出来ることは何もないようだ。」と彼は言った。
「朝食後にまた来ます。」
「お見送りします。」とフィリップ付きの看護婦は言った。
彼らは沈黙したまま階下を歩いた。
玄関で医師は足を止めた。
「ケアリー夫人のお義兄さんに知らせは出したのだろうね?」
「はい、出しました。」
「どのぐらいでこちらに来られるか、分かるかい?」
「分かりません。電報を待っているのですが。」
「あの子はどうなる?何とかしないと。」
「ワトキンさんが引き取ると言っています。」
「それは誰?」
「坊やのゴッドマザーです。ケアリー夫人は助かるんでしょうか?」
医師は首を横に振った。
(ウイリアム・サマーセット・モームOf Human Bondageを和訳したものです。)
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死産の末、自らが死の床にあるフィリップ坊やのお母さま。
仕切りの向こうでは、お医者さんが死んでしまった赤子を見つめています。
ベッドの脇で心配そうにお母さまを見ているのは、
あくせる、トンコちゃん、そして新たなペットのポミしゃんです。
公園の柳の枝に引っかかってしまっているところを捕獲。
そのまま連れて来ました。
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