長く着続けられる服
最近お買い物の相談で買おうと思っているものが、どれだけ長く着られるかと言う質問が結構あります。
どのくらい長く着られるかは人によって年数も違うと思いますが、20年後も着られるかと言えば難しいと言うしかありません。
難しいというのは勘違いしてほしくないのですが、20年間ずっと買った時と同じ気分で着続けることが難しいということで、着られなくなるということではありません。
これは私の個人的な感覚ではなく、お客様の動向を何十年も見続けた経験から導いた自分なりの答えです。
今日は私が15年以上持ち続けている服を例に、それが今日までどのように着られてきたかをお話ししたいと思います。
STILE LATINOのハウンドトゥースのジャケット
スミズーラで2007年の9月に上がってきたので15年前のジャケットです。
生地は私が好きな英国のMARING&EVANS。
ブラウンのハウンドトゥースにブルーのウィンドウペンは、15年経ったも飽きがこない色柄です。
タイトなフィッティングが流行り始めた頃にオーダーしたものですが、普通のフィッティングでオーダーしたので今着てもシルエットの古臭さはありません。
唯一気になるのはラペルの幅。
当時はナローラペルが流行り始めた頃なので、スティレラティーノの定番的なモデルも襟幅が7.5㎝でした。
15年間着続けましたが、さすがに襟幅が細く感じて、ここ数年は違和感を感じながらワンシーズンに1~2回着るかどうかと言う感じでした。
またナローラペルの流れが来るかどうかわかりませんが、長く着続けたジャケットなので断捨離せずにしばらく持ち続けようと思います。
BOGLIOLIのウィンドウペン
これも15年以上前のジャケットです。
当時カシミアの製品染めのジャケット(K-JACKET)を開発し大ブレークしていたボリオリですが、BEAMSも製品染めのジャケットをオーダーしつつ、真逆のフル毛芯を使ったSARTORIAラインのジャケットも展開していました。
当時はテーラードジャケットと言えば、フル毛芯の本格的な仕立てのものしか許されなかった時代。
イタリアのブランドで比較的買いやすいプライスのフル毛芯仕立てと言えば、MACO(現CARUSO)、GIANFRANCO BOMMEZZADRI、そしてBOGLIOLIのSARTORIAラインくらいしかありませんでした。
生地がとても気に入ってオーダーしたジャケットでしたが、4~5年着た後に薄い肩パッドが入ったクラシックで中庸なシルエットがなんとなくしっくりこなくなり、そのままクローゼットで眠っていました。
3年くらい前になんとなくまた着られるかなと思い、10数年ぶりにクローゼットの奥から引っ張り出して着るようになりました。
意外にもイタリア人も含め周りの人たちからの評判が良く、気を良くして最近よく着ています(笑)。
襟幅は8.5㎝でウェストも適度に緩く、着丈も71㎝なので、見た目は15年以上前のモノには見えません。
ゴージが高くないのも今の雰囲気です。
唯一いじったのはボタン。
形も色も大きさも今ひとつだったので、オーソドックスなナットボタンに替えました。
10年くらい着ない時期があっても、長く持ち続けて再度着るようになったという一例です。
RAFFAELE CARUSOのカセンティーノのポロコート
2003年にパルマのCARUSOのファクトリーでスミズーラしたものです。
いつもリベラーノやアットリーニを着ているイタリアのある業界人が、コートは何故かCARUSOを着ていて、何故なのか聞いてみると「フル毛芯で仕立てられた本格的なテーラードコートがこんな価格で作れるんだから着ない手はないだろ」という答えが衝撃的でした。
当時の日本人的な考え方だと、なんとなくスーツやジャケットと同じ価格帯のブランドでコートのブランドも揃えるのが正しいというような風潮があったのですが、本当にモノが分かる人はブランドでモノを選ばないというのが自分的には驚きでした。
「俺は高いものは着るけど、何でも高けりゃいいってもんじゃねえんだよ」とガツンと言われたという感じなんです。
そんな経緯もあり、前から欲しかったカセンティーノの生地でこのコートをオーダーしました。
パーソナルオーダーしたものですが、自分が着ていて同じものが欲しいというお客様の声もあり、翌年お店でも展開しました。
途中肩バッドを薄いものに入れ替えたりして2000年代後半あたりまで着ましたが、その後クラシックなコートも細身で着丈が短く軽快感があるものが主流となりほとんど着ることがなくなりました。
ここ数年コートのシルエットが緩くなり着丈も長いものが戻ってきたので、3年くらい前からまた着るようになりました。
着丈が99㎝なので、今の流れからすると3㎝くらい短い感じですが、あまり気になりません。
このコートも10数年クローゼットに眠っていましたが、長く持ち続けて再度着られるようになったというパターンです。
MACKINTOSHのトレンチコート
15年前くらいに購入したものです。
身幅も着丈の長さも当時クラシックなトレンチコートとしては基本的なシルエットでした。
スリムなシルエットの流れが来ても気にせず着ていたのですが、さすがに古臭く感じるようになり、10年くらいクローゼットの奥にしまっていました。
数年前からクラシックなトレンチコートの流れが戻ってきたので、久しぶりに着てみたのですが「何かが違う・・・」
スリムではないですがゆったりもしていない、95㎝の着丈は今の気分としてはかなり短い。
ベーシックなアイテムなので、いつかまた着るだろうと思い断捨離せずに持ち続けましたが、クラシックなトレンチコートの流れが戻って来ても今の流れとは違っていました。
さらに持ち続ければまた着る機会もあるかなと思い、またクローゼットに戻しました。
一回りして流れが戻って来ても当時と同じ流れではないという一例です。
長々と書きましたが、まとめるとこんな感じです。
・STILE LATINOのジャケットは15年間着続けましたが、さすがにここ数年は古臭さを感じながら着ていました。
・15年以上前に購入したBOGLIORIのジャケットは、途中古臭さを感じて10年くらい着ない時期がありましたが、最近また着る機会が増えました。
・CARUSOのコートは19年前のもので10数年間着ない時期がありましたが、今また着るようになりました。
ただし、途中肩バッドを変えるという補正を加えて着ているので、19年前と全く同じ状態で着ているということではありません。
ただし、途中肩バッドを変えるという補正を加えて着ているので、19年前と全く同じ状態で着ているということではありません。
・MACKINTOSHのトレンチは、15年以上前のもので当時のトレンチとしてはベーシックなサイズ感とシルエットのモノでしたが、一回りしてリバイバルしている今のトレンチコートとはサイズ感も着丈の長さも違うので、古臭さを感じてまた着ようという気分にはなりません。
何が言いたいかと言うと、買った時と同じ気分で何十年もずっと着続けるのは難しいということなんです。
私がずっと着ることはできないと言っているのは、何十年もずっと着続けることはできないけれど、持ち続ければまた着られる時が着るかもしれない、ただし着られる時が来たとしても買った時と同じ気分で着られるかどうかはわからないし、その時の時代性とのずれは多少なりともあるので、それを理解した上で自分が満足できるかどうかと言うことなんです。
また、普通は10年着ない期間があればそこで処分してしまい、ずっと持ち続ける人はかなり少ないと思います。
私の経験上、私のように流れが変わっても長く持ち続ける人は業界人でも一般の方でも非常に少ないと感じています。
そして、全てのアイテムが流行りものではなく、クラシックなもので長く着られると思って購入したものばかりなのでなので、なおさらそう思うのです。
なので、何十年も着続けるのは難しいという持論になるのです。
今回は一部だけ紹介しましたが、このような10年以上前に購入して着なくなり眠らせているアイテムがたくさんあります。
古いものでは30年以上前のものもあります。
また着るものもあれば、何年たっても着ないものもあります。
長く着るというのは、古臭く感じるようになっても持ち続けられるかどうかと言うことにもよると思います。
昨今はビンテージブームなので古着を着る人も多いですが、うまく着て似合っている人もいれば、なんとなく古いものを着ているだけで古臭く見えるだけの人もいます。
自分は後者の方が多いと感じています。
着なくなったものはリセールショップに売ってまた新しい服を買うという人も多いので、長く持ち続けることが難しい時代になったのかなと思います。
自分は後者の方が多いと感じています。
着なくなったものはリセールショップに売ってまた新しい服を買うという人も多いので、長く持ち続けることが難しい時代になったのかなと思います。
そのような状況もあり、お客様も長く着られる服と言う定義がよく分からなくなってきているのかなと思います。
今回は自分の持論を述べさせてもらいましたが、答えはご自身がどう考えるかということだと思います。
最近はSNSの発達で色々な情報が瞬時に入って来るので、頭の中がゴチャゴチャになっている人が多いかなと感じています。
こういう時代だからこそ、正しい情報なのか自分にとって必要な情報なのか判断することが大事です。
言ったもの勝ちのような情報やお金儲けのための発信が多いのもSNS。
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賢い人はすぐにわかると思いますが・・・
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