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■数字は分けて比べよ
「○○社、今期最高益を記録」
日経新聞にこんな見出しが載っていたとしよう。これを見て「○○社は好調なんだな」と思った人は、残念ながらあまり「数字力」のない人である。
われわれは会社の業績を判断するとき、「売り上げ」や「利益」にばかり注目してしまう。しかし売り上げや利益などの数字は、単独ではあまり意味がなく、これだけで発展的な議論をすることは不可能だ。なぜなら数字は、「分けて」「比べる」ことで、初めて意味を持つからである。
「分けて」「比べる」ことでどんなことが見えてくるのか。一例として、若者向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を行う「ミクシィ」と「グリー」の2社を取り上げてみよう。
奇しくも両社ともサービスが始まったのは2004年の2月と同じ。当初はミクシィの一人勝ちだと言われていたが最近ではグリーの躍進が目立つ。果たして両社の間にどれほど差がついたのか、まずは実際の売上高で見てみよう。
10年3月期のミクシィの売り上げは136億円。グリーの10年6月期の売り上げは352億円だった。ここで「2倍以上の差があるんだな」と結論づけるのはまだ早い。営業利益(総売り上げから売上原価と販売にかかるコストを差し引いた額)を見てみると、ミクシィ27億円、グリー196億円。これをさらに従業員数で割って、一人当たりの営業利益がいくらか算出してみよう。ミクシィの従業員は300名、グリーは134名である(10年3月末)。ミクシィの一人当たり売り上げは4533万円、一人当たり営業利益は900万円だとわかる。
一方グリーは、一人当たり売り上げが2億6269万円、一人当たり営業利益は1億4627万円にものぼる。つまりグリーの社員は、ミクシィの社員の16倍もの営業利益を上げているのだ。
11年の数字で再確認してみると、ミクシィの営業利益は33億円、従業員数は482人、一人当たり営業利益は684万円になっている。グリーは営業利益311億円、買収などにより、従業員数は800人も増えて934人。人数が増えたために一人当たり営業利益は3329万円になったが、両社の一人当たり営業利益の差は、4.8倍の開きがあることがわかる。なぜこんな差がついてしまったのか。これも数字を「分けて、比べる」ことで見えてくる。
売り上げは「1回ごとに売り切りのもの」と、「継続的に収入が入ってくるもの」の2種類に分けることができる。会計用語で前者をフロー、後者をストックという。実はミクシィとグリーの収益構造で決定的に違うのが、このストックの有無だ。両社の売り上げの内訳を見てみると、ミクシィは広告収入がほとんどを占め、フローに頼ったビジネスモデルであることがわかる。だから簡単に景気に左右されてしまう。
一方グリーは、収入の8割が携帯電話向けゲームや有料のカスタマイズ機能など、会員への課金サービスによるものだ。これらはたとえ単価は数百円であっても、毎月継続的に入ってくるストック型の収入である。ある日突然ゼロになることはない。将来の継続的な稼ぎの見込みが読めたからこそ、グリーは人を増やしたり、買収など積極的な戦略が取れたのだ。フローの収入しかなければ、社員の採用にも慎重にならざるをえず、さらなる成長も望めない。グリーはこのことを見越して、早くから会員向け有料コンテンツの開発に力を入れていたのである。
しかし、この収益源が脅かされつつある。ゲームを有利に進めるためにカードを数種類集めて希少なカードを手に入れる「コンプリートガチャ」について、消費者庁が違法との見解を示したからだ。収益モデルの見直しを迫られるときがくるかもしれない。