今回は『土佐純系会のブリーディング考察』のまとめとなります。
考察Ⅰ~Ⅲの記事内容と今までの定太や黒旋風等の記事でUPさせていただいた写真やデータも併せてご参照ください。(出来るだけリンクを貼るようには致します)
若干内容が複雑ですのでうまくお伝えできればよいのですが…不明な点やご指摘などございましたらドシドシと!コメント欄にいただければと思っております。
- - - - - では、これよりしばらくお付き合いくださいませm(_ _ )m
まずは、こちらがの今回お話しする部分をピックアップした2頭の血統図となります。
■陸奥以前陸奥以後
さて、黒旋風号と定太号の2頭に共通する血統の特徴は言うまでもなく「陸奥号の直子である」ことです。
陸奥号を作出された古城先生は、S.36初版愛犬の友編集部編 『日本犬中小型読本』に寄せられた記事のなかで
“…略…純血四国犬作出研究会をつくり系統繁殖の計画を立て、昭和二十年陸奥号を残した。これが終戦後の土佐日本犬長春系の源流である。”
と記されています。
(『歳末大感謝企画 』でご紹介させていただいた例の頁です。P46 の最終節部分)
純系会としては「陸奥号を源流とする」と言っている通り、そのブリーディングの方向性は陸奥号を作出するまでは長春号を中心とする本川原産の犬の血統を集約する作業をしており、それ以降は陸奥号を素材とした広がりのある作出を行なっています。
※遺伝用語的に言えば、陸奥号を[P](基点となる親)黒旋風号・定太号など直子の世代を[F1](交雑第一世代)ととらえていると思われます。
ここでひとつ、実は今回疑問がなかなか解けず、三代目が悩んでいたポイントがあります。
これまでの何回かの記事に対して、ご指摘などがあるのではないかと思っていた事でもあるのですが…
理論的に系統繁殖されているブリーダーさんやブリーディングに詳しい方なら今までのブリーディング考察についての記事を読んで
「やれ系統だ、品種の固定だ、などと言ってはいるが系統繁殖に本当に重要なメスの話をちっともしていないじゃないか。だいいち、図表でもメスをほとんど省略してしまっているし。はたしてこれでブリーディングの話と言えるのか?」
と訝しく思っている方も少なくないのではないでしょうか。 台メスの話をしなくては系統繁殖の話とはとてもいえないのがブリーダーの常識のはずです。
■本川山出しにメスがいない!?
例えば陸奥号の血統図をご覧いただいてもわかるように、図ではいくつかのメスを省略しています。
これは、系統の話を解りやすくするために本川系の犬だけを表記したためです。ちなみに楠号のお相手は徳島の美智号、長春号のお相手は幡多系のゴマ号の直子のメスを使っており、本川系の犬ではありませんでした。
どうやら、古い記録を見ても本川村山出しでは楠号や長春号に合わせられる良いメスがいなかったようです。
この点について、猟師は経験上オスを手放しても手元に台メスが居ればまた良い犬を作出できることを知っていたのでしょう。 当時の事を知っていた猟師にも聞いたのですが、ブローカーが犬を買いに来ても、猟師はなかなか良い台メスを手放さなかったとのことです。
そこで、純系会は陸奥号を作出するにあたって、まずは楠号長春号それぞれに別系統ではあるが良性のメスを交配し、その中から本川系の遺伝形質を多く持ったメスをセレクトして(これがそれぞれ楠美女号,登美号)います。
そのセレクトしたメスを台メスとすることによって、ようやく陸奥号を作出しているのです。
(つまり、ここまで台メスらしい台メスがいなかったのでメスの話が出なかったというわけです)
そして、ただ本川村山出しメスを使うのではなく、楠号や長春号の遺伝形質をメスに乗せ代える作業をすることで、ラインブリードの“ライン”をより強固なものにしたともいえます。
では、もう一度黒旋風号と定太号の図をご覧ください。この2頭の父犬は同じ陸奥号ですので遺伝子の半分は全く同じと言えます。
つまり、血統上の構成を大きく分けているのは陸奥号のお相手となる台メスとなるわけで、それぞれ長秋号と長龍号(★を付けています)の血統を台メスにどのように組み込んだかということがポイントになります。(be-so)
_____________Ⅳ(後編)につづくm(_ _ )m