『北欧デジタルトランスフォーメーション(DX)事情調査団』20名の団長として | 藤原洋のコラム

~ストックホルム(スウェーデン)・ヘルシンキ(フィンランド)・タリン(エストニア)~

 当社は、情報通信業界を主導する立場にあること(私は一般財団法人インターネット協会の理事長を務めております)、また、情報通信のユーザー業界からの要望が強いため、業界横断的な海外視察調査団の組成を行っております。これまで、世界のイノベーション拠点イスラエルとアジアのシリコンバレー深センを訪れました。
 今回は、海外調査のコラボレート研究所と連携して5G利活用先進地域の北欧にフォーカスした調査を行いました。私自身が団長を務め、関連業界の皆さん(通信キャリア、総合電機、不動産、監査法人、SIer等)に呼びかけ、5G、スマートシティ、MaaS、電子政府など情報通信とその利用において、特に今回の北欧の3か国が世界をリードするDXに関する技術・ビジネス動向の調査に出かけてきましたのでその概要についてお伝えしたいと思います。
https://www.collaborate.co.jp/cken-tour/345-tour431.html

1. 調査団の概要
■今回の調査目的
(1)デジタルトランスフォーメーション時代を先取りしたビジネスモデルの動向調査
(2) IoT/AI関連スタートアップ企業の動向
(3)5Gを利用したサービス開発の動向調査
(4)次世代モビリティ・プロジェクト(MaaS)取り組み動向
(5)キャッシュレス社会を支えるFintech企業の動向調査

■調査団スケジュール
9月5日(木)成田発 ストックホルム着 【ストックホルム泊】
9月6日(金) 
~スウェーデンにおけるIoT/AI関連スタートアップ/フィンテック動向~
・Epicenter(スウェーデン最大のアクセラレーター)①
・スカンジナビスカ・エンスキルダ銀行② 
~スウェーデンの5G利用サービスの動向~
・Telia社(通信キャリア) の進める5Gプロジェクト調査 ③【ストックホルム泊】
9月7日(土) ストックホルム発 タリン着 【タリン泊】
9月8日(日) Planetway社訪問④【タリン泊】~エストニアにおける電子政府~
9月9日(月)~エストニアにおけるIoT/AI/フィンテック関連スタートアップ~
・Bolt(旧Taxify社、ライドシェア事業を世界27カ国で展開)⑤ 
・Wallester社、VISAカード向けFintechプラットフォーマ)⑥
・Lift99 (政府系スタートアップ支援組織)⑦
・タリン工科大学のMEKTORY(Modern Estnian Knowledge Transfer Organization for You)⑧
タリン発 ヘルシンキ着【ヘルシンキ泊】
9月10日(火)ヘルシンキ周辺 
~フィンランドにおける5G利用サービスの動向~
・Elisa社(通信キャリア)⑨
~フィンランドにおける5G、IoT/AI関連ビジネスモデル動向~
・Sensible4自動運転電気自動車バス試乗⑩
・Roboride社「ファーストマイルとラストマイル」における自動運転ソリューションスタートアップ⑪
~次世代モビリティ・プロジェクト(MaaS)取り組み動向~
・MaaS Global社 
MaaS(Mobility as a Service)を世界初都市交通でMaaSを実現した企業の「Whim」体験⑫
【ヘルシンキ泊】
9月11日(水) 
・Forum Virium Helsinki社訪問⑬
 ヘルシンキ市の保有する非営利企業でスマートシティプロジェクト推進企業
空路帰国の途へ 【機中泊】
9月12日(木)東京(成田)着 解散

2.訪問先の調査結果の概要(以下の13か所)
(1)スウェーデン
●Epicenter①~スウェーデン最大のイノベーション・アクセラレーター~
 ここは、コワーキングスペースと似ていますが、コンセプトが異なり、極めてユニークなイノベーション拠点となっています。オランダとフィンランドにも進出しています。
 すなわち、以下の3つの拠点の役割を果たしているのです。
1)スタートアップの起業 2)大企業のイノベーション 3)企業間連携
以下のような対象企業が入居しています。
〇主なスタートアップのフィールド:フィンテック、ヘルスケア、メディア、IoT、フードテックなど。
〇外部の大企業と入居するスタートアップとの交流環境作り
⇒Spotify、Klarna などの注目企業がEpicenter メンバー企業と連携を拡大中。
 

 

●スカンジナビスカ・エンスキルダ銀行②~キャッシュレス+支店廃止でデジタル化に成功~
 160年の最古の歴史を持つスウェーデン初の民間銀行SEB(スカンジナビア・エンスキルダ銀行)は、スウェーデンのキャッシュレス化とスマートフォンによるデジタルサービスで一気に時代の最先端を走っています。
21世紀の銀行の最先端モデルとして走るSEB銀行から3つの説明がありました。第1に現金流通量の世界のトレンド、次にSEB銀行が実現した2つのことです。1つが、Mobile Bank IDとQRコード決済アプリSwishです。
世界の先進国で現金流通量の対GDP比は、日本がダントツ(?)20%、EURO地域10%、アメリカ8%、韓国6%、イギリス・オーストラリア・カナダ・ブラジル5%ですが、キャシュレス化のトップを走るスウェーデンは、なんと1%です。デジタルスウェーデンとアナログ日本では、銀行の役割が全く異なるのです。
 


●Telia社(通信キャリア)③ ~5Gサービスで最先端を走る北欧のNTT~
 Telia社は、エリクソン社のスウェーデンとノキア社のフィンランドの旧国営企業が合併した企業です。5G本部長のAndreas Dehiqvist氏から話を聴くことができました。以下に示す重要なメッセージが届けられました。
 〇スウェーデンにおける5Gの5つの位置づけ
1)産業界の44%が5Gに取り組む、 2)23%が1年以内に65%が2年以内に5Gに取り組む
3)産業界の2番目のニーズがクラウドコンピューティングで7番目がAI/機械学習
4)2つの重要な5Gの要素がサイバーセキュリティと運用効率化
5)5Gへの期待の1位QoS(Quality of Service)・2位サイバーセキュリティ強化・3位低遅延
〇Teliaが考える5Gのメリットは以下の6点にあるとのことです。
1)高速性:最大20Gbps、2)大容量性:10Mbps/sqm、3)リアルタイム性:1~10ms
4)信頼性:99.999%、5)エネルギー効率:最大100倍、6)セキュリティ向上:スライシング
〇Teliaが行う5G導入のステップ
1)2018年技術検証、2)2019年パートナープログラム、3)2010年商用サービス
〇Teliaが行う2つのユーザー企業との5Gパートナープログラム
1)オープンイノベーション環境整備、 2)カスタマードリブンの環境整備
 この2つが商用実験には、産業界から8社(Volvo社、Boliden社など)、公共関係2団体、大学3大学が参加しています。この中で、Volvoは、5Gを用いた建設機械の自動運転に応用し、イノベーションでは、AR(拡張現実)プロジェクトが成果を上げており、一般商用サービスは2020年から開始されます。




(2)エストニア
●Planetway社訪問④【タリン泊】
 日曜日でしたが、無理を言ってエストニア電子政府開発を担当したラウル・アリキヴィ氏(現在は、コンサルティングのPlanetway社を創設)とエストニア電子政府はなぜ成功したか?日本は、何をすべきか?について語り合いました。以下にその概略をまとめます。
〇エストニア電子政府の成功要因とは? 
1)ソ連時代の遺産を活用
 バルト3国のなかでは、エストニアがIT関連を担っており、ラトビアは自動車や造船、リトアニアは電子産業を分担。そのため、同国には人工知能などを研究していた最先端技術の研究所(サイバネティクス研究所)があった。
2)領土を必要としない国家の構想
 現在も「いつか再び国土が支配されるかもしれない」という危機感が強い。たとえ国が侵略されて物理的に「領土」がなくなったとしても、国民の「データ」さえあれば国家は再生できるというのが政府の考え。エストニアは、国のあらゆるデータを国外の大使館にて保管する「データ大使館」という構想を進め2018年にはルクセンブルグに最初の拠点が開設。
3)低い人口密度での行政の効率化にIT
 人口密度は1キロ平方メートルあたり30人と低く、領土内には島も多く全国民行政や銀行のようなサービスを提供するには非常にコストがかかる。役所やATMなどを設置するよりインターネットを活用して各サービスを電子化 。
〇エストニアの電子政府進捗率
1)所得税申告オンライン96%、 2)電子的政府企業間コミュニケーション80%+
3)学校・政府機関のブロードバンド率100%、 4)無料WiFiスポット1100+、
5)インターネット人口普及率88%、6)企業のインターネット/コンピュータ使用率96%+
 


●Bolt社(世界27カ国で展開)⑤ ~Uber、Lyftと異なるエストニア流のモビリティサービス~
 創業者が語った以下のモチベーション。
〇現在2500万人、90以上の都市、30か国以上。
〇ユニコーン(時価総額1000億円以上の未上場)の仲間入りをしている
〇世界の交通機関の売上は12兆ドル以上(1300兆円)
〇交通機関は世界の30%の二酸化炭素を排出
〇ヨーロッパの人々は38分かけてクルマで通勤
〇人口1000人当たりエストニア534台クルマ保有/アメリカ910台保有
  ⇒乗っているのは5%時間だけで、95%は駐車場に停車⇒あなたは車は必要?
  ⇒世界のある町ではクルマの8倍の駐車場
〇オンデマンド・カー: 2018年4%→2019年28%
〇成功要因は?⇒勤勉で優秀なエストニアで事業をタイミングよく始めたから。
〇UberやLyftは、事業拡大で赤字が続いているが、Boltは?
  ⇒赤字と黒字の地域があり、特にうまくいっているのは、南アフリカ
〇私からのコメント:Boltの強みは、正にエストニアのIT分野の技術力の高さとシリコンバレーと比較して負けるとも劣らない研究開発エンジニアの優秀さと勤勉さにあると感じました。Boltは、今後世界のライドシェア市場で目を離せない存在となることでしょう。
 


●Wallester社⑥ ~発行コスト1/30 VISAカード向けFintechプラットフォーマ~
 同社は、エストニアにおけるVISA発行コストを大幅に低減させました。今後北欧他国へ展開。
〇従来のVISAカード発行会社の位置づけ
 1)3つ以上のパートナーが必要
 2)12か月以上の期間が必要・新サービス追加に3か月以上必要
 3)100万ユーロ(1.2億円)+50~75%メンテナンスコストかかる
〇Wallesterの位置づけ “Simple, Fast, Afffordable”
 1)パートナー1社だけ(Wallester)で済む
 2)3か月でカード発行・新サービス追加に1~2週間で済む
 3)30000ユーロ(360万円)で済む
〇私からのコメント: フィンテックにもこのようなアプローチがあるのだという不思議な新鮮さを感じました。「クレジットカードは、もう古い?」ではなく、今の決済基盤となっているクレジットカードの抱える課題を見つけ地道にコツコツと古くて新しいFintechによって解決していく姿、これぞ1つのエストニアの持つ側面だと感じました。
 


●Lift99 (政府系スタートアップ支援組織)⑦~ここから4社のユニコーンが育成された!~
 エストニアでの次なるテーマは、エストニア発のベンチャー企業の育成のエコシステムを確立しつつある同国の秘密を探ることでした。私たちを出迎えてくれたのは、経済通信省が支援するLIFT99のマーリカ・トゥルウ女史(Maarika Truu)で、世界的なスタートアップ先進国に躍り出ようとしているエストニアの原動力がここにあります。
〇エストニアのスタートアップ概況  
650件で、そのうち130人にスタートアップVisaが発行。
スタートアップのうちで外国人18%、女性15%。
スタートアップで新たな4900人の雇用(うち外国人女性46%、外国人20%)
スタートアップで2019年前半で32.7M?(約35億円)雇用税:2018年通年の72%
直近12年間で1.1B?(1300億円)資金調達(外国からの投資90%)
6社のユニコーン(時価総額1000億円以上未上場企業)が誕生
⇒Skype、Playtech、TransferWise、Bolt、monese、piperdrive
〇私からのコメント
 LIFT99は政府系起業支援組織で、活動費の出どころを聞いたところ、1.5M?(1.7億円)/年x5年間の予算(合計7.5M?=8.5億円)とのこと。旧ソビエト連邦時代の工場跡地をカラフルな先進的なデザインで生まれ変わったLIFT99は、エストニアならではの経済発展の原動力になっています。
 


●タリン工科大学のMEKTORY(Modern Estnian Knowledge Transfer Organization for You)⑧
 エストニアに到着での次なるテーマは、アカデミアがどのように産業創出に取り組んでいるかを探ることです。そこで、エストニアの最高学府タリン工科大学TATECのイノベーション組織MEKTORYを訪問し、以下のことが分かりました。
〇本組織内を見学しました。6年前にここに引っ越し実にユニークな場所でした。(写真参照)。
〇企業や各国の大使館が支援しており、設備・環境がとても充実しています。
〇Ericssonは、大学キャンパスに5Gネットワークを敷設。
〇三菱自動車は、電気自動車を500台提供。
〇Samsungは30台タブレットを提供し電子政府プロジェクトを支援。
〇子供教育には、10?/人親から費用徴収。
〇北欧らしいサウナ付きのミーティングスペースなどもありました。
〇学生が4年かけて衛星を完成:
1号機2019年夏ロシアのロケットで打上げ/2号機は2019年秋米国ロケットで打上げ予定
〇エストニアは教育先進国
1)PISAテストでヨーロッパ1位
2)OECD科学スキルで世界3位
3)OECD数学スキルで世界9位
4)エストニアeスクール導入率85%
〇エストニアのデジタルビジネス環境の良さ
1)98%企業がオンライン
2)99%ネットバンキング
3)95%ネット納税申告
4)e-Residensyでグローバル企業にとっての活躍の場を提供
〇私からのコメント
 タリン工科大学(Tallinn University of Technology )は、高度なエンジニアリング、技術研究とイノベーション関連分野に重点をおいています。1918年創立で約100年の歴史です。学生数でエストニアで二番目に大きい大学、首都で最古で最大の国立大学です。また、エストニアで最も国際的な組織でもあり、これまで国際的な認定プログラムによる留学生を最も多く集めています。 ここが、エストニアのIT立国を支えているアカデミアの総本山なのです。
 


(3)フィンランド
●Elisa社(通信キャリア)⑨~5Gで世界を先導するフィンランドの通信キャリア~
通信強国フィンランドのElisaは既に商用5Gサービスを始動、1Gbps5Gサービスは月額5000円!~
 Elisa社は、フィンランドとエストニアをサービス地域とするモバイル通信キャリアで、5Gで最も先行する企業です。同社は、2018年8月に他社に先駆けて5G対応サービスネットワークの提供を開始したと発表し、世界を驚かせました。実際に、Elisaの5Gネットワークを使って同国のAnne Berner運輸通信大臣がビデオ電話をかけました。この5Gネットワークが使えるのは、フィンランド第二の都市タンペレと、エストニアの首都タリンで、Berner大臣が電話をかけた相手はエストニアのKadri Simson経済インフラ大臣でした。国境を超えての5Gビデオ通話となったとのこと。あの衝撃的な発表から1年が経過しました。以下に同社の概要を示します。
〇1882年フィンランド初・世界初の電話サービス
〇1929年ヘルシンキで電話サービスを自動化
〇1991年GSM携帯電話サービス開始
〇2007年3Gモバイルサービス開始
〇2010年4Gモバイルサービス開始
〇2015年IoTサービス開始
〇2019年商用5Gサービス開始
〇Elisaの基本指標
 売上:1.83?(2000億円:2018年)〔前年1.79〕
 1株当たり利益:1.95?〔前年1.86〕
 移動通信加入者数:4.66M〔前年4.68〕
 固定ブロードバンド加入者数:696500〔前年692300〕
 顧客数:2.8M(フィンランド+エストニア)
 顧客満足度(NPS、2018年):25.4〔前年21.1〕
株主数:185000
 従業員:4800〔前年4700〕
 市場順位:フィンランド1位、エストニア2位
〇Elisaは5Gの先駆者(forerunner)である。
 ⇒2016年8月フィンランド初の5Gデモ/ 12月大規模IoTテスト
 ⇒2017年1月新アーキテクチャ5Gテスト/ 4月世界初3.5GHzで5G技術テスト
 ⇒2017年8月Tampereにて初の5G準備/ 北欧初の固定無線ブロードバンド
 ⇒2018年2月世界初の3.5GHzプリ商用化5Gデバイスを結合したテスト
 ⇒2018年3月5G TurkuにてReady
 ⇒2018年4月フィンランド初の全国大規模IoTネットワークがReady
 ⇒2018年5月Jyvaskylaにて5G Ready
 ⇒2018年6月世界初の商用5GサービスをTampereで開始
 ⇒2018年11月Tampere、Turku、Jyvaskylaに高速ネットワーク構築
 ⇒2019年1月5G商用化
〇私からのコメント
 1882年創業のフィンランドの通信キャリアであるElisa社は、想像以上に5Gサービスについて深く考え、いち早く実行に移していました。その背景には、データサイエンス、AI、アジャイル開発手法など最新技術を取り入れると共に、検証を着実に行っているように感じました。その意味で、前にご紹介した北欧を代表する政府が株主のTelia社とは、また違った魅力的な通信キャリアだといえます。「量より質」という観点から、ある面においては、Telia社よりも進んでいるという印象を受けました。
 


●Sensible4自動運転電気自動車バス試乗⑩~公道の自動運転時代は、もう始まっている!~
 フィンランドが、MaaS(Moblity as a Service)発祥の地*だということは、あまり知られていないように思えます。*MaaS は、MaaS Global社CEOのSampo Hietanen氏が提唱した概念。

*MaaS(Mobility as a Service):インターネットとモバイル通信を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ 新たな「移動」の概念であるといえます。
当調査団は、この公道を走るシャトルバスに試乗しました。
〇無印良品を展開する良品計画は2018年11月1日、フィンランドにおいて2020年の実用化を目指す自動運転バス「Gacha(ガチャ)シャトルバス(仮称)」に車体デザインを提供したことを発表。
〇Gachaシャトルバスは、自動運転技術の研究開発を行なうフィンランドの企業「Sensible 4」が、ヘルシンキ周辺の3都市「エスポー」「ヴァンター」「ハメーンリンナ」のサポートを受け開発を進めている、あらゆる気象条件下でも機能する世界初の自動運転バスです。
〇世界でも、大雨や霧、雪の気象条件下での自動運転車両の実用化には至っていないのが現状。
〇「すべての自動運転車は、実用化の前にあらゆる気象条件での走行が可能であることを証明する必要があることは明白である」として、Sensible 4は北極圏のラップランドにおいて技術テストと検証中とのこと。
〇私からのコメント
 初めて公道を走る自動運転車に乗りました。なかなかスグレモノだと感じました。前方の交通状況に応じて、おとなしく運転している安全自動運転車です。Sensible4社は、フィンランドの会社らしく、社会福祉的な観点からではなく、収益事業として挑戦していることに感心しました。新しいテクノロジーの持っている本質を、「勝負」ではなく、あらゆる企業と連携して目的を達成する「意義」の中に見出そうとする人々なのだと感じました。
 


●Roboride社「ファーストマイルとラストマイル」自動運転ソリューションスタートアップ⑪
電気自動車 自動運転オペレータのRoboride社とMaaSプラットフォーマのKyyti(クーティ)社との会合を持ちました。
〇Roboride社のサービス
 ラスト1マイルの輸送サービスで、都市化と気候変動が続く中で、化石燃料ではなく電動化が求められています。そこで、当社は、顧客に対して1stとラストマイルの電気自動車自動運転のターンキーソリューションを展開しています。以下の適用分野を対象としています。
1)大学キャンパス⇒インドの大学の話を進めているところ
2)工場⇒Pori市の銅製造所で商用パイロット実証実験を始動。世界初の自動運転サービス。
3)ホリデーリゾート⇒中国の2022年北京冬季オリンピック会場の近くのHaituo Valleyのホリデーリゾートで車体数10(Fleet size 10pods)でプロジェクトを開始⇒本プロジェクトだけでサービスエリア=18㎞
4)大病院
〇Kyyti Group(クーティグループ)の事業概要
⇒オンデマンドのライドシェアリングサービスプラットフォームを提供
⇒ビジネス領域:欧州、米カリフォルニア州、日本市場進出に強い意欲。
⇒なぜMaaSか?
 フィンランドでも人口密度の低い地方では路線バスのような公共交通が整備されておらず、通学、通院、介護施設への往復など、生活維持のために必要となる移動については国や地方政府の負担で必要最低限の移動サービスが提供。しかし、多くの車両が乗客1名という非効率で、国や地方政府の財政負担が重く、MaaS(Mobility as a Service)などを活用した新しい社会システムによる課題解決が求められている。
⇒Kyyti社のプラットフォームの概要(4つから構成):Roboride社は本プラットフォームを利用
・Kyyti Core:ワンストップ・シームレス決済、ID管理
・Kyyti Ride:オンデマンドライドシェア
・Kyyti Route :トラベルチェーンに基づくモーダル内のルーティング
・Kyyti Share:ライドシェア用の統合プラットフォーム
〇私からのコメント
 MaaS プラットフォームの位置づけが2社の調査から明確化されました。すなわち、MaaSには、路線検索機能、サービスの統合、決済の機能がありますが、現在は、世界各国で交通システムの見直しが必要となっています。その方向性の1つが、公共交通とタクシーの間を埋めるオンデマンドシェアライドシステムです。そこには、情報収集とデータ分析が必須となることでしょう。日本では、自動車のことは自動車会社の仕事だと思われがちですが、MaaS概念では、クルマを作ることとクルマを使うことは全くの別物だということが明確化されたのでした。
 

 

●MaaS Global社のWHIM体験 :MaaS(Mobility as a Service)を世界初都市交通で実現⑫ 
 iPhoneアプリWhimをダウンロードして路面電車代を支払うと電車にも乗れて目的地までの交通手段を徒歩も含めて所要時間と時刻表も併せて教えてくれます。そして目的地の何ともモダンなヘルシンキ市立図書館を訪ねてWhimのアドバイス通りに次は、7番の路面電車に乗って帰ってきました。
 Whimは、私たちの生活を根本から変えてしまう自家用車をなくしてしまう世界初の先進的なMaaS(Mobility as a Service)で、ベンチャー企業「MaaS Global」がサービスを提供しています。
 Whimは、2016年にヘルシンキにて実証実験を行った後、正式にサービスを開始しました。毎月定額もしくはその都度お金を払ってポイントに換え、ポイントを利用することで、いくつかの交通手段から最適な移動ルートを自動検索し、私たちを目的地まで運んでくれます。予約から決済まで一括して行え、利用できる交通手段は、電車やバスのほか、タクシー、バイクシェアなど。ユーザーがスマホアプリを提示するだけで、交通手段を利用できるようになっています。
  


●Forum Virium Helsinki社訪問⑬~ヘルシンキ市の先進的なスマートシティ・プロジェクト~
 ヤン・ヴァパーヴオリ市長(Jan Vapaavuori)が2019年5月に東京都を訪問し、同プロジェクトを小池知事に説明し、東京都も大きく動き出したとされています。世界が驚く同プロジェクトを主導するのが通常の市役所所職員とは異なり、45名のデジタル専門家集団です。
〇フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ(Forum Virium Helsinki)とは?
・2005年に未来都市を開発するオープンイノベーションを担う組織として発足
・その後スマートシティ、スマートモビリティ、オープンデータ、IoTを包含することとなった
・ヘルシンキ市が完全保有する非営利団体
・45人の専門家集団(一般市役所職員はいない)
・資金はEUとヘルシンキ市で5M?(約6億円)/年
〇フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ(Forum Virium Helsinki)の具体的活動内容
・ヘルシンキ市とEUに関わるスマートシティプロジェクトを30実行中
・企業/サイエンスコミュニティ/市民と連携している
・ヘルシンキ市のデジタル化を担っている
・これまでの実績
 ⇒ヘルシンキ市のデータを公開
 ⇒カラサタマ(Kalasatama)地域をスマートシティに変貌させた
〇2019~2021年の戦略目標
・ヘルシンキ市の新技術利用とデジタル化力を強化する
・企業がヘルシンキ市を発展のためのプラットフォームとして活用することを助ける
・いつも新しく素早い専門家集団であり続ける
〇都市の未来を共創する仕組みとは?
 FVH(フォーラムヴィリウム・ヘルシンキ)が、以下の4つのパートナー、5つのセクション、3つのプラットフォーム、6つの事象をコーディネートすることが重要。
・パートナー:市民―企業―パブリックセクター大学/研究機関
・セクション:ニーズ/新技術―実験/実証―開発者間接続―プロジェクト組成―大規模化
・プラットフォーム:スマートKalasatamaーJatkasaariスマートモビリティ―HelsinkiオープンIoT
・事象:プラットフォーム/シェアリングエコノミー―API環境―AI/BigData―MyData―IoT―ロボティックス
〇注力しているゴミ自動収集システム
⇒地下にゴミの搬送パイプ網を作り真空にして自動的に収集する仕組み
⇒ゴミの自動搬送システム:IMU(バキューム)、Inlet(ゴミ投入口)180か所:7~10年で完成
⇒集合住宅など住宅産業がつないで欲しいというニーズに応えるインフラ整備
⇒ディベロッパーと共同で進める
〇私からのコメント
 ヘルシンキ市は、今回訪れた3つの都市の中心に位置し、西のストックホルムまでは400㎞、南のタリンまでは、85㎞にあります。面積と人口は、各々158.4平方キロメートル・65万人。同規模の市としては、最先端のスマートシティ・プロジェクトが、実行されていると感じました。その大きな理由は、従来の市役所職員ではなく、全く新たに雇用した45名の専門家集団がプロジェクトの実行主体となっていることだと思いました。
 


 

2019年9月26日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋