『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』を著して | 藤原洋のコラム

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~AIxIoTx5Gで実現する2030年1000兆円シナリオ~

 

 私は、起業する前の約10年間情報通信分野の国際標準化活動に関わる研究開発リーダーを務めていたことから、海外の10カ国以上の「産」「学」「官」の立場の人々と交流する機会がありました。そうした中で認識したのが、「インターネットの登場後、日本だけが負けている」ということでした。それを端的に表しているのがGDPです。日本だけが先進諸国の中でGDPが減っているのです。そこで、では、なぜ日本が一人負けしているのでしょうか。そこで、新たに、拙著『全産業「デジタル化」時代の日本創生戦略』を著すこととしました。

 

 本著書(以下、本書)で主張したいことを、できるだけ多くの産業界のリーダーに伝えたいという想いで20代で制御用コンピュータの開発エンジニアだった頃、職場が近かった中西宏明氏(経団連会長、日立製作所会長)に、このたび原稿を見てもらいました。そして、本書の主張に賛同するということで、推薦をして頂くことになりました。推薦を頂くに際して、原稿段階では、あまり触れていなかった日本政府の総合科学技術会議での中西氏らが中心となってまとめた未来投資戦略のゴールとしてのSociety5.0について触れさせて頂くこととしました。

 

 本書での主張は、生産者と消費者が直結する「インターネット型産業」に構造変化できず、多くの産業分野において、旧態依然とした「ピラミッド型多重下請構造」をさまざまな規制によって保護してきたからだというものです。その結果、多くの産業が衰退し、グローバル競争で苦戦をしています。

 

 これに危機感を持った日本政府は、岩盤規制の改革を打ち出しましたが、その岩盤は非常に分厚く、残念ながらいまだに規制改革がスピード感を持って進んでいるという状況にはありません。岩盤規制によって規制改革が進まない中で、外来種による日本市場の席巻が起こっています。その代表選手である、アマゾンのようなインターネットを駆使した新興企業を、「デジタル・ディスラプター(デジタルによる破壊者)」と揶揄する人がいますが、アマゾンはまさに、日本のいくつかの産業を破壊している最中といえるかもしれません。

 

 インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」であり、従属関係はどこにもありません。自律した個々の「ノード」が分散し、協調することで世界に唯一のインターネットを形成しています。だから、「an internet」ではなく「the internet」なのです。通信工学ではなく、経済学に置き換えると、「ノード」は、「消費者」と「生産者」に置き換わります。すべての経済活動の原点は、消費者による「消費」にあります。それでは、集中局がないインターネットの基本原理はどのようなものでしょうか。通信ネットワークや放送ネットワークをも呑み込んでしまうインターネットアーキテクチャの基本原理は次のようなものです(RFC1958 [Architectural Principles of the Internet] Brian Carpenter)。

 

●一カ所に障害が発生しても全体に障害が及ばない
●コネクションレス(電話のように加入回線間の接続手順はなく、いきなり送れる)
●ネットワーク内では必要最低限の状態情報しか維持しない
●End to End制御(中間のノードは制御に関与しない)
●ユーザーがアプリケーション、サービスの選択を制御できる(何に使うかは限定しない)

 

 このようなインターネットの基本原理は、情報ネットワークの構成だけでなく、組織のあり方や外部組織との関係のあり方にも大きく関係します。インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」の3つだと私は考えていますが、これらを情報システムの方法論にすぎないと限定的に考えてきたのが日本の組織であり企業なのです。ここに「日本が負けている理由」があります。

 

 情報通信産業は、1985年に日本電信電話公社を民営化したことで競争原理が導入されました。さらに、1994年のインターネットの商用化により、さらなる大きな変革が求められました。インターネットの本質は、「自律」「分散」「協調」であり、それらは情報通信産業だけではなく、あらゆる企業に大きな変化をもたらすものだったのです。

 

 日本社会は、この本質をとらえきれずに省庁や業界の縦割り構造と相まって、インターネットに適合した制度改革を怠ってしまいました。その結果、インターネットという技術革新の恩恵にあずかることができず、前述した通り、これまでの20年間、主要国のなかで日本のGDPだけが減少し、他国の後塵を拝したわけです。日本だけが、インターネットによる変化に十分に対応できなかったことこそが、「失われた20年」の原因の本質なのです。

 

 組織や取引形態そのものをインターネット時代に合致したものに変えていく、つまり、組織そのものを従来の「ピラミッド型組織」から「自律・分散・協調型組織」につくり変えることが、日本企業にとっては急務となります。

 

 その目的は、急激な変化への対応スピードのアップとスケーラブル(大規模化も小規模化も容易)であり、自律することで、各参加者(企業)が独立して活躍できるとともに、創造的かつ新しい挑戦ができることが大切です。

 

 自律・分散・協調型組織の運営においては、全体の基本的な共通戦略がまず重要で、その共通戦略を組織全体で共有するためのコミュニケーションを活性化させることも同時に必要になるでしょう。以上のような背景から、本書では、「デジタルトランスフォーメーションという大きなうねり」によって、情報通信、流通、農業、金融・保険、医療・福祉がどう変わるか、企業は何をすればいいかについて述べさせて頂きました。


 さらに、企業経営者、中央官庁の有識会議のメンバー、大学教授などの立場から、「2030年GDP1,000兆円」を実現するための「産」「官」「学」の連携の実例と可能性を提言しています。

【本書の目次】
第1章 第4次産業革命は、日本創生の大チャンス――日本が再び世界をリードするとき
第2章 IoTがもたらす過去最大の成長――「製造業のサービス化」でつながるビジネス
第3章 企業にとってAIは脅威か――置き換えられない人材の条件
第4章 フィンテックと金融の未来――日本でも続々と育ち始めた企業・サービス
第5章 「世界のイスラエル」にチャンスあり――日本の「実装力」が活きる共創

 

 

 

平成30年9月27日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋

 

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