ソヒエフ指揮ミュンヘン・フィル、ブルックナー「交響曲第8番」(ノーヴァク版第2稿) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(11月8日・サントリーホール)

ソヒエフは大好きな指揮者であり、最近ではN響との数々の名演で感銘を受けてきた。ソヒエフのブルックナーは今回初めて聴いた。終演後のブラヴォは凄まじいものがあり、ブルックナーの
ファンからも大絶賛されていることが伝わってくる。

 

しかし、最初から最後まで「これがブルックナーの音なのだろうか?」という疑問、違和感がつきまとった。

違和感を抱いた最も大きな要因は、ブルックナーにしては明るすぎる音。ミュンヘン・フィルの音の特性なのか、ソヒエフのブルックナーの特徴なのか、陽光が降り注ぐ暖かな地中海のような印象の音。

 

昨日のリムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》が南ドイツのオーケストラらしい明るい音だったという感想をSNSで読んだが、今日のブルックナーもまさにそのような音だった。《シェエラザード》にはうってつけだと思うけれど、ブルックナーの場合、生ぬるく聞こえてしまう。

 

スケ―ルの大きな堂々たる演奏であることは確かだが、これが相性というものだろうか。ブラヴォの嵐の中、取り残されたような気持ちでいた。

 

ミュンヘン・フィルはコンサートマスタージュリアン・シェブリンと青木尚佳のツートップ。

10年近く前から何度も聴いてきた青木が堂々としたステージマナーで、トップサイドで弾く姿を見ると、感慨もひとしおだ。

最も、ソリストとしてここ数年で飛躍的な進化を遂げていることから、ごくあたりまえのことなのだが。

昨年12月紀尾井ホールでのイザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲」はストラディヴァリウス“Rodewald”を鳴らし切る大家の風格さえ感じさせる演奏だった。今年も12月6日19時から、紀尾井ホールで「幻想曲」をテーマにしたリサイタルが開かれる。