ウィーン・フィル39回目の来日公演の初日。明日から浜松、大阪、福井で公演、12日、13日、16日、17日はサントリーホールでの公演がある。
指揮はアンドリス・ネルソンス。1年前ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団で聴いた時よりも大幅に体重を落とし激やせしたように見える。今年のセイジ・オザワ松本フェスティバルを体調不良でキャンセル、今日も指揮台に椅子が用意してあり心配したが、すべて立って指揮したので大丈夫のようだ。
ウィーン・フィルのメンバーもアジアツアーの最後で疲れがあるのかもしれない。
ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編曲):オペラ『ホヴァンシチナ』第1幕への前奏曲「モスクワ河の夜明け」は、わずかに頭が揃わないようにも思えたが、クラリネット(マティアス・ショルン)の弱音が素晴らしいし、ヴォルクハルト・シュトイデとアラベラ・ダナイローヴァがツー・トップの第1ヴァイオリンのピアニッシモも透明感がある。
編成は、15-14-12-10-8対向配置。
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変ホ長調 作品70
今日の公演ではこの演奏が最も素晴らしかった。クラリネット(ショーン)、フルート(カール・ハインツ・シュッツ)、ファゴット(ソフィー・デルヴォー)の鉄壁のソロと金管の絶対的な安定度、弦のウィーン・フィル特有の澄み切った高音、格調高いヴィオラ、木の香りのするチェロ、しっかりとして鳴りのいいコントラバス(ウィーン・フィルスタイルの舞台正面ではなく下手)まで、ウィーン・フィルのヴィルトゥオジティが発揮された隙のない演奏だった。
ネルソンスの指揮もショスタコーヴィチに向いているようで、切れの良さと陰影の濃さがあり、諧謔性と暗さをよく表現していた。
第1楽章の切れの良さに瞠目。ピッコロ(ヴォルフガング・ブラインシュミット)のソロも余裕がある、シュトイデの第2主題のソロも見事。
第2楽章はクラリネット、フルートがほれぼれとするソロで素晴らしい。オーボエ(クレメンス・ホラーク)もまたうまい。第3楽章もまたしても鮮やかなクラリネットのソロから始まる。
第4楽章導入の3本のトロンボーンもパワフル。悲痛なソロから道化風のソロへとファゴットは名人芸を披露した。
凱旋行進曲のような盛り上がりを経て、疾走しながら終わる最後は、命を懸けた道化の芸のような、凄絶さと皮肉がないまぜになった味わいがあった。
ネルソンスはボストン交響楽団とショスタコーヴィチの交響曲全集を録音しているだけあり、その指揮は説得力があった。
ドヴォルジャーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
はショスタコーヴィチのような緻密さがなく、かなり荒々しい野性的な演奏だった。各楽章の第2主題のようなドヴォルザークの叙情性が出る部分も、わりにあっさりと進めていく。
それでもウィーン・フィルの美点はそれでもここかしこに感じられ、第2楽章ポコ・アダージョのチェロとヴァイオリンの第2主題や、中間部のホルンのハーモニー、チェロによる主題の回帰などそれぞれ美しく格調があった。
第3楽章スケルツォの民族舞曲フリアントはくっきりとしたリズムで進むが、もう少し味わいのある雰囲気で聴きたいと思った。
第4楽章の勢いは素晴らしいが、粗さが感じられもうひとつ惹きこまれずに終わった。
アンコールはニューイヤーコンサートの雰囲気を味わわせてくれた。
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『我が人生は愛と喜び』op. 263を切れのいい生き生きとした演奏で披露、これぞウィーン・フィルという華やかさ。
続いて、ヨハン・シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ op. 214を乗りよく演奏。
聴衆の拍手、喝采を読んだ。
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2024
アンドリス・ネルソンス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
スペシャル・オーケストラ・シリーズ ホール開館20周年記念コンサート
日時:2024.11.7(木) 19:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演
指揮:アンドリス・ネルソンス曲⽬
ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編曲):オペラ『ホヴァンシチナ』第1幕への前奏曲「モスクワ河の夜明け」
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変 ホ長調 作品70
ドヴォルジャーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
[アンコール曲]
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『我が人生は愛と喜び』op. 263
ヨハン・シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ op. 214