
韓国の朴槿恵大統領が訪中した際、旧満州のハルビン駅頭で伊藤博文を暗殺した安重根の記念碑設置を認めてほしいと中国側に要請した。
暗殺事件は1909年。
今さらなぜ安重根なのか。
日本の朝鮮支配の元凶として伊藤博文を暗殺した安重根は、今に語り継がれる韓国最高の民族的英雄である。
先年、韓国の民間人がハルビンで銅像を建てたが、中国当局に撤去されてしまった。
日本への配慮からとも伝えられたが、今回、韓中蜜月ムードの中で中国側の出方が注目される。
朴大統領の要請は明らかに韓国世論向けだった。
親日派と非難された父・正熙の娘として、自分は愛国者であることを国内にアピールするためである。
来たるべき訪日など、対日関係改善に向けての布石とみていい。
対日接近の前にまず反日愛国パフォーマンスで世論の支持を取りつけておこうとの作戦だ。
今回の韓中首脳会談について日本ではもっぱら「日本外し」「日本の孤立化」が指摘されたが、本質は「北朝鮮外し」である。
韓中両国とも、最大の懸案は北朝鮮なのだ。
中国外交において、北朝鮮を差し置いてまず韓国大統領が北京を訪問したのは異例中の異例だ。
注目すべきはむしろ、トップ就任から1年半にもなるのに、まだ金正恩が北京に招かれていないことだ。
韓中のこれ見よがしの友好演出は、北朝鮮を国際社会に引っ張り出すための圧力である。
これに金正恩がどう反応するか。
朝鮮半島情勢の当面のキーポイントである。
しかし、だからといって韓国外交が今後、中国に過度に傾くことはないだろう。
韓国にとって経済的、軍事的に膨張する中国に対する気遣いは不可避であり必須である。
中国の存在感の大きさは日本が感じる以上に切実なのだ。
しかし中国のパワーに対抗できるカードは韓国にはない。
経済だって、このままでは中国に飲み込まれてしまう。
韓国の対中交渉力は、背後に日本があってこそ効果を持つ。
保守本流の彼女は、そこは分かっている。
韓国にもこの地の地政学的環境、歴史的経験から、それなりの戦略的思考はある。
訪米、訪中を終えた彼女の目は間違いなく日本に向く。
日本もそんな韓国をうまく利用すればいいのだ。
2013.07.04
[THIS WEEK 黒田 勝弘]