ぼくの細道

ぼくの細道

じんせいは最高のSHOWである


テーマ:

 

 

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探しものはなんですか?

見つけにくいものですか?

カバンの中もつくえの中も

探したけれど見つからないのに

 

まだまだ探す気ですか?

それより僕と踊りませんか?

夢の中へ 夢の中へ

行ってみたいと思いませんか?

 

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重たい。

このランドセルというやつは、

なんて重たんだろう。窮屈だし。

それに開け閉めする金具もいちいち面倒だ。

 

 

学校の門を出たところから蹴ってた石を

思いっきり蹴っ飛ばすと

飛んで行った石の先から声がした

 

 

ミャア・・・

ミャア・・

 

 

茶色のトラ柄の小さな猫がこっちを見てる。

小さな躰なのに大きな声で鳴きつづける。

 

 

まだ、ちいさな子猫がこっちを見てる。

心臓のあたりがドキドキ鳴った。

 

 

恐る恐る手を伸ばすと、

猫は小さな躰を丸めて面白い格好をして

フー!!とあくびのような声を出した。

 

 

きっと喜んでいるんだ!

そう思ったら、自然と手が猫に触れた。

その瞬間、思いっきり腕を引っ掻かれた。

 

 

引っ掻かれても痛みは感じない。

抱きしめてみたい衝動に駆られて

嫌がる猫をひょい、と腕に抱えた。

 

 

なんだか

もっと強く心臓がドキドキした。

 

 

腕の中でモガモガした子猫は温かく

そして僕と同じようにドキドキしていた。

痩せた肋骨と心臓の鼓動が腕に伝わる。

 

トクトクトク・・・。

 

 

子猫を抱きかかえたまま、なぜか走った。

あんなに重たかった筈のランドセルは

ちっとも、重たさを感じない。

 

 

マンションのエレベータを降りると

家のドアの前で、思い切り息を吸って

腕の中の猫を見る。

 

 

「ただいまー」

 

 

ミャア・・・!

 

 

「なに?あららら」

「なになに、なにーこの猫は!」

 

 

驚いたママが小走りにこちらに駆け寄る

 

 

「そこの、樹のところにいたんだよ!」

「お腹が減ってるんだ、たぶん」

「怪我もしているかもしれない!」

 

 

普段あまり喋らない僕は

言い訳をする時だけは口が早くなる。

 

 

「怪我してんのは、あんたでしょ」

「腕から血が出てる、赤チン塗りなさい」

 

 

子猫はそっと床に下ろすと

うさぎのようにぴょん、ぴょんと跳ねた。

 

 

「ああ〜、困ったねえーもう!!」

 

 

困ったような、楽しいような

なんとも言えない表情のママがこっちを睨む。

そして、子猫の首あたりをつまんで

ひょいっ、と乱暴に持ち上げた。

 

 

 

「そんな持ち方したら苦しいんじゃない?」

 

少し、僕は反抗的にママに言う。

 

 

 

「良いんだよ、親猫は子猫のココを

 こうやって銜えて運ぶんだよ!」

 

ママはいつも〝モノシリ〟という顔をして

僕に大きな声で言い返す。

 

 

「おまえ、お腹減ってるのかね〜?」

「ごはん、どうしようかねー」

 

 

赤チンの蓋を締めながら、

案外、嬉しそうなママの顔をみて

楽しげに提案してみる。

 

 

「ごはんは、お魚とかだよ

 サザエさんのタマもそうだし」

 

 

ママはため息をつきながら

呆れた顔でこっちを見る。

 

 

「あんた、いい加減ランドセル下ろせば?」

 

 

 

 

 

魚の缶詰とご飯を混ぜたものを出すと

ふがふが、と唸りながら

ご飯に脚をつっこんでガツガツと食べた。

 

 

 

「ガトーちゃんは、腹ペコだね〜」

 

「なに?ガトーちゃんって」

 

「ガトーって言うんだよ、

 猫の事をスペイン語でガトーって」

 

また、ママは〝モノシリ〟の顔で

得意気に僕にそう言った。

 

「え〜、変な名前!

 ドリフみたいだよ、それ。」

 

「それはカトちゃんでしょーが!」

 

「ガトーちゃんてより、トラオがいい」

 

「あんた、ほんとセンスないねえー!」

 

 

 

 

そんな事を言いながら、夜ごはんを食べた。

床の上でガトーはぴょんぴょんしていて

僕の胸のあたりもぴょんぴょんしていた。

 

 

「ねえ、ガトーはうちの子にする?」

 

 

すぐに、ママに聞きたかったが

何故だか少し怖くて聞けなかった。

もし、やっぱりダメだと言われたら

どうしようっか。

 

 

 

ベッドの中で夜眠る前に

赤チンの痕が残る腕を眺めながら

ガトーのことを考えた。

 

 

朝起きたら夢だったりとか。

朝起きたら居なかったりとか。

朝起きたら、、

 

 

 

 

 

 

 

「はやく、起きなさい!!ほ〜ら!」

 

いつものママのうるさい声と

カーテンを乱暴に開ける音がする。

 

 

 

 

 

あ。そうだガトーが居るんだった。

覚醒して、5秒ほどしてから頭がまわる。

 

リビングの机の下に、

昨日と同じ茶色いシマシマの尻尾がみえて

胸のあたりがまたぴょんっとしてきた。

 

 

 

「行ってきます!

 あ、今日4時間授業だから!」

 

 

「だから、なに?」

「忘れもんない?ほら、遅刻だよ」

 

呆れた顔でママは言った。

 

 

そうだ。

今日は行きも帰りもピョンピョン歩きで

行ってみたら面白いかもしれない。

 

 

ランドセルをガシャガシャいわせながら

コンクリートを勢いよく蹴り上げて

ガトーの真似をして歩いた。

 

 

 

「ただいまー!」

 

 

玄関のドアを軽やかに開けると

部屋の奥からバタバタと音がしていた。

 

 

「こおーら!こっちこっち!」

 

 

ママがガトーを追いかけ回している。

 

 

「あ、おかえり。ガトちゃんノミがいるよ!」

「今からお風呂に入れるからね」

 

 

ガトーはなんとなく嫌な予感がしたのか

ぴょんぴょんと狭い部屋を逃げ回る。

 

 

「ほら、あんたも捕まえて!」

 

 

ママがちょっとイライラしながら僕に言う。

僕はママと一緒にガトーを追いかけた。

 

 

押入れの上の方へ登ったり

ピアノの隅っこの方へ隠れたり

小さなガトーはすばしっこくて

中々捕まらない。

 

僕の机の下に隠れたガトーは

暗闇から光る目で僕をみていた。

 

 

「おいで。お風呂にいれてあげるから」

 

 

しゃがんだまま、手をのばして

優しくガトーにそう言った。

 

 

ミャ・・

 

ガトーは小さく鳴くと

僕の腕に頰を擦り寄せてきた。

 

 

 

最初の日。

ガトーは僕をみつけて

僕はガトーをみつけた。

これは絶対に運命っていうやつ。

 

そんな事を思いながら

腕の中のガトーの頭を撫でた。

 

 

 

「ほら、きたよ!

僕がおいでって言ったら来た!」

 

 

得意気にガトーを抱きながら

お風呂場のほうへ入った瞬間に

ガトーは腕からシュっと逃げた。

 

 

 

バシャン!!!!

 

 

お風呂のフタに乗ったガトーは

不安定になったフタから落ちて

お風呂場に落ちた。

 

 

ボチャボチャと溺れているガトーを

すぐに、ママが救いあげた。

 

 

 

「あぶない!だからダメなんだよ!

こんな狭いマンションじゃ〜

猫は無理なんだよ!!」

 

 

ママは大きな声でそう言いながら

ガトーをお湯で流して洗ってたけど

僕は咄嗟にガトーを助けてあげられず

少しだけ落ち込んでいた。

 

 

 

 

その夜、不思議な夢をみた。

バス位大きなガトーが僕を乗せてくれて

学校までの道をゆっくり歩いた。

 

学校の友達も、先生もママもパパも。

大きなガトーの上に居る僕を見上げた。

 

 

 

ガトーは僕を見つけてくれた。

僕はガトーを見つけた。

だから、絶対なんだから。

 

 

 

 

 

 

次の日学校から帰ると

家の中はシン・・としていた。

 

 

「ママ??」

 

 

奥からパタパタ・・と小さい足音がして

ぴょんと跳ねてガトーがこちらに来た。

 

 

「ガトー、ただいま!ママは?」

 

 

そう言った時、ドアが開く音がして

ママが帰って来た。

 

 

「あ、おかえり!」

「ちょっと、あんたに話あるから」

 

 

 

なんとなく、心臓のあたりがモゾっとした。

 

「あのね、マンションの隣に大きな医院あるでしょ

ほら、隣のさ大きなお屋敷。」

 

「うん。」

 

「あのお家ね、猫ちゃんたーくさん居るんだって」

 

「・・え?」

 

「大きなお屋敷でしょ?猫が20匹とか。

あの先生が大好きなんだってさ!猫!」

 

「・・・」

 

「6階の堀さんちが教えてくれて。

それで、早速話して来たよ!」

 

「なにを?」

 

「だーかーらー、ガト!

うちじゃあ、飼えないからね」

「隣の先生ん家で飼って貰えますか?って

今、聞いて来たんだよ!」

 

「・・・」

 

「先生の奥さんがいいよって」

 

 

心臓がドクン・・と打ってる音が響く。

だけど、ガトーと出会った時とは違う音だ。

 

 

「よかったじゃん!ねー?」

「あんなに大きな猫のお屋敷でさあ?」

 

 

「でも・・絶対だめだよ、ガトーは」

 

なんとか声は出たが、

何をどう伝えたらいいかわからない。

 

 

「ダメじゃないよ!あんなに広いお家で

しかも、お友達の猫たくさん居るんだよ」

「ガトーにとって、こんなに幸せな事ないでしょ」

 

 

「でも!!ガトーは嫌だって言ってる」

 

「おまえは、猫語が喋れんのか!」

 

「喋れなくってもわかるんだ!」

 

「とにかく!ウチでは飼えないって言ってる!」

 

「でも、絶対に絶対にガトーはここに

僕の家に居たいって言ってる!!」

 

「絶対にってなに?!」

 

「絶対なんだよ!!!」

 

「絶対なんか、ないんだよ!!」

 

「絶対にあるんだ!!」

 

 

悔しくて、目から涙が落ち

両方の鼻からは鼻水が垂れた

 

「とにかく!夜遅くなっちゃうから行くよ!」

 

「いやだいやだいやだ!!」

 

 

ママはガトーの首のあたりをクイっと摘むと

腕に抱えて、外へ出ようとする

 

 

「絶対にいやだ!

ガトーは僕をみつけたんだ!」

 

ママの足につかまったまま

バタバタと引きづられる。

 

絶対に譲らない僕に、呆れたママは

 

「わかった。

じゃあ、ガトーを連れてってみよう」

 

と、静かに提案してきた。

 

「お屋敷に行ってみてガトが嫌がったら

仕方がない、連れて帰ってこよう」

「それなら、良いでしょ?」

 

 

自信があった。

ガトーは絶対にここが良いんだ。

僕をみつけたんだから。

 

 

僕は床に転がったまま、

ママの足をそっと離した。

 

 

「うん、いいよ。」

「ガトーはここが良いんだ、絶対に」

 

そう言いながら、僕の腕の中に包まれて

エレベータに乗り込んだ。

 

外はもうすっかり陽が暮れ始めていた。

ママはお屋敷の門のチャイムを押した。

 

 

「はい」

チャイムの向こうから冷たい女性の声がする。

 

「あ、さきほどお話させていただいた・・」

 

「あ、はい。どうぞ玄関までおいでください」

 

そう言うと、ブチっと声が切れた。

 

 

腕の中のガトーの温もりを感じながら

ガトーの虎模様の頭を撫でて静かに囁いた

 

「嫌だよな?こんな家」

 

 

門を潜ると綺麗な樹々が立つ庭が広がり

少し歩くと、大きくて堅牢な洋館が現れた。

 

洋館の扉がガチャ、と開くと

中から白髪の女性が現れた。

 

 

「あら、その可愛い子かな?」

 

 

女性は、僕と僕の腕の中のガトーを見て

目を三日月のように細くさせて笑って言った。

 

僕は、さっきより少し強くガトーを抱いた。

 

 

「どうぞ」

 

扉を開けるとうちのお風呂場より広い

大きな石が貼ってある玄関があって

正面には大きな茶色の木の階段が広がっている。

階段の周りには、毛艶の良い4〜5匹の猫たちが

うろうろと優雅に歩いていた。

 

 

 

「可愛い、茶トラちゃんだね」

 

女性はそう言うと、ガトーに手を延ばそうとする。

僕は咄嗟に、後ろに下がり身を引いた。

 

 

「あらあら」

 

そう言って、女性はまた三日月の目をして

ガトーじゃなく僕の頭を撫でた。

 

 

大きな三毛猫がガトーに向かってニャアと鳴いた。

その瞬間、ガトーが僕の腕から飛び降りた。

 

 

「あ・・・」

 

 

ガトーはいつもより大きくぴょんぴょん跳ねて

三毛猫の方に歩み寄って行ったのだ。

 

 

心臓がドキンとしてお腹が痛くなってきた。

 

 

 

「ガトー、」

 

小さい声で僕は呼んだ。

 

「ガトー、ねえ、ガトー・・」

 

 

ガトーは振り向きもせず、ぴょんと跳ねて

三毛猫にじゃれ付いている。

 

 

「あらあら、もうすっかり仲良しね」

 

 

楽しそうに遊ぶガトーと三毛猫を

三日月の目の女性が満足気に眺めた。

 

 

「よかったねーガト!あんた幸せもんだ!」

 

「本当に有難いです。

 どうぞよろしくお願いします」

 

 

ママが大きな声でそう言って

三日月の女性に頭を下げる。

 

 

ガトーは、大きな三毛猫と白い猫の側で

ぴょん、ぴょんと跳ねている。

 

 

「ね、ほら。ガトーはここが良いってさ!」

 

ママはそう言いながら僕の背中をトンと叩いた。

 

 

三日月の女性は、目を細くしながら僕を見て

 

「ねえ?お隣のマンションなら、

いつでも猫ちゃんに会いに来たらいいわよ」

 

「学校帰りでも、会いにいらっしゃいよ、ね?」

 

 

 

 

ガトーは僕をみつけて

僕はガトーをみつけた。

これは絶対。

絶対に・・・。

 

 

僕は、部屋を出る前にもう一度

 

「ガトー、帰るよ!」と大きく呼びかけた。

 

 

すると、ガトーは僕の方をむいて

僕のほうへぴょんぴょんと走って来たのだ。

 

けれど、玄関の少し前まできて、

そこでピタリと足を止めた。

 

そして、踵を返して猫たちの方へ

ぴょんぴょんと跳ねて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

腕に残る、カサブタを撫でながら

僕は静かに扉を閉めて、洋館をあとにした。

 

 

 

7才の秋。

それから、一度も

隣の門をくぐる事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人はいつの頃から

絶対的なものは無いって

気がつくのだろう。

 

 

 

 

 

いや、探しつづけるのかな。

 

 

 

 

 

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探しものはなんですか?

見つけにくいものですか?

 

まだまだ探す気ですか?

それより僕と踊りませんか?

夢の中へ 夢の中へ

行ってみたいと思いませんか?

 

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