～疎外感や孤独を感じている人たちへ～

パソコン教室を営んでいる

和田基博（わだもとひろ）と申します。

私が、B型肝炎のことがきっかけで

帰郷して地元の病院に転院し

2カ月ほどで退院することが出来ましたが、

父も同じ病院に罹って（かかって）おり

まだ入院はしていなかったのですが

母には担当医から

父は胃がんで、病巣は胃の半分を

占めており、手術が必要だと

告知されていました。

もちらん、母は医師から告知された後

長男の私と弟（私には3歳違いの

弟がおります）以外には、誰にも

知らせず、

それは父に知られたくなかったし

気が優しかった父を

心配させたくない

という思いがあったのだと思います。

世間というのは、残酷なもので

父の入院に関して

酸素マスクをつけて

もう危ないのではないか

とか憶測や噂で言っているのを

聞いたこともありましたが

周りには、そんなことはないと

否定していきました。

胃を全摘出および脾臓（ひぞう）を摘出して

無事手術は成功し、術後

私たち家族に、担当医は

父の摘出した胃と脾臓を

トレイに載せて見せてくれたのですが

それが父のものだと言われると

不思議と気持ち悪いとか

変な感じはしませんでした。

それから経過も良く

8月には父は退院して

自宅で過ごすことになりましたが、

弟に子供ができたこともあり

孫に対してのその可愛がりようは

息子の私から見ていても

自分がその子を抱いているときに

他の人には、抱き方がダメだとか

そんなに寝かしてばかりではダメだとか

とにかく孫に対して自分がかかわっていないと

不満を覚えるほどで

この孫とかかわる時間が、

父にとってもっとも幸せな

期間だったのではないかと

私の中では

今思えばそんな感じがします。

それから秋を迎えた辺りから

父の体の様子がおかしくなり

検査を繰り返して

10月も中旬に検査後、

再入院になりました。

再びの担当医からの告知で

ガンがあちこちに転移していて

特に脊髄に転移したのが

致命的で、余命2～3カ月と

宣言されました。

その時は母と私の二人で

医師からの告知を受けたのですが

母はショックのあまり

病室を出た後から

自宅に帰るまでの間、

ずっと泣きっぱなしだったのを

覚えています。

しかし母が立派だったのは

父の付き添いに病院に行っている間

父の前で泣くようなことは

しませんでした。

父もうすうす感じていたようで

「俺はガンじゃないのか？」

「何か別の酷い病気か？」と

イライラから母に詰め寄ることも

あったようです。

病状は、医師の告知通り

痛みがだんだんとひどくなって

麻酔やモルヒネ（だったと思いますが）

効かなくなって、父が七転八倒する様子や

「だれか助けて―」と叫ぶさまは、

今になっても

私の目に焼き付いています。

父の痛がりようは、それは

この世の地獄とでもいうべき

ものであり、見兼ねて

ナースステーションや医師に

何とかして下さい、痛み止めを

お願いしますと懇願しました。

それでも治療する側としては

規定量というものがあるのだと思いますが

さっき打ったばかりだから駄目ですと

看護師に冷たく言われると

ハラワタが煮えくりかるほど

怒りを覚えたのを今でも

思い出します。

救いだったのは、弟夫婦が気を利かせて

孫を連れてきていましたので

まだ乳飲み子だった孫を

眺めて幸せそうにしていた

父の顔が印象的でした。

あるときは、俺の病気がうつると

いけないから連れてくるなと

母に言っていました。

翌年の1月26日父は永眠しましたが

その日は弟と2人で

病院に来たのですが、

なぜか2人とも上機嫌で

エレベーターや病室に

向かうまで、ふざけ合ったことを

覚えています。

病室に着くなり、危篤という

事を聞き、父のそばに寄って

手を握ったのですが

最後の呼吸を聞くことに

なりました。

最後の呼吸の瞬間、

私はやさしく「お父さん」と

語りかけ、その言葉が父に

届いたような気がしました。

母は「お父さんが死んだー」と

私に叫びました。

私は病室を飛び出し

ナースセンターへと向かいました。

だれでもいいから

ぶん殴ってやろうと

思っていました。

そのとき父の従弟の叔父が

私の後を追いかけてきて肩を掴み

「もとひろーっ」と

私を引き留めてくれました。

目の前にはナース3名、医師2名が

いて、防御の姿勢を取っていた

ことが目に焼き付いています。

このとき、ああこの人たちに

責任はないのだ、自分は何を

しようとしているのだろうと

我に返りました。

結局、父が亡くなるその日まで

ガンであったことは、

母は父に告げませんでした。

最後まで父のことを案じていた

からだと思います。

祖母の生前に私にとっては

おばあちゃんですので

私の父（ばあちゃんからすると息子）は

自慢の息子であると聞かされた

事があります。

当時は、「何で、ばあちゃん、そんなこというのだろ」

思っていたのですが

今となって考えてみれば

その気持ちがよくわかるような

気がしています。

続きは次回以降アップしていきたいと

思いますので少しでも、

何か参考になったとか

興味があるとか

気が落ち着いたと思って下さると

幸いです。

～ 回想 父の死 ～

～　回想　父の死　～