「閉じ込めてごめんね」
そう言ったら、君は小石を投げつけてきた。
でも私には届かない。
ごめんね、閉じ込めて。

私は、小さな箱庭を手に入れた。
特別、これと言った魅力はない、普通の箱庭だ。
でも私は、ものすごく欲しくなった。
少し高かったけれど、箱庭を購入した。
そして、小さな小さな人形とソーイングセットも買った。
帰りに君の家に寄って、「君の髪の毛が欲しい」と言った。
「この箱庭に入れる人形の、髪の毛に使うの」
掌に、小さな小さな人形を置いて見せた。
君は怪訝な顔をして、「君は少しおかしいよ」と言った。
「人の髪の毛で人形を作るなんて、どうかしているよ」
私は、君の発言には何とも思わなかったけれど、髪の毛をもらえないと分かって、少し腹が立ってしまった。
「ほんの少しでいいのに」
私はテーブルに置いてあった鋏を手に取って、勢いよく君に突進した。
君は私を跳ね飛ばそうとしたけれど上手くいかず、私は必死に君に鋏を向けた。
私たちは床に倒れ、荒い息で揉み合った。
そうしているうちに、だんだん君に力がなくなり、私の手が赤くどろどろになっていくのが分かった。
そして、君は動かなくなった。
君の傍には、大きな赤い染みと、散らばった君の髪の毛。
私は、手と鋏を丁寧に洗い、倒れた君から少量の髪の毛を切り取った。
おかしな色になっていく君を見ながら、人形に髪の毛を取り付けた。
だんだん、君らしくなっていく人形。
私は、出来上がった人形を箱庭の中に入れた。
すると人形は、こちらを向いて何かを言った。
小石を投げた。
でも、私には届かなかった。
「ごめんね、閉じ込めて」
私は、冷たくなった君の胸に突っ伏して、大声で泣いた。