1813-シャルル・エミール・ジャック | バルビゾンの風

バルビゾンの風

バルビゾン派(バルビゾンは、École de Barbizon)は、
1830年から1870年頃にかけて、フランスで発生した絵画の一派である。
フランスのバルビゾン村やその周辺に画家が滞在や居住し、
自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた。1830年派とも呼ばれる。

【1813-シャルル・エミール・ジャック(1813~1894)】
CHARLES-ÉMILE JACQUE


1813 パリに生まれる。

1830 地図の版画職人の見習いに入る。
その後、志願して6年間軍隊生活を送る。
兵役後、渡英。イギリスにてシェークスピアの挿絵を制作(約2年間)
フランス帰国後、銅板画家、挿絵画家として活動(1843頃まで)

1840頃 モンマルトルの風景を描き始める

1845 エッチング(版画)でサロン入選。
その後、版画家として幾度か入選。この頃、ミレーと出会う。

1849 暴動とコレラで混乱するパリを逃れ、ミレーと共にバビルゾンに移住。
ミレーとは隣り合った家に住む。
その後、家畜や農業をはじめ、主題も家畜が中心となる。
ミレー、ルソーと共にバルビゾン派の基礎を築く

バルビゾンの村でジャックはミレーやルソーのすすめもあって
油彩画を描きはじめ、版画時代に築きあげたすぐれた技巧を油彩画に
反映し、羊の群れと羊飼いという牧歌的な主題を写実的に描いて
たちまち人気画家となった。

1861 サロンに絵画を初出品、3等賞、64年に2等賞を得た。

1867 レジョン・ドヌール勲章を受章する。
1889 パリ万博で絵画部門金賞と版画部門大賞を受賞する。

羊と羊の群れを多く描き【羊飼いの画家】として知られ、羊の性質などを微妙に捉え、温かく描き出し【羊のラファエロ】と呼ばれ人々の人気を集めた。
1894 パリで没。バルビゾン派の中でも最も長命であった。


【作品名】牛飼い
【種類】パネル油彩
【サイズ】46.0×38.0cm(仏8号)
※Michel Rodrigue鑑定書付き


【作品名】果実のある生物
【種類】パネル油彩
【サイズ】37.0×76.0cm(仏8号)
※Michel Rodrigue鑑定書付き


【作品名】帰途につく羊たちの群れ
【種類】板に油彩 1856年作
【サイズ】30.0×60.0cm(仏変12号)
 ※左下にサイン


【作品名】羊飼いの少女
【種類】板に油彩
【サイズ】47.0×38.0 cm(変仏8号)


【作品名】羊飼いと羊
【種類】紙にコンテ
【サイズ】14.8×19.3 cm
 ※左下にサイン


【作品名】風景の中の羊の群れ
もしくは平原で羊の群れを連れた羊飼い
【種類】紙にコンテ 1859年作
【サイズ】61.7×97.8 cm 仏40号


作品名 フォンテーヌブローの森の羊飼い
種類 キャンバスに油彩
サイズ 81.5×65.3 cm 仏F25号
1936年ニューヨーク、メトロポリタン美術館所蔵



★バルビゾン七星とは?★



ジャックの【羊飼いの少女】と中村コレクションの秘蔵の作品【羊の群れの帰り】の比較、この作品は非常によく似ているが同じ時期に描かれた作品ではないと思われる。ジャックの作品で羊飼いが絵の主役になる事は少ない、ジャックの通例に反してこの二点の作品の中心は女性の羊飼いである。

 右の作品は、ほぼ中央に壁に右肘を付き寄りかかりながら左手で杖をしっかり握っている、そうしながら羊の群れが小屋に入っていく様を注意深く眺めている。羊の群れを一日中バルビゾン周辺の平原を連れ歩いてようやく羊小屋までたどり着き最後の羊の番なのだろう、牧羊犬も日が陰り始めて暗い小屋の中に入り込む羊の群れを見張っている様子が見事に描かれている。左下に鶏が餌を啄んでいる光景がまた一日ののどかな暮らしを演出している。

 もう一方の作品左の作品は非常に透明感が有り空気感が感じられ、色彩もよりリアルに描かれており、全体の構図も大きくゆったりと描かれ細部にわたり極め細かく表現されている。少女の足が素足であり、牧羊犬も羊飼いの少女の足元に横になって有らぬ方を見ている。ここまで連れ帰ったら羊が羊小屋に入るのが当然と言っている様なのである。羊飼いの少女は入口の壁に寄りかかりながら編み物に熱中している。その隣の小屋の入口の奥にうっすらと小屋の内部が描かれているこのトーンの影としての使い方は表と中の陰影の違いが見事にえがかれ、また鶏の表情が農家の平穏な暮らしぶりを描き切っている。この作品は絵として非常に優れており、絵筆のタッチが余すことなく細やかに繊細にそして質感が色彩と相まって、より明るく描かれている。

 この2点の作品は同じ場所を描きながらも随分と違いが有る。任務を果たすのがもう少しで終わると言うのと、もう羊飼いの仕事が慣れ切って目をつぶってでも出来るというような違いがはっきりと表れている。
 
右の作品はミレーの描き方にもよく似通っている、油彩の描き方をミレーから教わっているから、ミレーに似るのは当然であろう。左の作品は羊飼いの少女の顔の表情がよく見て取れる非常に写実的に描かれており後半のジャックの作品である。