HPにまだ載っていない獣医師の屶網です。
今回はカメのお話です。
今回来院された患者さんの外見の写真です。
何がおかしいかおわかりでしょうか。
そうです、このカメさんは超絶メタボなのです。
このカメはオオアタマヒメニオイガメSternotherus minor minorという北米のミズガメで、しっかりとした円みを帯びた甲羅と巨大化する頭部が特徴です。
しかしこのカメさんの大腿部や脇の下はかつての小錦のように、甲羅の外にはみ出てしまっています。
カメというのは甲羅という強力な鎧を持つ代わりに、おなかの中の体積が外に広がることができません。
つまり太るとその分内臓を圧迫します。
レントゲン写真で見ると、腸管が圧迫されてかなり背中の方に持ち上がっているのがわかります。
さらに、肝臓の細胞を顕微鏡でみると、肝細胞がほとんど脂肪で満たされていました。
これは太りすぎに続発する「脂肪肝」という病気で、シンプルな名前ですが爬虫類が突然死することもある怖い病気です。
カメに限らずフトアゴヒゲトカゲやサバンナモニター、ロシアリクガメ等でよく遭遇します。
われわれ人間は食事を抜いたりすると体脂肪からエネルギーを動員して使うことができます。
爬虫類は脂肪をエネルギーに変換するのが苦手なので、肝臓に脂肪がたまっていってしまうのです。
脂肪肝は愛情が裏目に出てしまう皮肉な病気とも言えるかもしれません。
健康面でいえば、爬虫類はとにかく、太らせすぎないことが大事です。
ブリブリで可愛い個体、というのはわれわれ人間のメタボ以上に危険な状態であると認識すべきだと思います。
幸いこのカメの飼い主さんはとても熱心な方で、生きた巻貝やペレットをうまく食べさせているようです。
治療は長期になってしまいますが、これからがんばってゆっくりとダイエットさせていきたいと考えています。