ほぼ僕自身の備忘のために記すこのシリーズ。編集者時代に謦咳に接した作家の想い出について書いています。

 

これまで、

①  山口瞳さん (1926~1995)  ←クリック!!

②  庄野潤三さん (1921~2009)  ←クリック!!

③  宇野千代さん (1887~1996)  ←クリック!!

④  淀川長治さん (1909~1998) ←クリック!!

⑤  梅原 猛さん (1925~2019) ←クリック!!

⑥ 新藤兼人さん (1912~2012) ←クリック!!

⑦  小沢昭一さん (1929~2012) ←クリック!!

⑧  田辺聖子さん (1928~2019) ←クリック!!

⑨  ナンシー関さん (1962~2002) ←クリック!!

⓾  佐野洋子さん (1938~2010) ←クリック!!

⑪  永六輔さん (1933~2016)  ←クリック!!

⑫  内海好江さん(1936~1997)  ←クリック!!

⑬  水木しげるさん(1922~2015) ←クリック!!

⑭  杉浦日向子さん(1958~2005) ←クリック!!

⑮  半藤一利さん(1930~2021) ←クリック!!

⑯  瀬戸内寂聴さん(1922~2021) ←クリック!!

⑰  井上ひさしさん(1934~2010) ←クリック!!

⑱  城山三郎さん(1927~2007) ←クリック!!

⑲  長 新太さん(1927~2005)  ←クリック!!

⑳  井田真木子さん(1956~2001) ←クリック!!

㉑  村上元三さん(1910~2006)←クリック!!

㉒  辻 邦生さん(1925~1999)←クリック!!

の皆さんの写真とお会いした時のエピソードをご紹介してきました。今回ご紹介するシリーズ第23弾は…。

 

 

僕が大学に入ったのは1979年の4月。

 

 

英米文学の授業の初回。のそっと入ってきた角刈りに黒ぶちメガネの中年の講師はぼそぼそと語り始めました。

 

 

「僕はね、マフィアに関しては多分、日本でいちばん詳しいですよ」

 

 

「君たちは若くて体温が高いからこれから夏に向けて無理に授業には出席しなくていいですよ。最低の単位は出しますから」

 

 

「まぁ君たちのほとんどは卒業後、中小企業のサラリーマンになると思うんですが・・・」

 

 

ここで大学入りたてて青雲の志に燃える(本当かよ)僕たちが不満げなざわめきを発したら

 

 

「いやいや気を悪くしなさんな。僕もちょっと前まで中小企業のサラリーマンだったんですから」

 

 

その後、「昨日、常盤先生がNHKでアメリカ禁酒法時代の話をしてたぜ」なんて話が同級生から回ってきたりもしました。

 

 

そう、その先生こそ常盤新平さん(1931~2013)でした。当時は翻訳家をしていてアルバイトとして大学の講師をしていたのです。そしてたしかに「数年前まで中小企業のサラリーマンをしていた」も嘘ではなかったです。早川書房で「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」や「ハカヤワ・ノヴェルズ」等の編集長を務めておられました。それらも「中小企業のサラリーマン」といえば「中小企業のサラリーマン」ですよね。

 

 

僕は基本的に先生の言いつけは聞く方なので、「最低限の単位」をいただきました。

 

 

そして3年経った大学4年の時。師匠である国文学者・松田修教授と話していたら、

 

「君は常盤さんに英語を習ったんですよね。これから常盤さんに会うんで一緒に来ませんか」

 

と誘われました。お二人が親しいことは以前から聞いていました。僕は前述の通り「最低限の単位」をもらった身の上で合わす顔はないのだけど、せっかくなので松田師についていきました。

 

 

常盤さんの仕事場は大学並びのワンルームマンションの一室でした。それまでワンルームマンションなるものに入ったことはなかったのであまりの狭さに驚き「ビジネスホテルみたいですね」なんて間抜けなことを言ったことを覚えています。

 

 

僕は基本的に先生の言いつけは聞く方なので、卒業後は中小企業のサラリーマンになりました。その何年後かに常盤先生が『遠いアメリカ』で直木賞を受賞されました。

 

 

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そしてさらに数年後。僕も編集者になってしまい、「新刊ニュース」誌の一人親方になって最初に組んだ巻頭対談に登場いただいたのが常盤新平さんでした。ネガや紙焼きが残ってなくて雑誌のスキャンなので不鮮明ですみません。

 

 

 

 

テーマは「初老の選択 ~大人のダンディズム」。お相手は同年生まれの作家・諸井薫さんでした。ギラギラしない余裕のある大人の生き方やダンディズムについて語り合っていただきました。時は1992年の11月。出版界がまだ景気のいい時代で、会場は築地の料亭でした。

 

 

当時は常盤さんも諸井さんも仰ぎ見る大人(たいじん)でしたが、今の自分より年下なのに愕然とします。

 

 

その後も常盤さんが小説では山口瞳先生に私淑しておられ、また嵐山光三郎さんとも親しかった関係で、僕が編集現場を離れてからも国立、その他でお会いする機会は多かったです。谷保天満宮にある山口瞳先生の文学碑の裏面の寄進者一覧は50音順なのですぐそばに並ばせていただきました。

 

 

 

嵐山さん主催のグループ展にともに出展したこともありました。

 

 

 

ところで常盤さんの初期のエッセイに『雨あがりの街』という本があります。

 

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そのなかに「学生」と題された小文があります。

 

 

 

そのエッセイは「一週間に一日、マンモス大学で英語を5年ばかり教えている」と書きだされています。

 

 

 

 

もしかして…、と思ったら、

 

「彼らはとにかく行儀が悪い」

 

 

 

 

やっぱり。たしかに行儀、悪かったよなあ。すごく悪かったです。ただこの本が出たのは1986年だけどこのエッセイの初出は1978年の1月だから僕の入学前。行儀が悪かったのは先輩たちです。

 

 

とはいえ、ピラミッド玄室内の落書きを持ち出すまでもなく、若者というのは常に愚かで行儀が悪いものです。常盤先生のように寛大に構えるのが大人のダンディズムなのかもしれませんが、いやはやご迷惑をおかけしました。

 

 

そして常盤さんの仕事場のマンション。グーグルストリートビューで見たら今もありました。

 

 

 

そうそう、こんな間取りでした。

 

 

 

 

【これまでの「昔日の一葉」 ---50音順---】

 

井田真木子さん(1956~2001) ←クリック!!

 

井上ひさしさん(1934~2010) ←クリック!!

 

 内海好江さん(1936~1997)  ←クリック!!

 

 宇野千代さん (1887~1996)  ←クリック!!

 

梅原 猛さん (1925~2019) ←クリック!!

 

 永六輔さん (1933~2016)  ←クリック!!

 

小沢昭一さん (1929~2012) ←クリック!!

 

佐野洋子さん (1938~2010) ←クリック!!

 

庄野潤三さん (1921~2009)  ←クリック!!

 

城山三郎さん(1927~2007) ←クリック!!

 

新藤兼人さん (1912~2012) ←クリック!!

 

 杉浦日向子さん(1958~2005) ←クリック!!

 

 瀬戸内寂聴さん(1922~2021) ←クリック!!

 

 田辺聖子さん (1928~2019) ←クリック!!

 

長 新太さん(1927~2005) ←クリック!!

 

辻 邦生さん(1925~1999)←クリック!!

 

ナンシー関さん (1962~2002) ←クリック!!

 

半藤一利さん(1930~2021) ←クリック!!

 

水木しげるさん(1922~2015) ←クリック!!

 

村上元三さん(1910~2006)←クリック!!

 

山口瞳さん (1926~1995)  ←クリック!!

 

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2月6日(木)~2月16日(日) 

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老生の昔語り。編集者時代に謦咳に接した作家の想い出について書いた「昔日の一葉」。

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