もう10日以上も前のことになるが…。

 

 

8月10日(火)。東京ツアー中のYO-ENさんは千葉県柏市を訪れた。早世のクリスチャン詩人・八木重吉(1898 - 1927)の足跡を辿る小さな旅だ。僕も随行させていただいた、

 

 

YO-ENさんは数年前の偶然の出会いからすっかり重吉の詩に心酔、導かれるように詩に曲をつけて歌唱している。発表曲はまだ少ないが実はすでに10数曲できている。「ひとりの詩人にこんなに夢中になるのは初めてです」「貪るように曲をつけました」と語るYO-ENさん。もしかしたら、その出会いは「偶然」などではなく「必然」だったのかもしれない。

 

 

 

八木重吉  明治31年(1898)、現在の東京都町田市の農家に生まれる。中学の英語教師をしつつ詩作に励むも肺結核に罹患し昭和2年(1927)、29歳の若さで死去。敬虔なクリスチャンであった。存命中に出版した詩集は処女詩集『秋の瞳』のみ。第二詩集の『貧しき信徒』は死の4か月後に刊行された。未刊行の膨大な詩稿を遺しそれらは死後、多くの本に再編・刊行され今も広く愛されている。

 

 

柏市には教師としての重吉最後の赴任校・東葛飾中学校(旧制。現・千葉県立東葛飾高等学校中学校)がある。そして当時は東葛飾郡千代田村と言ったこの地は重吉が最後に妻子とともに暮らした地。当時、不治の病だった肺結核に罹患した重吉はここから茅ヶ崎のサナトリウムに移り、29歳の短い生涯を終えた。

 

 

12時30分に国立を車で出発。中央高速、前日までオリンピック特別割増料金だった首都高、常磐自動車道を通って柏を目指した。柏駅近くのコインパーキングに車を止めて、待ち合わせの時間まで駅近くのスターバックスで時間調整。

 

 

待ち合わせのお相手は30年以上、ここ柏の地で八木重吉の詩の研究・普及活動をしている「八木重吉の詩を愛好する会」渉外担当の小林正継さん。元・英語教師で数年前、重吉の生家の物置から約100年ぶりに発見された重吉の学生時代の英語の日記を出版した「八木重吉英文日記」の翻訳者でもある。

 

 

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かねてよりYO-ENさんの八木重吉楽曲を高く評価してくれていて「八木重吉の詩を愛好する会」の会報「とかす力」にその活動を大きく紹介してくれた。

 

 

拡大。一部修正。

 

 

また伝説の劇画家・つげ忠男さんとコラボした新MV「わたしはわるい人間だもの」のテキスト欄に賛辞を寄せてくれている(クリックしてお聴きください)。

 

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「〈哀しみ〉の彼方に輝く光が暗示される八木重吉の詩は、人々の心に共感と癒しを与えて来ましたが、それをじっくり歌いあげるYO-ENさんは、かつてない新鮮な感覚で重吉の詩の心を表現しています。 ( 八木重吉の詩を愛好する会 小林正継)」

 

 

 

挨拶のあと、まずは東葛飾高等学校をご案内いただいた。

 

 

 

 

ここは重吉が教鞭をとった学校である。そして敷地内には詩碑「原っぱ」がある(道路側に向けて)。これは昭和60年(1985)に結成された前出「八木重吉の詩を愛好する会」が、詩碑建立を呼びかけ建立委員会を組織し東葛飾高校同窓会を中心に募金を働きかけ建立した。小林さんは当時からの中心メンバーの一人で、ご自身、東葛飾高校の出身者なのだ。

 

 

 

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原っぱ

 

ずいぶん

ひろい原っぱだ

いっぽんのみちを

むしょうにあるいてゆくと

こころが

うつくしくなって

ひとりごとを

いうのがうれしくなる

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これは重吉が柏市、当時の千代田村在住時『文章倶楽部』という雑誌に投稿した詩で、初出時は「野原」だったが後に詩稿に整理する段階で「原っぱ」と改められたこと、この「原っぱ」は「柏競馬場」を経て現在の広大な「豊四季台団地」になったと小林さんに教えていただいた。

 

 

 

 

同校卒業生である小林さんの案内で校内へ。重吉がいた当時の校舎はさすがに残っていない(小林さんの在校時は現役で使っていたという)が、その建設当時は最先端のモダンな建物だった石造りの玄関アプローチが残され、モニュメントとして往時の姿を今に伝えている。

 

 

 

 

そのあとは登美子夫人が著書『琴は静かに』でたびたび言及している「流山みち(流山街道)」を教えていただいた。

 

 

 

 

さらに学校職員住宅あと、仮寓あと、などをご案内いただいた後、車で柏市「東」にある「第一宣教バプテスト教会」に向かった。「八木重吉の詩を愛好する会」は事務局の住所を閑静な住宅街にあるこの教会に置いている。同会の詳細については下の写真をクリックしてください八木重吉に関する詳細な情報や文学散歩の資料など満載です。

 

↑↑クリックすると「八木重吉の詩を愛好する会」の詳細↑↑

 

同会の事務局長の任にある天利武人(あまりたけと)牧師と面談。天利牧師も東葛飾高校のOB。小林さんの先輩にあたる。症例の少ない「B群溶連菌による劇症型壊死性筋膜炎」という難病で股関節より左脚を離断しての車椅子生活。牧師としての活動をしながら「八木重吉の詩を愛好する会」の活動をしている人。数年前にはキリスト教系ネットTVのCGNTVJapanの長寿番組「本を旅する」で司会の久米小百合さん(元・「異邦人」の久保田早紀さん)をお相手に八木重吉の詩について語っている。

 

 

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教会の集会室でお茶をいただきながら八木重吉と重吉の詩についていろいろたっぷりと語り合う充実のひと時を持つことができた。

 

 

 YO-ENさんと天利牧師(前)と小林さん(後)

 

時間がいくらあっても足りないような語らいだったが切り上げて2階の礼拝堂を案内していただいた。

 

 

 

 

ちょうどステンドグラスから陽光が差し込む時間の荘重な空間。

 

 

 

 

世俗にまみれ切っている僕までしばし敬虔な心持ちになった。

 

 

 

 

お土産にいただいた名産の梨を抱えて辞去。

 

 

 

復路は外環道。なかなかしぶとい渋滞につかまって往路の二倍の時間をかけて帰ったが、夕日の美しさは格別だった。

 

 

外環道の草加付近。撮影はYO-ENさん。僕は運転に全集中。

 

 

 

「YO-EN東京ツアー2021夏」の詳細のまとめについては下の画像をクリックのこと。

 

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そしてこの日のYO-ENさん自身の感想については、こちらをクリック(←)していただくと飛びます。

 

 

 

「(重吉の詩を読み)貪るように曲をつけました」と語るYO-ENさん。その第一作がこちら。

 

「うたうときは」  八木重吉  『花と空と祈り』所収の無題詩より 作曲:YO-EN

 

(2021年5月23日「YO-EN唄会 黄昏に恋して⑪」にて収録。at 国立:ギャラリービブリオ)

 

 

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