企業経営において必須の素養である経営理論。経営者だけでもなく。投資にも応用できるはずだ。

 

 例えば、単に運がよかった、たまたまブームに乗っかっている企業と、本質的に高い競争力を持つ企業との見極めにも、経営理論は使えるのでがないか。

 

 そのようにして真に強い企業を見極められれば、株式投資による資産運用にも活かせるはずだ。

 

 そこで、農林中金バリューイ「仮に証券取引所が5年しまったとしても、困ることがない」ほどの長期投資をモットーにする奥野氏は、投資仮に証券取引所が5年しまったとしても、困ることがない」ほどの長期投資をモットーにする奥野氏は、投資

 

 今回、経営論理を資産運用に使うための「秘伝のタレ」を紹介してもらう。

 

「利益の影」を追え

 長期的のスタンスについて教えてください。

 

 世の中には、短期的な投資と長期的な投資があります。両者は、クリケットと野球のように、ルールそのものが違うので、一概に比較はできません。

 

 短期投資では、相場や「どの商品が流行っているか」といったトレンドに注目するでしょう。

 

 一方、私たちは長期視点で投資しています。 つまり、「一度買ったら、売る必要がない」会社しか投資しません。

 

 株価というのは、我々にとって「利益の影」です。利益とは「5年、10年、もうかればいい」といったものではなく、より長期間にわたる利益です。

 

 そのように考えると、単に市場が大きくなっていけばいいという話ではありません。成長性そのものよりも、「本当に世の中に必要とされているか」、「参入障壁があるか」に様な観点に行き着きます。

 

  世の中で優良企業とされている企業が数多くありますが、奥野さんはどのような観点で投資先を選んでいるのですか。

 

 我々が投資している企業は、「構造的に強靭な企業」と名付けた企業です。

 

 強靭な構造とは、「高い付加価値」と「圧倒的な競争有利性」、「長期潮流」の3つの要素を持っていることです。

 

 高い付加価値とは、「本当に世の中にとって必要とされているか」という、企業の製品の存在意義にも近いことです。

 

 例えば、都市化によってビルに必須のエレベーターや、世界人口の増加によって必ず増える日用品が当てはまるでしょう。

 

 それから、何かと話題になる半導体も、携帯電話やパソコンだけでなく、EV8(電気自動車)を含めた自動車の電動化や、工場のIoT(モノのインターネット)によって、すそ野が広がっており、高い付加価値を持っているといえます。

 

 長期的な潮流とはAIのような短中期のブームを指すのではなく、人口推移のような、不可逆な流れのことです。

 

 圧倒的な競争優位性とは、圧倒的な参入障壁があるかどうかです。

 

 これは半導体分野のように、巨額投資が必要で、大量に生産できる方が競争有利になる「規模の経済」が代表例です。

 

 そのほかには、コカ・コーラのように、世界各地に生産設備と販売網を構築しており、さらには巨額の広告宣伝費をかけている企業。


 今さら向こうを張って対抗しようとは思わせないだけの高い参入障壁を構築しています。

 

 

 

  なぜ、利益より参入障壁なのか 

  市場の成長見通しが高いと、むしろ長期投資に向いていないケースもあるそうですね。

 

 市場の成長率が高いと期待されている、つまり長期潮流が強すぎると、参入障壁が崩れやすくなります。さまざまな企業が市場に参入してくるからです。

 

 例えば、太陽光発電は、中長期に伸びることが期待されているものの、技術的に差別化するのが難しく、土地と日光さえあれば、どこでも発電できます。

 

 最近注目されている代替肉市場も、注目度が高い分、参入障壁構築するのが難しい可能性があります。

 

 

 株式投資をする人は大概、「成長を買う」という考えを持っています。

一方、長期投資する人にとっては、株式投資とは「長期利益を買う」ゲームです。

 

 短期の利益はともかくとして、長期に利益を出し続けるには参入障壁が不可欠です。「参入障壁は利益の影」です。

 

 長期投資家をする際、場合によっては「成長率が高すぎるのも困りもの」です。

 

 しかも、付加価値については、企業が本来追求すべきとして当たり前であり、長期潮流も比較的理解されやすい。

 

 一方、参入障壁ついては、構築の仕方次第で、企業の競争力に大きな差が出ます。

 

  参入障壁のついては、規制から規模の経済など、さまざまな要素があります。

 

 参入障壁については、我々が体系化したものがあります。まず、需要サイドと供給サイドに分けています。

 

 需要サイドとは、ユーザーがその製品を使い続ける要因などがあります。供給サイドには、競合他社が模倣したり追随したりするのが難しい要因が並んでいます。

 

 ただし、一つの要因だけでは強力な合った時になり得ず、両サイドそれぞれが重なり合った時に、圧倒的な参入障壁が生まれます。

 

 

  例えば、「陳腐化しない需要」。歯磨き粉のような日用品が、その代表例です。

 

  そのほかにも、SMCという日本の会社が手がけている空気圧制御器があります。

 

  工場の動力に使われている空気圧制御器は、10年前と今で、使われている品番がほとんど変えありません。ということは、製品が陳腐化する可能性が低いといえます。

 

  逆に、エレクトロニクス産業は、例えばアップルの「iPhone」で、それまで使っていた液晶ディスプレイが有機ELディスプレイに置き換わるなど、大きなイノベーションが起きる分野です。

 

 イノベーションが起こり、それまで使っていた製品や部品が陳腐化する可能性が高い分野では、参入障壁を築くのは難しくなります。

 

 

 

 

 このほかにも、スイッチングコスト(現在使用している製品・サービスから切り替えるときに生じるコルト)には「習慣コスト」、」「サーチコスト」、「コストと付加価値のアンバランス」に3つがあります。

 

 習慣コストというのは、普段口にしているチョコレートや飲料水を別のブランドに代える時の心理的な壁を指します。サーチコントロールとは、代替品を探す際の時間や手間のことです。

 

 コストと価値のアンバランスというのは、化粧品や芳香商品に使う香料が当てはまります。

 

 化粧品や芳香商品にとって香りは商品価値を左右するほど重要であるにもかかわらず、商品コスト全体に対する香料のコストは圧倒的に安い。

 

 ですので、わざわざリスクを取ってまで、安い他社製の原材料に置き換えようとする経済的なイノセンティブが発生しません。

 

 

 

 参入障壁は「色褪せやすい」そうですが、強力な参入障壁はどのようにして構築できるのでしょうか。

 

  例えば、コルゲートというアメリカの会社が手がけている歯磨き粉は、まさに「陳腐化しない需要」が当てはまる分野でしょう。

 

 世界シェア4割、140か国で市場シェアトップ。国によってはほぼ独占してます。供給サイド側にある「規模の経済」が働いています。

 

 SMCも、需要サイド側で見ると、空気圧制御器という陳腐化しにくい製品を手がけており、この分野でだれにも負けない「生産技術」を持ち合わせています。

 

  このように、この需要サイド側にある陳腐化しない需要と、供給サイドの規模の経済、その2つが組合わさって参入障壁ができます。どちらか1つだけでは、参入障壁があるとまではいえません。

 

  こうした参入障壁の要因分解は、日用品のようなコモディティでも、半導体のようなハイテクでも、共通して当てはまるのでしょうか。

 

  もちろん、業界固有のものではありません。

 

  例えば、参入障壁の要因の中に、「周期性」があります。

 

 日本では、あまりなじみがないかもしれませんが、世界的なチョコレート市場では、年間需要のかなりの部分が、イースター(復活祭)やハロウィンの期間中に集中します。

 

  この時に、一気に増えた需要を賄えるだけの供給能力を持つ企業は、実は「Hershey’s(ハーシーズ)ブランドで知られるザ・ハーシー・カンパニーなど一部の企業に限られてきます。

 

 プライベートブランドにとっては、参入しにくい商品といえます。

 

 半導体も、シリコンサイクルと呼ばれる周期的な需要の波があるという点で同じです。

 

 チョコレート産業であろうが、半導体であろうが、構造的に強靭な企業として一般化すれば、共通している面は多くあります。

 

  理論と「秘伝のたれ」

  理論と実践のバランスについてどのように考えていますか。

 

  例えば、「ファイブフォース」は我々も、部分的に活用しています。

 

  ただ、項目一つ一つに対して、点数を付け、なおかつ加重平均して「4.5点」を付けるなど、微に入り細を穿(うが)つようなやり方はやっていません。

 

 実際の観点からして、あまり意義のあることではありませんから。

 

 

 

  ピーター・ドラッカーは、「理論のない実線は無謀であり、実践のない理論というのは空虚である」とはなしています。

 

 

 理論と実践の両方を抑えたうえで、両者の間しか落としどころはないと考えています。

 

 先ほど紹介した体系立てた参入障壁にしても、これまでの15年間、理論をベースにしながらも、投資という実践を通じて磨いていった秘伝のたれも、投資という実践を通じ、これからも継ぎ足していくつもりです。

 

 そう考えると、我々は秘伝のタレをつぎ足しながら風味を熟成させていっている焼き鳥屋のようなものかもしれません。

 

 ビジネスパーソンとして、どのような心掛けをすべきでしょうか。

 

 スマートフォンやインターネットばかり見ないことですかね(笑)

 

 私自身は、「情報量と考える量は反比例する」と考えています。人間というものは、情報がたくさんあるほど、考えなくなってしまいます。

 

 今は「ネット断捨離」という言葉もありますが、不純なものも混じった情報が入ってこないように、氾濫(はんらん)する情報から自分を隔離する姿勢は持っておくべきだと思います。

 

 

 その上で、一次情報(自ら確認した情報)に必ずあたることです。具体的には、世の中に溢れているニュースについて、「事実」と「意見」に分け、意見ではなく事実を抑えることが重要です。

 

 一次情報にしても、数値として把握する習慣を持つとよいと思います。さらに、ほかの数値と比較すると、より深く物事を理解できます。

 

 仮に、ある企業の売り上げが10%伸びているにしても、業界全体の成長率を上回る成長を実現しているか。このように、数値を組み合わせることで、同じ成長率10%であっても、意味合いが変わっていきます。

 

 別の会社と比べることも重要です。競合相手と比べることで、本当にその会社が参入障壁を持っているのかを検証できます。

 

 最後に、サプライチェーンの上流や下流にいる企業にあたることも重要です。

 

 例えば、市場調査や経済ニュースで、半導体がEVの普及によって伸びるを言われています。ただ、そうした情報をうのみにするのではなく、半導体を実際に採用しているEVメーカーなどにじかに話を聞いて確かめるべきです。

 

 我々であれば、アメリカにあるアンフェノールというコネクタ(電子機器を接続する際に使う部品)でシェア第2位の会社などを調べます。

 

 

 その会社の販売実績を見ると、コネクタの用途は、かつては携帯電話のような電子機器が中心でした。ところが、この10年間で、自動車や産業機械向けの販売が一気に広がっていることがわかりました。

 

 このように、表面的な情報だけでなく、多面的に数値を見ることで、より将来見通しに角度が高まります。

 これは投資だけでなく、ビジネスパーソンの日ごろの心がけとしても、通じるものがあるはずです。

 

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