18世紀までは、音楽家は職人だった。


バッハにしても、ハイドンにしても、自分が芸術家であるという認識はあまりなかったと思われる。


自分の仕事人としての能力を磨き、常に最高のものを作ろうという職人気質を持つ、雇われ人だったのだ。


しかし18世紀後半、フランス革命によって世の中の様相が大きく変わったことと、ベートーヴェンという天才の登場が重なったことで、音楽家のマインドも大きく変わってくる。


この辺りから、いわゆる近代的な音楽院、音楽学校が乱立してくる。


しかしそれはまだ実業系学校の範疇を出るものではなく、1795年に開校したパリ音楽院も、初期は軍楽隊員養成学校だった。


19世紀に活躍した音楽家で、音楽学校出身者はまだまだ少ない。


パガニーニ、シューマン、ショパン、リスト、ブラームス、ワーグナー、ヴェルディ。

リストはパリ音楽院の入学を外国人という理由で拒否され、ヴェルディはミラノの音楽院を不合格となっている。


音楽学校出身者が音楽家として華々しく世に認められていくのは19世紀後半、そして20世紀は音大卒であらざればプロにあらず、という風潮が特に日本では強く感じられるのは、日本の専門音楽教育の歴史を紐解けば頷ける。


21世紀はどんな世界になっていくか、国際コンクールや世界で活躍し始めている音楽家たちを眺めてみると、すでにその様相は窺うことができる気がしている。