そこにある、見えない命のために ~マタニティマークに込められた思い~大学生さんのルポその3 | 1999年誕生、日本発・世界初のマタニティマークBABY in ME(R)公式ブログ
2019-04-30 17:26:21

そこにある、見えない命のために ~マタニティマークに込められた思い~大学生さんのルポその3

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そこにある、見えない命のために
~マタニティマークに込められた思い~

その3

 

関西大学社会学部メディア専攻

ジャーナリズム専門プログラム履修生

仲里莉央

 

●かけがえのない自分のカラダ
デザインが決まって最初に作ったのは、Tシャツだ。たった2ページしかないウェブサイトを開設し、一人ひとりと直接やり取りをしながら個人で活動をしてきた。朝日新聞朝刊(2000年5月19日)に活動の記事が掲載されたことで注目を集め、多くの新聞雑誌・テレビやラジオで取り上げられ、缶バッチやキーホルダーなど商品の種類も増えた。2013年には、週数や出産予定日などをカウントダウンしてくれるマタニティカレンダーアプリの配信が始まっている。東京都千代田区では2003年から母子手帳と共にバッチを、2014年からはバッグチャームを配布している。
「ただマークを配るだけでなく、妊婦さんはこういう風に体が変わっていくんだよとか、そうやって皆生まれたんだよっていう情報をどこかで提供しないといけません」。村松さんは、聖路加国際大学発のNPO「からだフシギ」というプロジェクトにも携わっている。5、6歳児を対象に、絵本で消化器系や血の流れなど基礎的な人体の仕組みを教える活動だ。「自分の体ってすごいことを知ってもらう。自分を大事にする=周りを大事にすることの入り口ですから」と、体の教育の大切さを訴える。例えば、頭を叩いたら脳がダメージを受けることを教えると、友達の頭を叩かなくなる。その延長線上で、妊娠初期の大切さを理解するきっかけになってほしいという。


 自身の考えが受け入れられるのか、不安もあった。しかし、グッズ販売で利用者とやり取りをするなかで、嬉しい声がたくさん届いた。自分自身で使うため、友人への贈り物、妊娠した娘へのプレゼントなど、さまざまな形でマークは広まっている。印象的なエピソードがある。とある妊婦が、アメリカの同時多発テロ事件によりホノルル国際空港で足止めされてしまった。その時、一人のアメリカ軍人が妊婦の身に着けていたBABY in MEのバッチに気付き、体調を気遣ってくれたという。BABY in MEが国境を越え、人々の優しい心を引き出した瞬間だった。
 「お礼が来たり、『こういうのが良かった』とか、たくさんの人が熱い思いを返してくれています。それに動かされて20年って感じですよね。いい加減なこと出来ないなって思います」。これまでの活動を振り返る声には、熱意とこれからについての覚悟が滲み出ている。


●マークの捉え方は人それぞれ
Nさんは今年の7月に女児を出産、ママ歴6ヶ月目を奮闘している。彼女は産前休暇に入るまで、毎日約30分満員電車に揺られて出勤していた。朝早くの出勤を減らして電車のラッシュを避けるなど働き方を工夫していたが、それでも通勤時間の電車は混雑している。マタニティマークを付けていても、席を譲ってもらえることはほとんどなかったという。「サラリーマンから学生まで、座りたい人だらけ」と、Aさんは苦笑いながら振り返る。体調が悪い時、座りたいと思っていてもマークに気付いてもらえないことが多かった。座っている人の7~8割がスマートフォンを見ているからだ。周囲まで目が届かない。お腹が大きくなってからも、優先席に座っていると、明らかに座れない隙間にも関わらず「席を詰めろ」と言われたことがあった。「あたしが妊娠してなかったら立ってたかもしれないけど、よろけて転んだら後悔できひんやんか。そこはわがままにならなあかんと思った」。そう言いつつも、当時は席を立とうか迷ったらしい。


Aさんにとってマタニティマークは車の初心者マークと同じだという。初心者マークを見た時、車間距離をできるだけ長くとる人もいれば、運転速度が遅くても大目に見る人もいれば、イライラしたり煽り運転をしてくる人もいる。それと同じように、マークを見て気を使ってくれる人やそもそも見えていない人、微笑ましくなったり疎ましく思ったりする人もいる。マタニティマークの捉え方は人それぞれなのだ。「体調が悪い時、ただしんどい人みたいな認識じゃなくて『お腹に赤ちゃんがいる』っていう少しでも明るいイメージにとらえてもらえたらいいな」と語る。

●噂でも、怖い
 「妊娠は病気じゃないからね」。二児の母であるSさんは、以前勤めていた職場で女性の上司にそう言われた。つわりの時期は体調が崩れやすいため、仕事内容を考慮してほしい旨を伝えた。すると「病気じゃないから、あなただけを優遇することはできない」と返されたのだ。同性でも妊娠に対して理解がない人はいる。仕方がないのかもしれないが、病気と違って薬を飲めない、対処法がない。精神面に良くないと思い、結局Sさんはすぐにその職場を辞めた。


Sさんは「マークを付けるほうがいいのは分かってるけど、怖くて極力付けたくないって思った」と言う。初めて妊娠した時、主な情報源はインターネットだった。そこで、妊婦に危害を加える人がいることを知った。外で自分が倒れた時、マークがすぐに見えるところにあれば迅速に適切な処置をしてもらえる。それでも、安定期に入るまでは不安だった。少しの衝撃で流産するかもしれない。「もし危害を加えられたら……」そう思うと付けられなかった。「私自身や友達も直接そういう話を聞いたことない。ネットの情報だけやけど、それを鵜呑みにしてたと思う」。しかし、何かが起きてからでは遅い。マークと母子手帳はカバンにしまっていた。


 それでもマタニティマークをもらえることは嬉しかった。自分が妊娠した、母になる実感が湧くからだ。妊娠初期こそ隠していたが、安定期に入ってからはマークをカバンに付けっぱなしにしていた。危ない目に合うこともなく、一度身に付けるとマークの存在が当たり前になったらしい。安定期からお腹が大きくなるまでの間に活用した。しかし、席を譲られることはあまりなかった。みんなマークが視界に入っていない。夫からも「なかなか気付かない」と言われたそうだ。妻が妊娠して初めてマークの意味を理解できたらしい。SさんにBABY in MEのデザインを見せたところ「妊婦さんの絵が描かれているほうが分かりやすくていい」と語る。お腹が大きくなってからは声を掛けてもらえる機会も増え、里帰りで電車やバスに乗った時には年配の方に席を譲ってもらえた。

●取材を終えて
厚生労働省公認のマークが発表されて12年が経つ。電車内やホーム、バスの中にもポスターが掲示されているため、認知度は高いものだと思っていた。しかし、現実は違うのかもしれない。遠目に見ると何を示すマークか分からない。知識がないと行動できない。明らかにお腹大きくならないと妊婦だと認識してもらえないことが多いのだ。


また、マタニティマークへのイメージに関して「妊婦への特別扱い」という否定的な捉え方の意見がインターネット上を飛び交っている。しかし、決して心遣いを強制するものではない。マークは妊婦と周囲の人々を繋ぐ一つのコミュニケーションツールだ。他人への配慮のスイッチになるように、見えない命を前に少しでも笑顔が増えますように……。村松さんは、BABY in MEにそんな思いを込めた。そして、その思いは多くの妊婦の心の支えになってきた。デザイン考案から現在まで、約20年活動を続けてきたことがその証だ。ふとマークを目にして生まれた優しい気持ちが、これからお母さんになる人々に希望を与えられることを願うばかりだ。

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