そこにある、見えない命のために ~マタニティマークに込められた思い~大学生さんのルポその2 | 1999年誕生、日本発・世界初のマタニティマークBABY in ME(R)公式ブログ
2019-04-04 15:58:45

そこにある、見えない命のために ~マタニティマークに込められた思い~大学生さんのルポその2

テーマ:誕生10周年

そこにある、見えない命のために
~マタニティマークに込められた思い~

その2

 

関西大学社会学部メディア専攻

ジャーナリズム専門プログラム履修生

仲里莉央

 

●マークに込められた思い
 のちに厚生労働省が制定したマタニティマークとBABY in MEのロゴマークでは、デザインに大きな違いがある。村松さんによると、最初はコアラやカンガルーのモチーフなども考えたが、子供は描かないと決めていた。なぜなら、子供を描くと、出産後のイメージになってしまうからだ。「お腹が大きくない、見た目では分からない妊婦さんの状況を、ふと立ち止まって考えてほしい」という一心だった。お腹の大きな女性を象徴的にデザインし、ハートマークには「命が宿っていること、babyを感じて」という願いが込められた。線画タッチでユーモラス感を表現し、これからママになる若い層のファッションに馴染みやすいように工夫を重ねている。気軽に身につけて外出できるように、「オシャレなグッズ」をイメージしてデザインした。また、見た人が自然に笑顔になって、優しい気持ちになれることを重要視した。実際にアクションを起こすのは、マークを見た周囲の人だからだ。


 「BABY in ME」という言葉を生みだしたことにも強いこだわりがある。そもそも、マタニティは妊婦を表す言葉ではなく、「母であること」(名詞)・「妊娠中の」(形容詞)を意味している。妊婦を正しく英語表記すれば、pregnant womanと書く。けれども村松さんは、「とにかくお腹の赤ちゃんに注目してほしかったんです。マタニティだと、お母さんが主体になりますよね。『私が妊娠しています』みたいな」と力強く語る。その上、maternityやpregnantの意味を知らない人も多い。だからといって妊娠という漢字表記は、当時の時代背景では受け入れられにくい。女性のお腹にハートマークを描いただけのイラストを年配の方に見せたところ、心臓が下のほうにあると誤解されたこともあり、赤ちゃんを強調するには、BABYを表記することが一番だという考えに至った。そこで生まれたのが「BABY in ME」という造語だ。英語がよく分からない人でもなんとなく読めるように工夫した結果だった。


 「言葉の数は、その国や民族がどれだけそのことを考えているかの証。だから、『妊娠』という言葉に関連する表現がないということは、妊娠はこれまであまり注目されてこなかったんだろうと思いました。それなら、新しいものを一個でも増やしたい」。そんな思いを具現化したのが「BABY in ME」だ。

●目の前にある奇跡を大切に
「BABY in MEを作ろうと思った時点で、嫌がらせを考えるような人はいるんだろうなぁって。悲しいことだけど起こりえるなって思っていました」。現在、マタニティマークを取り巻く問題についてうかがった。妊婦向けのネット記事でも多く取り上げられている話題だ。マタニティマークへの意見はインターネット上でたびたび議論されており、「望んで妊娠したくせに、なんでマークを着けただけで特別扱いされると思ってんの?」、「ドヤ顔の無言で席譲れやマークを誇示されても、絶対に譲らない」と、特別視することに反発する声が目立つ。新聞にもマタニティマーク利用者の声がしばしば取り上げられる。例えば、「妊娠中に頻尿に悩まされていた女性がスーパーの優先トイレを利用した際、かばんに付けたマークに気づいた高齢の女性から『病気じゃないんだから使うな』と怒鳴られた」(『日本経済新聞』2015年11月25日)。
「どうして、そこに確かにある大切なものに、見えないだけで意識が向けられないんだろう」と村松さん。怒ってしまう人にも、何か事情があるのかもしれない。しかし、目の前にいるのはお母さんだけではなく、これから生まれるもう一つの命だ。「子供が健やかに育つ社会にしていこうというのは、たぶんほとんどの人が思ってます。若い妊婦さんがどうこうではなく、その先の未来っていうのかな。立ち止まって考えてほしいです」。これは、村松さんがずっとテーマにしてきたことだ。「赤ちゃんは奇跡的に生まれてくるものだから。そんな貴重な命を大事にしようっていう気持ちに、率先してなっていきたい」と語った。


 周囲の人たちの心に余裕がないことにも原因がある。たとえば、満員電車。朝でも、座っている人のほとんどは寝ている。みんなが寝ていたら、マークを見ることもない。そういう変則的な世の中についても、考え直していく必要がある。妊婦に対する思いやり以前に、いまの社会でいいのか、マタニティマークに限らず見直すべきときなのかもしれない。


 「これは究極的なテーマですが……」村松さんは静かに語りはじめた。「男の人でも、妊娠・出産は自分の問題。そうやって生まれてきたのですよね。自分が生まれる前、お母さんが、だれかに親切にしてもらったかもしれない。そう考えると、皆のテーマなんです。男性も当事者意識を持ってほしいと思う。関係ない人なんて、一人もいない」と村松さんは言い切った。


 マークに気づいたら、譲らなければならない、優しくしないといけないのではない。強制されるものではなく、自然とそういう気持ちになってほしい。何もしなくてもいいから、優しい視線を向けてあげてほしい。マークの役割は、そういうムードや仕掛け作りにあるという。「マークが目に入ったことで『あら~そうなのね、おめでとう』みたいな。ちょっとでもにっこりするシーンが増えれば、社会の雰囲気も変わると思うんです」。村松さんは、もっと遠くの未来にも目を向けている。「もし、一人でも席を譲るシーンがあれば、とくに子供たちが『あぁ、席を譲ってもいいんだ』って思ってくれれば、どんどん繋がっていく。そういうきっかけ作りが大事なんです」。とても明るい声だった。

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