演劇の成長 〜横浜 劇団麦の会を観に〜 | 工房長のぼやき

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チームスチームパンの工房長、安達俊信の日々是之。
思いついたことをカタカタ書いています。

■ 横浜劇団麦の会を観に行く

 

「くらやみ坂のグッドバイ2024」

桜木町駅すぐの

野毛シャーレでの公演でした。

 

 

作品はコメディですが

人の生き死にを扱うので

口やかましい人に見つかってしまうと

非常に面倒なことになりそうな作品でした。

 

とはいっても、1000人いて、

1人いるかいないかくらいなので、

いらぬ心配だとは思いますが

見ながら、

 

「この時代にあえてコレをやる?

面白いけど、大丈夫かな?」

 

と心配でした。

 



 

■幅広い世代をつなぐもの

 

客層は、

お年寄りから子供まで非常に幅広いです。

 

価値観が違うそれぞれの世代を

コメディという一つのジャンルで繋げる

というのが、今の麦の会スタイルです。

 

人の生死すらもコメディにするというのは、

チャップリンの

 

「人生は近くで見ると悲劇だが

遠くから見れば喜劇である」

 

に通じるものがあります。

 

ドリフ好きの麦の会の代表。

 

ドリフは、チャップリンからも

影響を受けているので、

自然に学んでいるのも当然の帰結だ

と納得するところです。

 



 

■ 麦の会を見始め、早10年

 

横浜 劇団麦の会は、

戦後すぐから始められて

長く歴史を持つ市民劇団です。

 

代表も3代目……たしか。

 

僕自身は、

保育園公演をする

ばなな企画で演出させてもらうのを機会に

観に行くようになり

なんだかんだで、

毎回横浜まで出掛けて

10年くらい経ちます。

 

80年近い劇団の公演を

「8分の1しか見ていない」

といえますが、

「8分の1も見ている」

とも言えます。

 

どちらでしょう。

 

こんなに長く見ている劇団は

唐組、唐ゼミ☆、新宿梁山泊、桟敷童子など

唐さん関係以外で

初めてな気がします。

 

 

■ 長く劇団を見る面白さをご存知ですか?

 

劇団は集団で、一つの生き物です。

 

人間が作るので

良い時もあれば

悪い時もあります。

 

人が多く集まる時もあれば

解散の危機になることもあります。

 

面白い作品のときもあれば、

そうでないときもある。

 

どんな状況に置かれても続けてきた実績が

今の公演に繋がっています。

 

そう、長く劇団を見続けることは、

歴史を目撃することなのです。

 

ワインと同じで、

年を経るごとに熟成されていくのを

堪能するのが面白い。

 

たまに

「長くやっているからいいってもんじゃないぞ」

というナイーヴな声を上げる人がいますが、

長く続けている人以外は言っちゃダメだな、

と思います。

 

長く続ける難しさをわかってない人が

言ったところで、

長い歴史のほんの一部だけを切り取り、

マウントを取りにきただけにしか見えません。

 

良い時もあれば

悪い時もあるんだから、

悪いときに声をわざわざあげるなんて、

揚げ足取っているだけだ。

 

 

ちなみに、作って5年以内に無くなる劇団が

どれほどあるかご存知ですか?

 

それが10年になると?

 

まして、80年近い劇団が日本にどれほど残っていると?

 

劇団のデータを探しましたが

信用できそうなものがなく、

別で、

ベンチャー企業で調べると、

5年後は15%

10年後は6.3%

20年後は0.3%

しか残っていないそうです。

 

劇団は、任意団体など含めると星の数ほどあるので、

これより悪いでしょう。

 

ちなみに、私が主催するチームスチームパンは6年目になるみたいです。

(「安達工房」で実験的に発表会もやっておりましたのでもっとかも…)


 

■ プロとは? 〜アマチュアとプロの違い〜

 
麦の会は、市民劇団ですので、
アマチュア劇団に分類されます。
 
「ああ、プロじゃないんだ」
と思った方、お待ち下さい。
 
あなたが思うプロとはなんですか?
 
 
プロを考えるとき、
「その人がなぜそれをしたいのか」
欲求で考えるとわかりやすかったで
ご紹介します。
マズローの欲求5段階をご存知ですか?
 
マズローの欲求5段階は
人間の心理を日常的な感覚で理論化しよう
という心理学から生まれたとか。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
第1段階 生理的欲求
人間が行きていくための本能的な欲求
 
第2段階 安全欲求
見の危険を感じるような状況から脱したいという欲求
 
第3段階 社会的欲求
集団に所属したり仲間を得いたという欲求
 
第4段階 承認欲求
他者から認められたいという欲求
 
第5段階 自己実現欲求
自分が満足できる自分になりたいという欲求
 
第6段階 自己超越
自分のエゴを越えたレベルでの理念の実現を目指すもの
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
役者だと、
第4段階 承認欲求 の人をほんとに多く見かけますが、
この人たちはプロではないです。
 
第4段階から抜け出せない人の多くは
「今自分がやったことを認めて欲しい」だけで、
「相手が求めているもの」が見えてないから
第五段階へいけません。
 
第5段階 自己実現欲求 で
承認欲求が含まれることがありますが、
第5段階の人は、
第4段階を満たしています。
 
そのため、プロは、
「相手が求めているもの」を満たすことから
第5段階以上の人と考えています。
 
そもそもプロとは、
相手が求めるものを与えることが当たり前であり、
それを上回るパフォーマンスを見せるからプロといえます。
 
プロだと思われている人の中でも
当たり前なことさえできない人がいて、
逆にアマチュアの劇団で、
すさまじいパフォーマンスを見せるプロといって良い人はいます。
 
 
観劇では、そういった人がいないかを探すのも、
見ていて楽しいものです。
 
 

■ 劇団は生き物

生き物である劇団は、

代謝がとても大切です。


代謝は動くことで起こります。

 

代謝が落ちてしまうと

集団が死を迎え

どんなに頑張っても

作品がつまらなくなります。

 

 
人を動かす教え方で、
山本五十六がいっています。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」

実際にやってみせないと。

これは、自分から動く
能動的な行動を意味してます。
 
そして、人に教えていくことで
いつの間にか自分が学び
成長をしていきます。
 
演技は、人生とあわせ鏡ですから、
成長すると
良い芝居ができるようになっていきます。
 
教えて、
自分が学び
成長することで、
芝居全体がよくなる。
 
この代謝を繰り返す限り、
劇団は成長し続けます。
 
麦の会の100年後
楽しみです。