自己流だけど、もう長くパッチワークを続けている。

手縫いが好きで、時間がないときでも、

少しの合間をみつけては、チクチクと縫ってきた。

縫い物をしている間は集中できて、私にとっての

ストレス解消でもあった。

 

子どものリュックサックや、手提げかばん、ポーチ・・・。

兄と妹の二人分。色々作ったなあ。

兄の方は成長とともに、手作りから遠ざかっていったけど

妹の方は、ずっとずっと手作りだった。

私は普段、この子を○○ちゃんと呼んでいたけど

憎らしい事を言われたときなどは「きなこ饅頭」と呼んだ。

きなこ饅頭は、絵が得意で色のセンスもあったから

パッチワークの布選びでは、私の参謀的役割を

はたしてくれていた。

 

今、きなこ饅頭はいない。

近くて遠い世界に旅立ったから。

 

私は、しばらく針が持てなかった。

きなこ饅頭の部屋にあった、私のパッチワークを見たとき

今まで、この子のために作っていたんだと気づいた。

私の作品を一番大切にしてくれていた人。

そのきなこ饅頭がいなくなって、なあんにも作れなくなった。

 

今はまた、パッチワークを始めている。

なぜかって?

それはね、きなこ饅頭に言われていたから。

 

ネットショップをするのに、小さな看板を描いてもらって

その時に、きなこ饅頭は私に言ったんだ。

「せっかく描いたんやから、ちゃんとやってや。」

 

 

きなこ饅頭が私のために描いてくれた大事な看板。

うん、うん、約束守るよ。

参謀がいなくなって、センスのない作品ばかりになったけど

それはそれで許してくれるよね。

 

「私のきなこ饅頭」と呼ぶといつも真顔で怒っていた。

「あたしはお母さんの物と違うから。あたしはあたしの物やから。」

 

そうだね。言葉が足りなかったよね。

私のきなこ饅頭ではなく、私の大切なきなこ饅頭って

言わなきゃいけなかったんだよね。

ちゃんと言えばよかったな。

 

愛してやまない、私の大好きな大好きな、きなこ饅頭。