初めて見る姿にいたずら心を抑えられず、ついに私は信長様の頬に手を伸ばした。

(思ったより柔らかい・・・・・・)

ふに、と頬をつまんで、横に伸ばしてみる。
(あ、意外と伸びるんだな・・・・・・)

天下人のほっぺ、ひっぱっちゃってるよ。。。

その感触に夢中になっていると・・・・・・
(わっ!?)

ガシッと手首を掴まれた。

信長「貴様、何をしても良いと思っているのか」

閉じられていた信長様のまぶたが開いて、深い色の目が私を射抜く。身体を起こした信長様は私に顔を寄せて・・・・・・

信長「仕置きが必要だな、ゆう」

「えっ・・・・・・ん・・・」

言い訳を口にする暇もなく、唇を塞がれた。

「っ・・・・・・あ・・・・・・」

ゆるやかに深まる口づけで、一気に鼓動が速くなる。
(信長様の手、熱い・・・・・・)

掴まれた手首から伝わる体温は、いつもより少し高い。ゆっくりと顔を離した信長様が、ふっと笑みを浮かべた。

信長「随分と大人しいな、ゆう」

「っ・・・・・・驚いてるんです。信長様が寝ていらっしゃると思ったから・・・」

信長「まどろんではいたが、貴様が起こしたのだろう。何をするかと思えば、他愛のないことばかりだったがな」

いじわるな表情を浮かべた信長様を見て、びくっと身体を震わせる。

「・・・つねったりして、すみませんでした」

(今さらだけど、すごいことしちゃったかも・・・・・・)

天下人だからね。。でも彼氏でもある♡

信長「許さん」

信長様が私の手を取って、戯れに指を絡ませた。
(え・・・・・・)

そのまま手の甲に自分の頬を寄せて、ぴたっとくっつける。

信長「罰として、しばらくこうさせろ」

コレは罰になりません!はい♡

触れ合ったところから信長様の温かい体温がじんわりと広がった。

信長「・・・・・・貴様の手は心地よいな」

甘えるように頬を寄せた信長様を見て、身体の芯がかっと熱を持つ。
(っ・・・・・・だめ、違う意味で酔いそう)

溺れそうになる意識をどうにか保って、酔った信長様に向き合った。

「・・・・・・信長様は、酔うと可愛くなるんですね」

不思議そうに眉をひそめた信長様が、私の手を解放する。

信長「撤回しろ。『可愛い』のは貴様だろう、ゆう。それに、俺とて好きで酔っているわけではない」

「え・・・・・・?」

信長「貴様が言ったのだろう、酔った姿が見たい、と」

(・・・・・・? それって・・・・・・)


------

秀吉「なんで、そんなこと聞くんだ?」

「・・・・・・信長様の酔ったところ、見たいなって思って」

秀吉「・・・・・・?」

「自分に厳しい信長様が、もし酔った姿を見せてくれたら・・・・・・それは私に気を許してくれてるってことでしょ?」

------


「もしかして・・・・・・秀吉さんと話していた内容、聞かれたんですか?」

信長「・・・・・・」

無言の肯定を示した信長様を見て、小さく息を呑む。
(じゃあ、信長様がいつもよりもたくさんのお酒を飲んで酔って下さったのは・・・・・・私の、ため?)

信長「今まで誰かに酔った姿など見せたことなど、無かったのだがな」

「秀吉さんに、聞きました。信長様は人前で酔ったりしないって」

(ただお酒に強いだけかと思ってたけど・・・・・・違ったみたい)

「どうして・・・・・・今まで酔わないようにしていたんですか?」

信長「・・・・・・弱みを見せるということは、付け入られる危険をはらむ」

(え・・・・・・)
信長様の目の奥が暗くなったのを感じて、胸がざわめく。

信長「決して弱みを見せず、酒に溺れず、隙を見せないように心がけているうち、それが癖になり、家臣の前でも酔うことは無くなった」

「・・・・・・」

(お酒を飲む時も、信長様は気を抜いたり出来ないってことなんだ)
改めて、信長様が置かれた立場の重さを知って、胸が痛んだ。

(でも今は・・・・・・私のために、酔ってくださってる。私が、見たいって願ったから・・・・・・)
信長様の優しさに気付いて、苦しいくらい、愛おしさを感じる。

信長「無意識に酔うことを避けるのが、当たり前になっていたが・・・・・・貴様の前では、酔えるようだな」

信長様は私の肩にこてん、と頭を乗せて、目を閉じた。

信長「貴様が俺に与えた変化は、妙に心地が良い」

穏やかに響く声と、肩に感じる重みに、信長様への愛しさが増す。

「私も・・・・・・信長様の新しい一面が見れて、とても嬉しいです」

信長様はふっと笑みを浮かべて、可笑しそうに話し出す。

信長「新しい一面、か。これまで、常に新しきものを求めてきた。未開拓の土地、南蛮由来の品、心躍る戦・・・・・・だが、新しきものが自分の中にも存在すると、貴様に教えられた」

「え・・・・・・」

信長「これは、俺も知らない俺の姿だ、ゆう。案外身近なところにも、まだ知らぬ『新しきもの』があるのだな」

穏やかな表情を浮かべた信長様は、私の頬に、優しくキスを落とした。戦に出る時とも、仲間の家臣たちと話す時とも違う、優しい笑みに心が震える。
(出逢ってから少しの時間が経ったけど・・・・・・信長様と過ごしていると、新しい発見がたくさんあって、全然飽きたりしないな)

「・・・・・・酔うのは、私の前だけにしてくださいね」

(わがまま、かな・・・・・・でも、他の誰にも、今の信長様を知って欲しくない)

信長「当たり前だ。貴様意外に、こんな姿を見せたりはしない」

「はい・・・・・・」

なんかいいな。この二人〜〜

(家臣の人にも、誰にも見せなかった姿を・・・・・・歴史の本にも書かれていないような顔を、私に見せて下さるんだ)

「これから先もずっと、誰よりも一番近いところで、信長様の色んな顔を見ていたいです」

信長「言われるまでもない。貴様にしか見せない顔も、増えていくだろう」

私の頬を、信長様の手が柔らかく包み込んだ。

信長「ともに歩むということは、そういうことだ」

いや〜ん、なんか素敵 

(っ・・・・・・)

「ずっと、一緒に歩いていきますね」

照れくささを堪えて、じっと信長様を見つめると、信長様の目がほろりと和らいだ。

信長「ああ。・・・・・・俺の新しき面は充分に見たな?」

「はい」

嬉しさににこにこと笑って答えると、信長様の口元が弧を描く。ふいに、信長様は硝子瓶の底に沈んでいた果物を指ですくい取った。

信長「口を開けろ」

「っ・・・・・・」

ワインを吸い込んだ果物を口にくわえさせられる。顔を寄せた信長様は、穏やかな笑みを消していて、目の奥に鋭い光を灯していた。

信長「今度は貴様が、俺に酔う番だ、ゆう」

(え・・・・・・っ)
片手で私の顎を固定した信長様が、顔を寄せる。

信長「俺にしか見ることが出来ない貴様の顔を、楽しませろ」

答える間もなく、信長様に唇を奪われた。

(っ・・・・・・)
口の中で果実の甘みが広がって、頭の中がくらくらする。忍び込んだ舌先が、私の舌を絡め取って、交り合った。

「信長、さま・・・・・・」

息苦しさから、目の端に涙がたまる。顔を離した信長様が、舌先で涙をなめとった。

信長「酔った俺に、貴様がしたことを覚えているだろうな?」

「あれは・・・・・・っ」

信長「仕置きはまだ、終わっていないぞ」

(忘れてなかったんだ・・・・・・)
にやりと笑みを浮かべた信長様が、私の身体を褥(しとね)の上に横たえた。

「信長様、待って下さ・・・・・・」

話そうとする私の唇に指を当てて、信長様が楽しそうに目を細める。

信長「文句は聞かん。覚悟はできているな?」

覆いかぶさった信長様から逃れられないまま、再び唇を奪われる。

「ん・・・・・・ぁ・・・」

甘く痺れる身体は言うことを聞かず、信長様の指先に暴かれていく。
(本当に無茶苦茶な人だな・・・・・・だけど、そんなところが悔しいくらい・・・・・・好き)

熱に侵されながら、信長様の首に腕を回した。

信長「・・・・・・ゆう」

穏やかに微笑んだ信長様が、私の瞼に口づけを落とす。
(信長様がこんな風に優しく笑うようになったのは、いつからだっけ・・・・・・)

たぶんね。戦場で、信長様に「寄越せ!」ってチュー💋された時からじゃないー?

ワインを吸い込んで真っ赤になった果物みたいに、信長様も少しずつ、その色を変えていく。

「信長様、これからもずっと、笑ってください」

信長「ん?」

私、↑この、「ん?」が好き❤️

「私にしか見せない信長様の笑顔が、見たいです・・・・・・」

信長「・・・・・・良いだろう」

こぼれるような笑顔を見せた信長様を見て、泣きたいくらいの幸せが広がった。
(これからはもっと、色んな顔を見せて欲しいな・・・・・・どんな信長様も、愛していきたいから)

密かな決意を胸に、私は今から始まる深い夜の時間に、身を委ねた。