冬風が沁み始める夜のこと。
「今夜は、一段と寒いですね・・・」
信長「ああ。山地ではすでに雪が積もっている頃合いだろう」
「そうなんだ・・・。どうりで」
身が凍えるような寒さのなか、私は信長様の部屋へと来ていた。
信長「貴様は少し着込みすぎだ」
「え、そうですか?」
信長「そのように羽織を数枚重ねて着るなど、見たことも聞いたこともない」
羽織は重ね着しないんだね。。。
(う・・・、だってこっちの時代が寒すぎるから)
身を小さくしていると、信長様がこちらに寄り、手を引かれた。
信長「その羽織も悪くない。だが、貴様をあたためるのは俺の役目だ」
(あ・・・)
羽織が、肩からたやすく脱がされる。
信長「よって、こやつの役目はここまでだ。貴様が寒いのであれば、早々にそばへ来い」
「え・・・・・・」
そう言うと、信長様は褥(しとね)に横になる。
信長「どうした、来ないのか?」
↑この言い方好き〜
「い、きます・・・」
胸の高鳴りを抑えながら、信長様のそばに横たわった。分厚い毛布にくるまれて、冷えた肌が温められていく。
(それに何よりも・・・隣には信長様がいるから)
見上げるとすぐそばに信長様の顔があって、ぎこちなく視線を逸らしてしまう。
信長「落ち着きのない顔だな」
「・・・・・・仕方ないです。信長様とこうしてるんですから」
信長「何度も寝床を共にしているというのに、か?」
(そ、それは・・・)
からかい混じりに囁かれ、顔が火照る。
「そういうこと、言わないで下さい・・・っ」
信長「何もしなくても、貴様の頬はそこまで赤く染まるのだな。火鉢要らずだ」
(・・・わっ)
不意に頬へ触れた指先が冷たくて、思わず信長様を見上げた。
「信長様の方が冷えてるじゃないですか」
信長「そのくらい、騒ぐことではない。大抵こんなものだ。寒さには慣れている」
「でも、あったかくしないと、ぐっすり眠れませんよ?」
信長「もとより眠りが浅い俺には関係のないことだ」
(そうだった・・・・・・でも慣れてるとはいえ、温かい方がいいよね・・・)
信長様は平然としているけれど、冷たいままの指先が気にかかる。
(暖かくしたら、浅い眠りも解消されるかも・・・)
私は、信長様の手をぎゅっと両手で握りしめた。
信長「ゆう・・・・・・?」
「温かい方が、心地よく眠れるものですよ」
信長「だったらどうした。貴様が俺を温める、とでもいうつもりか?」
「そうです。身体が温まると、心も休まるから・・・・・・今までよりもぐっすり眠れますよ」
信長「・・・・・・」
押し切って手を握る私を見つめ、信長様が言葉を止める。両手で包み込んでいるうちに、次第に信長様の指先が熱を帯びてきた。
「少しはマシになりましたか?」
信長「ああ。だが、それだけでは一晩たっても無理だな」
「だったら一晩中、こうして手を握っていてもいいですか?」
信長「------駄目だ」
「っ、ぁ・・・」
無造作に顎を持ち上げられ、短く息が漏れた。
信長「俺を温めるつもりなら、これでは足りん。覚悟はできているな」
(覚悟って・・・・・・)
鋭さを宿した瞳がためらいなく近づいて、ぎゅっと瞳を閉じる。
「ん・・・」
けれど、身構えたのに、思いのほか優しい口づけが唇を包み込んだ。かすかにまぶたを持ち上げると、愉快そうに微笑む信長様が瞳に映る。
信長「俺を温めたいならば、これくらいの奉仕をしろ」
「っ・・・・・・はい」
信長「わかればいい」
「あっ・・・」
伸ばされた手が、肩口からゆるりと入り込んでくる。着物がはだけ、ぬくもりと外気の冷たさに翻弄されて、あせったように鼓動が速くなる。
「ん・・・・・・、ぁ」
温かなところを探るように、あちこちに触れられた。冷えた指先が衿をはだけさせ、胸元へとすべり落ちる。
信長「貴様の一番温かいところに、触れさせろ」
呼吸が乱れる中、心臓の上に手を当てがわれた。
信長「・・・・・・確かに、温まるのも悪くない。貴様の人肌で、に限るがな。それに心が休まる、というのは、貴様に当に知らされている」
どこか優しさの残った眼差しが、私の胸を強く射抜く。
信長「それを知れば、どれほど凍てつこうが燃やされようが構わん。貴様が俺から離れなければ、どれもたやすいことだ」
「・・・・・・ん」
もう一度、深く唇を重ねられた。激しさを増す口づけが、寒ささえ忘れさせてくれる。
(離れたいなんて、思うわけない・・・・・・ずっと)
変わることのない愛しさを胸に、私は信長様の背中にそっと手を回した------・・・