米トランプ政権、中国ZTEへの制裁緩和検討 トランプ流「取引」か、安全保障を売り渡す行為か | 碧空
2018-05-27 21:20:59

米トランプ政権、中国ZTEへの制裁緩和検討 トランプ流「取引」か、安全保障を売り渡す行為か

テーマ:アメリカ

(【5月14日 BBC】 約8万人を雇用するZTEの経営危機は、中国にとって大きな問題となっています)

【収束の方向へ向かう米中貿易戦争 その中で注目されたZTEへの制裁の対応】
ひと頃よく目にした“米中貿易戦争”という言葉は、19日に発表された米中の共同声明もあって、最近は見ることが少なくなったように思えます。

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<米中協議>「対米黒字を大幅減」声明 数値目標盛らず*****
米中両政府は19日、ワシントンで17、18日に開いた閣僚級貿易協議の共同声明を発表した。

中国が農産物や資源など米国産品の輸入を増やし、対米貿易黒字を「大幅に減少させる」ことで一致したが、数値目標など具体策は盛りこまれなかった。

知的財産権保護などもあいまいな表現にとどまっており、米中間でなお隔たりがあることを示した。両国は今後も協議を継続する。
 
中国国営新華社通信によると、中国側代表を務めた劉鶴副首相は「両国は貿易戦争をせず、互いに関税上乗せ措置を停止する共通認識に達した」と述べた。米中が打ち出した制裁関税について停止に向けた進展があった可能性もあるが、声明では触れられていない。
 
両国は声明で、貿易不均衡の「大幅な改善に向け効果的な方策をとる」と表明。中国が農産物などの輸入を増やすほか、工業製品の貿易拡大でも合意した。ただし、輸入増加は「成長する中国の消費需要を満たすため」とし、中国が無理な輸入促進策を取るわけではないことも示唆した。
 
貿易以外の分野については、中国が知的財産権の保護強化に向けて法改正に取り組むことや、相互の投資拡大で一致した。
 
米国は中国に対し2000億ドル(約22兆円)規模の黒字削減を求めている。米メディアによると、閣僚級協議終了後、徹夜で声明の文言調整が行われたが、米国が主張した数値目標の設定を中国が最後まで拒否したという。
 
米国は貿易黒字とともに、中国の産業戦略「中国製造2025」も問題視しているが、声明では言及がなかった。米国による制裁で必要な部品が入手できず、経営危機に陥っている中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)への対応策にも触れていない。
 
5月上旬の初会合が平行線だったのに比べれば、米中の「貿易戦争」に発展する懸念は後退したものの、双方の対立が根深い問題については対応を軒並み先送りした形で、依然として火種が残っている。【5月20日 毎日】
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“依然として火種が残っている”とは言うものの、これ以上摩擦を大きくしないという収束の方向で米中が合意したということでしょう。

中国の公式メディアはそれまでの対米批判から態度を一転させ、国営通信社・新華社は、「共通の利益」や「大義」の観点から、貿易戦争回避や懲罰的関税の棚上げなど協議で得られた成果を高く評価しています。

そうしたなかで注目されていたのが、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)の扱いでした。ZTEはイランや北朝鮮への制裁に違反したとして、米企業からの製品購入を7年間禁止する措置が科されています。

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米国の中国・ZTEの制裁緩和は農産物関税撤回が交換条件****
米国のトランプ大統領が米企業との商取引を禁止された中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)について、制裁を緩和する可能性を示した。米有力紙は「中国が米農産物に関税を課した報復措置の撤回が交換条件」と報道。トランプ流の「ディール(取引)」が本領を発揮しつつあるようだ

中国に貿易戦争を仕掛けたトランプ政権は3月、中国を主な標的に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置を打ち出した。

これとは別にトランプ大統領は通商法301条に基づき、中国の知的財産権侵害への貿易制裁発動を命じる文書に署名した。最大で年間600億ドル(約6兆3000億円)相当の中国製品に25%の関税が課される。

そうした流れの中で、米商務省は4月、米企業がZTEに部品などを輸出することを禁じる制裁を発動した。

ZTEは昨年3月、米国の経済制裁に違反する形で米企業の技術を使った製品をイランと北朝鮮に出荷していたとして、11億ドル(約1200億円)の罰金処分を受けた。しかし、経済制裁に違反する行為にかかわった社員の処分に関してZTEが虚偽の説明を米側にしたとの理由だった。

ロイター通信などによると、ZTEは自社製品に使用する全部品の少なくとも4分の1を米企業からの供給に頼る。ZTEが昨年、約200社の米企業から輸入した額は23億ドル(約2500億円)以上に上った。

トランプ米大統領は14日のツイッターへの投稿で、「ZTEは大部分の部品を米企業から購入している」と強調。ZTEに対する部品供給を禁じた米制裁措置の停止や緩和が「中国の習近平国家主席と協議しているより大きな通商取引」の一環だと述べた。

ロス米商務長官もZTE対する制裁について「極めて速やかに代替策を探る」と語り、緩和を検討していることを示唆した。

こうした方針転換について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「米国がZTEに対する制裁を緩和する一方で、中国は米国産農産品に課している報復関税の撤回や大豆の輸入規制を見直す方向で調整が進んでいる」と報じた。

トランプ氏の投稿はZTEへの制裁緩和をちらつかせて、最大の懸案である対中貿易赤字削減で譲歩を迫る狙いもあるとみられる。

トランプ大統領は米国の貿易相手国に脅しをちらつかせ、交渉で譲歩を迫る手法を用いる傾向が目立つ。英誌エコノミストによると、「Make threats,strike deals,declare victory(脅かして、取引まとめて、勝ち名乗り)」とされる。

それを承知の上かどうか中国メディアによると、外交部の陸慷報道官はZTE問題をめぐる米側の発言を高く評価。「現在米側と具体的細部の実施について緊密なコミュニケーションを取っている。米側の注視する幾つかの具体的問題についても、中米双方は緊密なコミュニケーションを取っている」としている。【5月19日 レコードチャイナ】
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上記【レコードチャイナ】記事は、ZTEへの制裁緩和を、“トランプ流の「ディール(取引)」が本領を発揮”と評価していますが、アメリカ国内の受け止め方は必ずしもそうでもないようです。


【安全保障上の嫌疑がかけられているZTE製品】
トランプ大統領は、中国との貿易問題を安全保障と一体化させる形で進めてきました。

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中国台頭、変わる貿易摩擦 米、安保と同一視/知的財産を重視****
(中略)一方、日米、米中で最も違うのは、米国にとっての安全保障上の位置づけだ。

米国は中国と緊密な経済関係を持つとはいえ、ロシアと並ぶ脅威とみなす。トランプ政権は「経済の安全保障が国家の安全保障だ」(ナバロ大統領補佐官)との発想に立ち、軍事上の目標を通商交渉を通じて達成しようとする。

米政権は、外交・安全保障政策の指針として昨年末に発表した「国家安全保障戦略」で、「敵対国はサイバー手段による経済戦の一環として、洗練された手法で米企業や経済を弱めてきた」と指摘。今年3月以降、中国の知的財産侵害を理由とした関税案を示し、対中交渉を本格化させた。(後略)【5月18日 朝日】
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ZTEについては、かねてより、その機器やソフトにバックドアが仕込まれており、情報が中国側に流されていると言われてきました。

また、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォンにも同様のバックドアが仕組まれていると言われており、アメリカのCIAやFBI、国家安全保障局(NSA)などは、アメリカ国民に対して、ZTEやファーウェイのスマートフォンを使用すべきではないと警告してきました。【5月17日 MAG2NEWS】

更に、米国防総省は、「許容不可能」なセキュリティー上の危険をもたらすとして、米軍基地での販売を禁じています。

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中国2社の携帯電話、米軍基地で販売禁止に****
米国防総省は、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊が製造した携帯電話などの製品について、「許容不可能」なセキュリティー上の危険をもたらすとして、米軍基地での販売を禁じた。
 
同省では、一般消費者向けの電子機器が軍人の通信を傍受したり、その位置を追跡したりするため使われることへの懸念が高まっている。
 
同省のデイブ・イーストバーン報道官は4日、「ファーウェイ、ZTEの機器は(軍の)人員、情報、任務に対して許容不可能なリスクをもたらす」と指摘。世界各地の米軍基地で軍が経営する店舗で両社製品の販売を続けることは「賢明ではない」と述べた。
 
同報道官によると、先月25日にファーウェイ製品の販売中止が指示され、さらにZTE製の携帯電話やその関連製品も基地内の店舗から撤去された。
 
同報道官は潜在的な脅威に関する技術的な説明を避けたが、米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、国防総省は、両社の機器を使う兵士の位置情報が中国政府に追跡されることを懸念している。
 
ファーウェイの広報は、同社の機器は米国を含め同社が事業を展開するすべての国で、セキュリティー、プライバシー、技術の各面で最高の基準を満たしていると主張。さらに「われわれのネットワークや機器のセキュリティーや健全性を損なうような要請は、いかなる政府からも受けていない」と説明した。
 
ZTEは現時点でコメントの求めに応じていない。【5月5日 AFP】
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【ZTEへの制裁緩和の大統領方針 議会は反発】
このように、ZTEの問題は安全保障そのものでもありましたが、今回罰金を科す形で“手をうつ”ことを、トランプ大統領は検討しています。

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中国通信機器大手への制裁、米政権が緩和方針****
米政権による制裁の影響で経営危機に陥った中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)について、米側が、制裁を緩める方向に転じた。

制裁は、対中通商交渉で圧力をかける米政権の切り札的な存在で、緩和すれば米中通商摩擦で高まった緊張感は沈静化に向かう。ただ、米議会は反発しており、流動的な要素も残る。
 
トランプ大統領は25日、ツイッターで「高いレベルの安全を守らせた上で経営陣を刷新し、13億ドルの罰金を支払い、米国製部品を買うことを条件に事業を再開させてやった」と述べた。
 
ZTEは、中国政府による米国内でのスパイ活動への関与が疑われており、米議会は、安全保障上の懸念から与野党を超えて反発を強めている。

野党民主党上院トップのシューマー院内総務は25日、ツイッターで制裁緩和に反対し、「トランプ氏がしているのは『中国を再び偉大にする』ことだ」と批判。与党共和党のマルコ・ルビオ上院議員も「議会が行動を起こさなければいけない」と述べた。
 
反発の背景には、憲法上、通商問題の権限を握る議会へのトランプ氏の根回し不足がある。トランプ氏は13日、制裁緩和をツイッターで示唆。突然の動きに議会側は強く反発。議会の委員会が大統領の制裁緩和を禁じる法案修正を施し、有力議員が超党派で制裁維持を求めている。【5月27日 朝日】
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罰金の金額については、トランプ大統領と習近平国家主席の間で、バナナの叩き売り(今や死語ですが)のようなやりとりもあったようです。

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トランプ米大統領と中国・習主席、ZTE問題の罰金で激しい駆け引****
2018年5月26日、米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(中国語電子版)は、トランプ米大統領の中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)に対する制裁見直し発表について「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とトランプ氏との電話会談で激しい駆け引きがあった」と伝えた。

トランプ大統領は25日、米誌フォーブスに対し「習氏に電話をして『ZTEの業務再開に向けて助言がほしい』と要請した。同社の関係事業には数万人が関わっており、自分の故郷でもZTEは多くの人々を雇用しているからだ」と述べたことを明かしていた。(原文のまま)

会談で習主席は、制裁緩和の代わりに5億ドル(約547億円)の罰金支払いを提案。トランプ大統領は15億ドル(約1670億円)を主張した。さらにZTE経営陣の刷新や、安全保障上の懸念の解消、米製品の購入を要求したという。協議の結果、罰金は13億ドル(約1422億円)に落ち着いた。【5月27日 レコードチャイナ】
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(要請したのは習近平氏ではないでしょうか?)

ただ、野党・民主党と一部の共和党議員から「北京に頭を下げるものだ」「米国の安全保障に重大な脅威となると米情報機関が警告した企業に対する寛大な処置だ」などの批判が出ているのは前出【朝日】のとおり。

通商問題と安全保障を一体化して「取引」を行った結果、安全保障をなおざりにした形で経済的なレベルで合意することへの反発ともいえます。(根底には、議会の大統領への不信感もあっての話ですが)

表に出ない話として、北朝鮮問題への対応なども絡めて「取引」されたのかどうかは、わかりません。


【“痛みに対する忍耐度は低い”トランプ大統領?】
一連の交渉・「取引」に関しての評価は、前出【レコードチャイナ】のようなトランプ大統領の「取引」評価がある一方で、中国側の戦略が勝ったとの評価もあるようです。

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米中貿易戦争、中国が上手 トランプ氏の急所突く****
ドナルド・トランプ米大統領が通商政策を巡り仕掛けたけんかの中でも、中国に対するけんかでは、トランプ氏は最も強力な交渉カードを有している。

この対中貿易摩擦には、カナダやメキシコ、西欧諸国や日本との対立にはない、経済的、戦略的、そして政治的な言い分があるのだ。
 
しかしながら、驚くべきことに、中国は勝利を収めようとしているようだ。まだ戦いは始まったばかりだが、中国はこれまで、米国による関税の脅威のほぼ大半を免れる一方で、大きな譲歩はほとんど行っていない。
 
トランプ氏は当初、歴代の米大統領よりも、中国との対立を厭わないかのように見えた。だが、中国はトランプ氏の弱みをまんまと突いてきた。

その弱みとは、中国が支援している北朝鮮の問題を巡り、トランプ氏が事態打開を望んでいること、とりわけ共和党地盤の農業州など、政治的痛みに対しトランプ氏が反応しやすいこと、さらに交渉の取引材料に法的な手続きを持ち込むという中国の戦術を活用することにトランプ氏も前向きであるという点だ。
 
米国は週末、中国の輸入品1500億ドル(約16兆6000億円)相当に対する関税の導入を当分見送ることを決定。中国はその見返りとして、米国からエネルギーや農産物の輸入を拡大することで合意した。

これは状況を一変させるものでは全くない。エネルギー、農産物は両方とも国際市場で取引されることから、中国による米国からの輸入拡大は、いずれにしても輸入するものについて、調達先の一部を単に米国に振り向けるだけの可能性が高い。

この合意によって、米国の農家は今後、一段と優位な価格設定を求め、中国の需要に応じて、ソルガムなど、生産する農産物の配分を変えていくことになるだろう。だが、米国の総生産量は常に、国際市況によってほぼ決定される。
 
同様に、米シェール生産業者が中国への輸出を拡大すれば、他国への販売は減少するだろう。(中略)

中国が表明した米国からの輸入拡大により、米国の対中貿易赤字はある程度削減されるだろうが、圧縮幅は、トランプ氏が求める2000億ドルの規模には到底及ばない。

さらに重要なことに、強制的なライセンス供与や合弁設立、盗難などを通じた外国企業の知的財産権の取得や、中国に進出する外国企業の事業運営制限など、中国当局が様々な手段を使って自国企業を支援し、海外の競合相手から市場シェアを奪うことに比べれば、貿易赤字はそれほど問題ではないのだ。(中略)
 
米外交評議会(CFR)の通商問題専門家、ブラッド・セッツァー氏は、中国がこれまで行った最大の確約は「今後どのような状況になっても、輸入を拡大する公算が大きい品目の輸入を増やす」というものだと指摘する。

一方で、「製品輸入の少なさ、そして今以上に製品輸入の縮小を目指すといった中国の世界的な通商パターンについて、構造的問題は解決されなままだ」という。
 
米当局者は今後の中国との協議で、さらに大きな譲歩を引き出すかもしれない。(中略)だが米当局者から、中国に対するレバレッジ(交渉上の相対的優位性)を行使しようとする意欲はほとんど見られない。
 
中国は長らく、海外の企業や政府との交渉材料として、衛生管理や反トラストに関する法律を自国の都合のいいように執行してきた。

今回の米中通商摩擦問題でも、米国産の車両や大豆に対する税関検査を強化したり、米企業によるオランダ半導体買収計画への反トラスト審査を遅らせたりするなど、同じような戦略を行使している。

トランプ氏も事実上、同じことをやった。商務省は、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)が米国の制裁法に違反したとして、米企業によるZTEへの部品供給を禁じた。
 
中国が通商協議の一環として、ZTEへの制裁緩和を要求すると、トランプ氏はこれに応じてしまった。米国のある元通商当局者は、ZTEを交換条件としたことは「極めて異例だ」と指摘する。

「これは米国の安全保障は取引可能だとの立場を示すことになる」という。ムニューシン長官は、ZTEの問題は「全く別だ」と主張する。
 
トランプ氏が先月、中国に対する大規模な制裁措置を発表した際、この戦いは「多少の痛み」を伴うかもしれないと述べた。

だが痛みに対するトランプ氏自身の忍耐度は低いようだ。米国の対中輸出への依存度は、中国の対米輸出への依存度に比べて低いが、中国は11月の米中間選挙に重要な影響を及ぼす、共和党のお膝元である州の農産品輸出を標的にした。米当局者が対中報復措置の回避を優先することも、これでうなずける。

中国はこの貿易摩擦問題でなお弱い立場にある。だが、中国が手持ちのカードを米国よりもはるかに上手く使っていることは確かだ。【5月23日 WSJ】
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“痛みに対する忍耐度は低い”というか、目先の成果をアピール(主に支持者向けに)するためには、長期的・総合的影響は無視する・・・イラン核合意でも、移民対策でも、そんな傾向があるようにも見えます。
北朝鮮問題ではどうでしょうか?

 

 

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