日中関係  政府レベルで加速する改善の流れ 期待される中国社会における従来の“反日”からの脱却 | 碧空

日中関係  政府レベルで加速する改善の流れ 期待される中国社会における従来の“反日”からの脱却

(この場面では硬い表情の王毅外相ですが・・・・【4月16日 朝日】)

【「今回の訪問が両国関係のより良い発展に役立つことを期待している」】
このところ改善の動きが見られる日中関係ですが、15日に来日した王毅外相は、「今回の訪問が両国関係のより良い発展に役立つことを期待している」と訪日理由を明らかにする異例の対応で、関係改善の流れを加速させる姿勢を見せています。

****
中国外相が9年ぶり単独訪日、王外相が異例の訪日理由を明かす****
2018年4月15日、米華字メディアの多維新聞は、中国の外相が多国間の枠組みを除いて9年ぶりに日本を訪問したことに関連し、「王毅(ワン・イー)外相が異例の訪日理由を明かした」と報じている。

記事は、王外相が15日から日本を訪問し、河野太郎外相と会談したことについて「会談の時期が特殊であることに、世間の注目が集まっている」と指摘した。

その上で、15日付のロイター通信の報道を引用し、河野外相が王外相との会談で、北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を実現するため、緊密に連携していくことを望むと発言したこと、王外相が今回の訪日について、日本の態度が積極的になりつつあることを受けてのものだとし、「日本は昨年以降、対中関係において積極的なサインと友好的な態度を示している。今回の訪問が両国関係のより良い発展に役立つことを期待している」と述べたことを紹介した。

記事はさらに、米ブルームバーグが、「中国の外相の単独訪日はここ8年余りで初めてのことだ」とし「アジアの2大経済圏である日本と中国は、米国の貿易と安全保障政策の混乱の中で関係を修復しようとしている」と報じたことも紹介している。【4月16日 Record china】
********************

日本滞在中の会談等も、概ね来日目的の日中関係改善の流れに沿ったものになっています。

****
知日派」王毅氏、和やか外交 二階氏と面会****
訪日した中国の王毅(ワンイー)国務委員(副首相級)兼外相は17日、自民党の二階俊博幹事長と面会し、中国が進めるシルクロード経済圏構想「一帯一路」について「日本の国内が一帯一路に積極的になるようお力添えください」と協力を求めた。

同席者によると、王氏は「日中関係はいよいよ改善の勢いが出てきた。二度と後退させないよう努力する必要がある」と強調した。
 
王氏としては、二階氏を通じて日本の協力を引き出したい考えとみられる。二階氏は「前を向いて(関係改善を)加速しないといけない」と応じたという。

 ■厳しさ一転、関係修復図る
(中略)中国政府きっての「知日派」は近年、日本に厳しい発言を繰り返してきたが、今回は関係改善に前向きな姿勢を打ち出し、中国の対日姿勢の変化を感じさせた。
 
「中日関係を再び正常な軌道に戻す重要な訪日です」。16日、安倍晋三首相との会談の席で王氏は自らの訪日をこう位置づけた。

写真撮影時は厳しい表情だったが、その後は和やかに。会談後は首相官邸の庭を散歩するなど余裕もうかがえた。外務省によると、17日に昼食を共にした自民党の二階俊博幹事長には「若い議員をどんどん訪中させてほしい」と語ったという。
 
日本勤務経験が7年半に及び駐日大使も務めた王氏だが、日中関係が冷え込んだ時期は日本寄りと見られることを嫌ってか、対日批判を強めた。昨年の記者会見では歴史認識を巡る問題を巡り「日本はまず自らの心の病を治す必要がある」とまで語っていた。
 
両政府が関係修復を探るなかで訪日した今回、王氏は福田康夫元首相や経団連幹部らとも立て続けに会談。記者団に自ら歩み寄り「改善の流れを加速させなければならない」と繰り返した。
 
中国外交筋は、王氏の姿勢の変化について日中関係改善の動きのほか、今年3月に副首相級の国務委員に昇格したことを要因に挙げる。「今後5年間の地位が固まり、権限も強まった。以前より自らの言葉で語れる環境になっている」
 
ただ、日本側が求める首脳レベルの往来については「関係改善の過程で再開される」と述べるにとどめ、日本の対応を見極めたいとの姿勢をにじませた。【4月18日 朝日】
*****************

15日には東京で、中国の鐘山(ジョン・シャン)商務部長(商務相)と世耕弘成経済産業相の会談も行われ、経済関係強化に向けた取り組みが話し合われています。

****
日中経済閣僚が会談、中国から6つの提言****
(中略)鐘氏は日中の貿易や投資における協力関係を深めるにあたって、「一帯一路」の枠組みにおける第三国市場での協力、保護主義への反対、ハイエンド製造業やイノベーションでの協力、第1回中国国際輸入博覧会への日本の参加、サービス貿易分野での協力、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉を推進し東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を早期に実現させるという六つの提言を行った。

一方の世耕氏は、習近平国家主席がボアオ・アジア・フォーラムで行った開放拡大を強調した基調演説を高く評価し、中国と第三国市場の開発で協力する道筋を探りたいとしたほか、ハイエンド製造業やサービス貿易での協力を深め、日中韓FTA交渉を推進させ、RCEP交渉も年内に具体的な進展が得られるように努力するとした。(後略)【4月16日 Record china】
********************

更には、沖縄県・尖閣諸島の国有化を巡って日中関係が悪化して中断していた防衛関係の交流拡大も。

****
<日中防衛交流>6年ぶり再開 佐官級が防衛相を表敬訪問****
公益財団法人「笹川平和財団」などが主催する自衛隊と中国軍の佐官級交流事業で来日した中国軍の訪日団が17日、防衛省で小野寺五典防衛相を表敬訪問した。

同事業は日中関係悪化を受けて2012年に中止されたが、今回は関係改善に合わせて6年ぶりに再開された。(後略)【4月17日 毎日】
******************

“9年ぶり単独訪日”とか“6年ぶり再開”といったことを見ても、関係改善へ向けて動き出しそうな雰囲気が感じられます。


【中国が局面を打開する上で日本が必要 日中両国間には小さな島の問題以外に大きな争いはない】
日中関係改善による中国側のメリットについては、“中国が局面を打開する上で日本が必要だ”との指摘も。

****
中国には日本が必要だ―米華字メディア****
2018年4月14日、米華字メディア・多維新聞に、中国が局面を打開する上で日本が必要だとする、中国の民間シンクタンク・安邦諮訊によるコラム記事が掲載された。

記事は「2018年に入って時間が浅いが、東アジア地域ではホットな話題に事欠かない。朝鮮半島は不確定要素に満ち、トランプ米大統領は貿易戦争を仕掛け、南シナ海問題は遅々として解決しない。中国は地政学的な試練を迎えている。どうやら、これを突破するカギは、日中関係の改善にありそうだ」とした。

続けて「日中関係というと心中複雑になるが、1980〜90年代の中国のインフラ建設で日本から極めて大きな支援を得たように、これまでにも日本が中国の局面打開の手掛かりになってきた。では、今日本との関係を改善することで、どのような実質的な利益が得られるのだろか」とした。

そして、「日中関係の改善を最も快く思わないのはほかならぬ米国である」と指摘。
「日中関係の改善は米国に驚きを与えることになる。日米同盟が打破されなくても日中両国は経済・貿易の協力を推進することは可能なのだ。市場レベルで見てもその条件は日増しに整いつつある。日本の多くの保険資金が中国市場での長期投資により安定的なリターンを得ようとしている。そして、日米間の貿易関係がうまくいっていないことも、日中間の貿易協力関係改善にとってチャンスだ」と論じている。

安邦諮訊の専門家である陳功(チェン・ゴン)氏は「現状、中国は一連の枠組みを取っ払って日本により近づくことを考えてもいい。今後の発展状況をみれば、日中両国間には小さな島の問題以外に大きな争いはない。日中両国がともに歩んで市場空間を拡大することは完全に可能だ。しかも、日中間のバランスは、中朝間、中ロ間のバランスにも関係してくるのだ」との見方を示した。【4月17日 Record china】
********************

“小さな島の問題”云々・・・日本には「何を馬鹿なことを!」「問題を深刻にしているのは中国側ではないか!」といった批判・警戒も多々あるところでしょうが、個人的にはこういう発想は好きです。両国がこうした“余裕を持ったスタンス”に立てば、“小さな島の問題”は大きくならずに済みます。


【「いずれ経済規模で米国を抜く中国を相手に、何でもかんでも対抗するのは難しい」】
ホットな東アジア地域における“局面打開”、さらには今後予想される“局面の変化”のために、中国との関係が重要になるのは日本も同様です。

現在、安倍首相が訪米してトランプ大統領と会談しています。明日はゴルフでしょうか。

アメリカの利害に直結する北朝鮮問題のとりあえずの対応は別として、トランプ大統領が東アジアに今後どれだけ継続して関与するつもりがあるのかは、よくわかりません。

通商問題で、FTA交渉など、日本側への厳しい対応も今後考えられます。(日本側を追い詰めることは、上記のような日中関係を背景に、日本を中国側に追いやるだけですから、“今シンゾーを追い詰めるのは得策ではない”【4月13日 風間晋氏 FNN PRIME】との判断で、今回会談では厳しい話は表面化しないのかもしれませんが、いずれは・・・。)

米中間の“貿易戦争”も、ボアオ・アジアフォーラムでの習近平主席の基調演説にみられように、おそらく適当なところで“落としどころ”が探られるのでしょう。そうなったとき、米中は“新たな大国関係”を構築し、日本の立ち位置は?・・・という話にもなります。

日本の置かれている状況、日本側の日中関係改善の必要性について、以下のような指摘もあります。

****
「中国との差開いたことを日本政府が初めて認めた」と米華字メディア****
2018年4月17日、米華字メディアの多維新聞は、「日本政府は対中国政策の軸足を『けん制』から『融和』に移す構えだ」とする共同通信の報道を紹介し、「中国と日本の実力が徹底的に逆転した。日本政府は初めて、中国との差が開いたことを認めた」と報じた。

記事によると、共同通信は、日本政府が対中国政策の軸足を「けん制」から「融和」に移す構えを見せている背景について、官邸筋の話として「いずれ経済規模で米国を抜く中国を相手に、何でもかんでも対抗するのは難しい」との判断があるとした。

その上で、「だが中国による沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入や、南シナ海の軍事拠点化に歯止めがかかる様子はない。大国化した中国とどう間合いを詰めるのか。手探りの対中外交が続く」と指摘した。

共同通信は、対中外交について、河野太郎外相が15日の王毅(ワン・イー)外相との会談冒頭で、尖閣と南シナ海をめぐる中国動向を念頭に「お互いに脅威とならないとの共通認識に基づき、日中平和友好条約の名にふさわしい関係を再構築したい」と注文を付け、「言うべきことは言う」(外務省幹部)強気な姿勢をアピールした一方で、日本政府は2月、中国が不快感を示したことへの配慮から、安倍晋三首相による台湾東部地震の見舞いメッセージの宛先「蔡英文総統」を官邸ホームページで公表した後に削除するなど、日中関係は日本が中国に歩み寄る形で進んでいると指摘した。

また日中関係筋の話として「融和姿勢を示す首相からは、核開発など北朝鮮をめぐる問題が大きく動く中、日本人拉致問題を解決するためには、中朝首脳会談に臨んだ習近平国家主席と速やかに意思疎通を図らなければならないとの『焦り』がにじむ」とも伝えている。【4月17日 Record china】
*******************

中国嫌いの人々にしては“とんでもない暴言”でしょうが、『焦り』云々は別にしても、「いずれ経済規模で米国を抜く中国を相手に、何でもかんでも対抗するのは難しい」という判断は妥当なものに思えます。

米中関係が“新たな大国関係”となれば、日米で中国の進出を封じ込める・・・といった話も吹き飛んでしまいます。

人口減少など厳しい将来が待ち受ける日本としては、いかに中国のパワーを活用していけるかを考えるべきでしょう。

中国がいかに経済的・政治的に巨大になっても、共産党一党支配のもとでの中国は、人権・民主化の面で基本的に欠陥を抱えた社会ですから、巨大な中国に日本が憶する必要はありません。(この欠陥の話は今回はパスします)


【中国社会で、条件反射的・画一的な“反日”とは異なる思考も】
日中関係改善を期待できる背景には、先述のような政府レベルの政治的な動きのほかに、中国社会の一定の“成熟”もあるように思われます。

下記のような中国社会の状況について、従来の条件反射的・画一的な“反日”ではなく(そういった面がなくなった訳ではありませんが)、自分たちの思考で日本をとらえようとする動きが育ちつつある・・・とみるのは期待のし過ぎでしょうか。

****
日本で出版された「抗日ドラマ読本」、中国人に大ウケ!?****
2018年4月17日、中国版ツイッター・微博で、「日本で『抗日神ドラマ大百科』が出版された」と紹介する投稿があり、ネットユーザーの間で議論を呼んでいる。

紹介されたのは今月刊行された「中国抗日ドラマ読本」(パブリブ)という書籍。この本を紹介した微博アカウントは「日本で『抗日神ドラマ大百科』が出版された。本では人気の抗日神ドラマのストーリー解説、人物相関図、各シーンに対するツッコミが記載されているほか、付録として抗日中国語講座や、VPNを通して中国の動画サイトにアクセスする方法などまでされている」と伝えている。

本の帯には「時代背景完全無視!反日プロパガンダどころかもはやギャグ!」と書かれており、抗日ドラマを完全にコメディーととらえて作品の数々を紹介していることがうかがえる。抗日ドラマをめぐっては、中国国内でもその荒唐無稽な演出や時代考証の甘さなどがたびたび指摘され、「抗日神ドラマ」などとやゆされて久しい。

今回、こうした書籍が日本で出版されたことについて、中国のネットユーザーは「時代背景完全無視…。笑った」「日本人の資料作りの能力はやっぱり最強だな」「本に収録されている資料の膨大なこと……心から敬服するわ」「(こんなものをまとめる本を出すなんて)日本人も暇なんだな」などのコメントが寄せられた。また、日本人は抗日ドラマをあくまでも「特撮ドラマ」ととらえているとの考えを示すユーザーもいた。

さらに「この本、欲しいんだけど……」「どこで買えるの!?」など、ぜひとも購入したいという声も目立っている。その一方で「よくよく考えると心中複雑だわ」「同僚が1冊買って来たんだけど、複雑な気持ちになった。中国で出版されたならまあいいけれど、日本で出版されるって……恥ずかしい」「本当にそう。こんなドラマを中国人が作ってるんだからなあ」など、中国人としての恥ずかしさを吐露するコメントも多かった。【4月18日 Record china】
********************

****
安倍首相退陣要求デモに3万人、中国ネットは意外なコメントも****
2018年4月15日、人民日報系の海外網は、「14日に国会前で安倍首相に退陣を求める大規模なデモが行われた」と伝えた。こうした動きに、中国のネットユーザーからは意外なコメントが寄せられている。(中略)

この報道に対して、これまで安倍首相を「目の敵」にすることが多かった中国のネットユーザーからは、少し角度の違ったコメントが寄せられている。

まず、最も多くの“いいね”を集めているコメントは「中学生の時から『安倍首相の支持率が下がり続けている』という中国中央テレビ(CCTV)の報道を聞き続けていたが、どうして私が大学生になった今まで続けているのだろう」というもの。

これには2種類の解釈があるようで、一つは「(日本の)民主主義なんて表面的なもの」というもの。もう一つは「中国中央テレビは自分で自分をだましている(自分に都合の良い報道をしている)」というものだ。

また、「ちょっと聞きたいんだけど、中国でこれ(退陣要求デモ)をやろうとしたらどの部門に届けないといけないの?」というきわどいコメントもあり、さらにこれに対する「君、もしかして北京で戦車を見たいのか?」と天安門事件を想起させるような返信にも少なからぬ“いいね”が付いている。

さらに、「こうした安倍首相に抗議する人たちが、日本政府によって『国家政権転覆罪』や『尋釁滋事罪(故意に騒動を引き起こす罪)』、『公共の秩序を乱す罪』で投獄されないか心配!」というコメントもあるが、単に「捕まらないか心配」とするのではなくあえて中国の罪名を具体的に挙げていることから、中国でデモをすればこれらが適用されるということを暗に皮肉っているととらえることもできそうだ。

この他、「安倍氏は日本人にとっては良い首相。米大統領選で見通しを誤ったらすぐにトランプに会いに行き、中国の反日感情はあっても貿易のために一貫して中国のトップとの会談を求め、日本国民の批判の声を受け止めてきた。全国民に奉仕する、サービスの模範」というコメントも他のユーザーからの評価が高い。【4月16日 Record china】
*****************

****
中国アニメと日本アニメの間に存在する「絶対に越えられない壁」 それは・・・=中国メディア****
中国メディア・東方網は10日、「国産アニメと日本アニメの間にある、本当の差はどこにあるのか」とする記事を掲載した。

記事は、中国アニメと日本アニメの間にある差について、3つの点を挙げて論じた。まず1つ目として、「中国人の多くが、補助金を目当てにアニメに従事しており、プロ精神やアニメに対する愛情が不足している点」を挙げている。

2つ目は、思想の問題だ。「中国はこれまで保守的な思想を守り続けてきた。この思想は必然的に限界性や思考上の盲点を作ることになる」と指摘し、この保守的思想を改めるには、今から全力で変えようとしても100年、200年はかかるのではないかとした。

そして3つ目は、政治に関するテーマを自由に扱えない点である。「国の神経を刺激するようないかなるテーマも、われわれは根本的に作品の中で表現することができない。社会を風刺することなど、なおのことできないのである」と論じた。

さらに、「アニメ作品はさておき、ネット上のコメントですら特定の言葉が遮断されるのだから、救いようがない」とまで指弾している。

記事は、「上述した3つの点は、実際は中国のアニメ産業だけの問題ではなく、中国のソフトパワー全体のボトルネックになっている。わが国が唯一得意なのは古代文化しかなく、それゆえアニメ産業もみんな仙人だの妖怪だの武侠などばかり。武侠小説や西遊記を何度も何度も繰り返して題材にするのは、本当につまらないと思わないか」と結んだ。【4月11日 Searchina】
*******************