直江津高校3年生阿良々木暦は、朝8時45分の始業チャイムに間に合うよう階段を全速力で駆け上がっていた。その時上から階段を踏み外した同級生戦場ヶ原ひたぎが落ちて来た。ありえないほどのスピードで落ちて来るひたきの姿に、暦はただただ驚き落ちて来る身体を支えようと両手を差し出した。「戦場ヶ原には体重と呼べる重さが全く無かった。」余りにも軽い人間とは思えないぐらいの重さで落ち支えた事実こそ、ひたきに対する第一印象だった。実は暦はクラスで副院長を務めている。クラスメイトの委員長羽川翼と暦は春休みに出会い、放課後2人で文化祭のクラス発表の相談をしていた。「私達受験だし。クラスで投票して一番多いものにしましょう。」翼は受験生だしそんなに乗り気ではなく、一番手っ取り早い多数決で決定しようと提案した。「良いんじゃないの?」投げやりで答える暦。その姿も翼にとってはいつもの姿だった。(シャフトらしい演出でスタートです。非常に分かり易く神谷キャラと美少女が交流しながら、物語が進んでいく。これからどうなるのか気になる内容だと思いました。それぞれの女の子に秘密もありそうですし。期待十分の幕開けです。)



 「なあウチのクラスに戦場ヶ原っているだろ?何か気になってな。あいつ病弱だから文化祭には参加するのかなって。それに僕が気になっているのは、ひたぎっていう下の名前だよ。」文化祭の相談をしていた時、ひたぎの名前が気になると翼に明かした暦。「そんなに変わっているかな?ひたぎって土木関係の言葉よ。何でもは知らないわよ。知っていることだけよ。」ひたぎのルーツを答え感心される翼。知っている事は知っている。知っている幅が広いのだ。「珍しいね阿良々木君が他人に興味を持つなんて!病弱な女の子は男子は好きだもんね。」暦が他人に興味を持った。それが病弱な女の子だから、やっぱり男の子が好きなタイプと変わらない。いやらしいと幻滅した翼。「とにかく戦場ヶ原ってどんな奴なんだ。」病気とは思えない。暦は博識の委員長に探りを入れ始めた。「阿良々木君の方が良く知ってるんじゃないの?3年間同じクラスだったはずでしょ。まあ私から見たら優等生ってとこかな。」主観はわからないから、客観的な答えを返しか翼には出来なかった。(もの凄く2人だけのシーンなんですけど、いろいろな描写で描いているなと感じました。シャフトらしい斬新な切り口で紹介しています。一般的には優等生だけど秘密がありそう。これは物語の始まりとしては非常に興味をそそられます。ちなみに翼みたいな女の子は個人的には大好きです。)



 翼のひだきに対する客観的な感覚はあくまで高校生でのこと。実は翼は中学時代同じ学校に通っていて、口数も友達も少ない高校生活とは対照的な、元気で活発な中学生だった事を人づての噂として聞いていた。「何か凄く人当たりが良くて、お父さんが外資系企業のお偉いさんでお家は大きいけど全然気取ってないんだって。」中学時代のひたぎは、暦が称する「完璧超人」そのもの。出あった時とはあまりにかけ離れた存在だった。「でもこんなこと言っちゃいけないと思うんだけど、戦場ヶ原さん今の方がずっと奇麗なんだよね。存在がとても儚げで。」明るい美少女から影がある美少女へ。今、翼が感じるひたぎ対する見方はやはり変わっていた。すると暦は全てを聞き終わると思い出したかのように教室から立ち去った。「羽川さんと何を話していたのかしら?動かないで、言い換えれば動くと危険という意味よ!好奇心と言うのは、全くゴキブリみたいね。人の触れられたくない秘密ばかりにこぞって寄ってくる。」全てを見通していたかのようにひたぎが突然現れ、ペンとホッチキスを暦の口に突き刺し喋らせないように仕向けた。



 余りの突然の出来事に口に物を宛がわれ恐怖に慄く暦に対し、バナナの皮に足を滑らせ迂闊にも階段から落ちたと前置きした上で「気付いているんでしょ?私に重さが無いって。でも全然無いって訳じゃないのよ?私の身長だと平均体重は40kg後半強らしいわ。でも私の実際の体重は5kg!中学校卒業してこの高校に入る前のことよ。一匹のカニに出会って重さを根そぎ持って行かれたわ。これ以上嗅ぎ回られたら迷惑だから喋ったのよ。」口を塞ぎ一方的に自分の過去と秘密を暴露したひたぎ。当然暦に対し秘密をばらさないよう仕向けるのだが「口が裂けても喋らないって阿良々木君に誓ってもらうには、どうやって口を封じれば良いのかしら。とにかく私が欲しいのは沈黙と無関心だけ。沈黙と無関心を約束してくれるのなら2回頷いて頂戴。それ以外の行為は敵対行為とみなし即座に攻撃に移るわ。」自分に関わるな。2回頷いてそれを認めろ。恐怖で支配するひたぎの態度は常軌を逸した。(千和ちゃんルイスより怖いって。カルトアニメなんだけど、その世界に引き込むのがもの凄いです。私絶望先生よりもこっちのほうが、シャフトらしさがよりよく生きていると思いました。いやひたぎの言葉と暦の恐怖に引きつった顔の印象がまだ拭えません。)



 そして言われた通り暦は2度頷いた。しかしこれで終わりかとほっとしたのもつかの間、ホッチキスで口の中に入れはさんだひたぎ。「明日から私を無視してね。よろしくさん。」激痛に顔を歪める姿を上から眺め、冷たい視線を浴びせて無視しろと脅し立ち去った。「悪魔のような女だ。でも大丈夫この程度なら僕は大丈夫。」常人なら悲鳴を上げて苦しむ痛みであるが、丈夫な身体を持つ暦にとって怪我は全く問題なかった。「阿良々木君まだ居たの?」気になって教室から出て来た翼が声を掛けた。「いいかバナナを皮を階段に捨てるなよ。もしそうしたら僕は、絶対に君を許さない。」翼にはどういう意味か全く分からない言葉を残し、暦は逃げるように走り去り階段を駆け下りていった。すると目の前には恐ろしき悪魔の所業をなす美少女がいた。「呆れたわ。いえここは素直に驚いたと言うべきね。あれだけの事をされて反抗精神を起こすなんて。いいわ阿良々木君、戦争をしましょう。」関わる=宣戦布告。ひたぎの考えは極端そのもの。「違う!お前の力になれると思って。」正体を知った暦の答えは、非常識な存在で相手との関係を拒絶するひたぎの力になること。「ふざけないで!あなたに何が出来るの?」取り合おうとしなかった。しかし暦の口の中の傷が無く、武器にしようとした文房具をひたぎは階段に落とした。(いやはや両方とも人間とは呼べない存在だったとは。しかもいきなりひたぎがデレデレになって、自転車で一緒に帰る。このギャップは何なんでしょうか?それに暦は忍野メメという男性により、吸血鬼から人間に戻れたそうです。いきなり超展開すぎます。)



 2人は自転車に乗り学校から下校した。その間暦も自分の秘密を話すとひたぎは、自分はツンデレだと自負していると答えた。そのまま自転車は工事中のビルに到着した。2人はそこで降りると、暦はひたぎのカバンが無い事に気付いた。「私は教科書は学校に置いてロッカーに置きっぱなし。それに文房具を身体のあちこちに仕込んでいるし。いざって時に両手が自由じゃ無いと戦い難いもの。」教科書は不要で、文房具は武器代わり。そんな攻撃的側面ばかり見せる様子を知り「文房具を預かるから出せ。忍野は変なおっさんだけど一応僕の恩人なんだ。その恩人に危険人物を会わせる訳にはいかない。」暦の目的は、自分を助けた恩人忍野にひたぎを会わせる事。「了承したわ!でも勘違いしないでね。あなたに気を許したわけじゃないわ。もしも私から1分おきに連絡が無かったら、私の仲間が家族を襲撃するわよ。」簡単には気を許さない。文房具は放棄したが、ひたぎは家族を襲撃すると脅しをかけた。それでも暦はひるまず、忍野の元へ一目散に進んだ。



 忍野はヤンキー風の男性で、その姿はお世辞にも真面目とは言えない。事実ひたぎと会話をしてもおちょくっていると勘違いされるほどだった。「私を助けて下さるのかしら。なら私から話します。」自分の体重が失われた事実を明かすと「重しガニ!場所は関係ない。そういうことが起これば起きてしまう。この場合別にカニじゃなくていい。ただし名前は重要なんだよ。この場合カニじゃなくて神かもしれないし、重いし神から重しカニになる場合もあるんだ。しかし何かお嬢ちゃん被害者ずらしてるね。大体重しカニに会うのは、そういう人間が多い。会おうと思って会えるもんじゃない。まあとりあえず体重を取り戻したいのなら力になろう。」忍野はじっくりと人物像を観察した上で、暦の紹介という手前協力を受諾した。カニの正体と何故自分がそうなったのか?分からないまま運命は委ねられた。(ラストは禅問答と言っても過言ではないほど、難しい内容でした。それでも忍野の言う事は、ちょっと運命めいているなって感じました。いや予想以上に面白くて世界に引き込まれます。ノーマークだったけどこれは素晴らしいです。オムニバス形式で話が進んでいってどうなるか注目しましょう。)