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去年は「世界農業遺産カレンダー」を日本農業新聞で制作し、販売しました。

おかげさまで、年末までに完売し、とってもすがすがしい仕事納めとなった。

 

これは、23年~24年度末まで1年間かけて、日本農業新聞のカメラマンと15か所の

日本国内にある世界農業遺産を訪ねて取材したものを、まとめたものです。

なにしろ初のチャレンジで、いろいろ未知数ながら、それゆえに刺激的でした。

 

ユネスコ(UNESCO)による「世界遺産」を知っている人は多いですよね。

正確には、世界「自然遺産」と世界「文化遺産」、世界複合遺産の3つに分かれる。

日本最初の世界遺産は1993年、屋久島と、白神山地、これは世界「自然遺産」で、

同じく、93年、奈良の法隆寺と、姫路城、こちらは世界「文化遺産」なんですよね。

 

ユネスコというのは、国連・教育科学文化機関、略してUNESCOというわけだが、

同じ国連でも「国連・食糧農業機関」=FAOが管轄して、認定するのが、「世界農業遺産」というわけです。

 

日本に初めて登録されたのは、2011年。

「能登の里山里海」と、「佐渡のトキと共生する里山」

この認定には、当時、国連大学の上級副学長をされていた、武内和彦先生の尽力が大きい。

東京大学のサスティナビリティ学の権威であり、

COP10でのSATOYAMAイニシアチブ、生物多様性条約など国際的にも貢献された。

 

その武内先生によると、

ユネスコの世界遺産は、保全が重要、いわゆる過去に価値がある遺産ですが、

世界農業遺産は、農業ですから、生きた遺産!「動的保全」ダイナミックな保全が重要、つまり、

農家がその地域で農業を営み続けることが持続可能性だということなんですね。

 

しかも、

ユネスコの世界遺産の日本での数は26で、去年佐渡が認定されましたが、世界的には多いとはいえません。

ところが、世界農業遺産は、中国の22地域に次いで、世界で2番目に多いのが日本!15地域!

日本は多様な農業ということにおいては、世界に誇るべきことなのです。

 

というような物語を持つ世界農業遺産カレンダー、

新年2025年1月はこちら!

 

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2025年

持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的水管理システム

 

蕪栗沼という水田地帯の中にある沼、夜明けとともに飛び立つマガンの数17万羽。

日本最大のマガンの越冬地です。

鳥の世界に人間がお邪魔させていただいているという気持ちになるぐらい、

それはもう圧倒的な冬鳥たちの生命力あふれる声とはばたき。

 

この解説文をわたしが担当したのでした。

 

夜明けとともに次々と飛び立つマガンの群れ、朝焼けの空に響き渡る鳴き声。

ここは、宮城県大崎市の田園地帯にある蕪栗沼。日本最大のマガンの越冬地です。

その数17万羽。

マガンの越冬には「水田と沼のセット」が条件ですが、干拓により湿地が減少する中、

蕪栗沼は遊水地の機能を持つことから水田の中に残されてきました。

世界的にも重要な湿地として、ラムサール条約に登録されています。

 

じつは、この写真は、1年前、2024年の1月1日の日本農業新聞に載ったのでした。

しかも、お正月特大号ということで、

大崎耕土と能登の里山里海の2か所を併せて、掲載した、その日に地震が起きたことを思い出すとなんとも感慨深いものがよみがえります。

よって、世界農業遺産カレンダーの利益の全額を、能登の復興へ寄付することになっています。

 

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「大崎耕土」は約400年前、伊達政宗公の時代の新田開発により、江戸の米消費の

3分の1を担ったと言われる広大な水田地帯です。

今では3万haに及ぶ水田ですが、その歴史は「やませ」による冷害や治水の克服など

「巧みな水管理」の知恵と技術の歴史でもありました。

これらの先人の知恵と工夫により、世界農業遺産に認定されています。

 

雁行は、この農業システムが維持する生物多様性の象徴です。

 

 

1月の夕方、防寒着に身を包んで蕪栗沼を訪れると、水田で落ち穂などを食べて過ごしたマガン

17万羽が一斉に帰ってくる「ねぐら入り」に立ち会えます。

向こうの田んぼから飛来するマガンの群れ、空に響き渡る鳴き声、水面に吸い込まれるように着水する光景が

間断なく繰り広げられ、沼と田んぼと生き物の織り成す命の営みを五感で感じることができます。

 

人にとっても生き物にとっても「恵み」となる環境が保たれている、命あふれる大崎耕土。

地域独自の品種、ササニシキ系のお米「ささ結」は、あっさりとしてお寿司に合うと喜ばれるなど、全国的にも希少。

同時に、中山間地の鳴子温泉エリアでは、粘りある品種「ゆきむすび」がCSA活動などにより、受け継がれています。

また、江戸時代からの隧道、南原穴堰は「世界かんがい施設遺産」に登録され、

今後は、先人の知恵を技を訪ねるツーリズムにも力を入れていく予定です。

風土1000年。

大崎耕土は「水と知恵と人」の3つのつながりで地域の米づくりを守り続けます。

 

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2025年

1月  持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的水管理システム

2月  みなべ・田辺の梅システム

3月  クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環

4月  峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム

5月  静岡の茶草場農法

6月  トキと共生する佐渡の里山

7月  阿蘇の草原の維持と持続的農業

8月  高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム

 

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9月  清流長良川の鮎-里川における人と鮎のつながり

10月 人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム

11月 にし阿波の傾斜地農耕システム

12月 能登の里山里海

2026年

1月  静岡水わさびの伝統栽培-発祥の地が伝える人とわさびの歴史-

2月  大都市近郊に今も息づく武蔵野の落ち葉堆肥農法

3月 森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム

 

2025年12カ月と2026年の1月~3月まで、どどーんと15か月!

 

 

 

年末に、ほぼ完売となって在庫は新聞社にもないそうですが、Amazonでなぜか10数部、復活しているようです。

ご興味ある方はどうぞ~~~。

 

 

食料、農業が見直されている時代ですからね。

世界遺産の次は、「世界農業遺産」が来ますよー♪

 

 

ベジアナあゆみ