驚いたのは苗木に大量のフジツボが付着していることだ。
全ての苗木についている。
フジツボの重さによって、曲げられている苗木もたくさんある。
せっかく芽を出し、葉を携えているのに・・・痛々しい光景だ・・・
折れている苗木も多く見られる。おそらくフジツボによる被害だろう。
フジツボは海水の塩分濃度が高いとつきやすいと聞いたことがある。
ここは海の真ん中。海水の塩分濃度は確かに高いだろう。
こればかりは防ぎようがない。
今まで他の現場でもフジツボの付着はたくさん見てきたが、
その重みによって曲げられたり、折られたりしているのは初めてで、
残念な気持ちでいっぱいだ。
フジツボが付き、さらには泥まで付着して、苗木にとっては両痛手だ。
オオバヒルギの種は60cm程度と大きく、硬い。
それがフジツボと泥の重みでじわじわと時間をかけて曲げられ、
耐え切れなくなったものは折れてしまっている。
本当にかわいそうだ。
A4地区の奥にA5地区があり、そこにはオオバヒルギの群集がある。
ここは足が埋まるのも5~10cm程度で、地盤高もやや高めである。
最初の植林ではフタバナヒルギだけを植える計画であったが、
住民が間違えて集めてしまったオオバヒルギの種をここにまとめて密集させて植えたのだ。
それがなんと順調に成長し、フタバナヒルギよりもここの土地に適している様だったので、
補植にはオオバヒルギを採用した。
前回の視察(2008年9月)の時には、約150cm程度であった背丈が、
今では約170cm程度にまで伸びている。
このオオバヒルギが現在、1年6ヵ月でありながら、
約170cmであるとは驚きの成長ぶりだ。
私たちが植林している現場の中で最も順調に育っているのは、スカナ島である。
そのスカナ島のオオバヒルギは2年5ヵ月になるが、
それでもこんなに伸びているものはない。
トモヨン島全体の活着率からみても、この干潟がマングローブにとって
好条件ではないことは分かる。
しかし、そんな厳しい環境の中でも、
一生懸命伸びているこのオオバヒルギを見ていると、とても勇気をもらう。
このオオバヒルギにも大量のフジツボが付着している。
このオオバヒルギは背丈の割には幹もまだ細めで、
枝は少なく、支柱根もほとんど出ていない。
まだ、縦に伸びる段階なのだろう。
そう少しすれば、横に太る段階に入り、幹を太らせ、枝や支柱根も多く出てくるだろう。
ただ心配なことは、ビッシリと隙間なく付いたフジツボが
支柱根の成長の妨げになるのではないかということだ。
フジツボに負けず、成長してほしい。
現場BのB1地区の写真だ。
最初の植林で植えたフタバナヒルギが元気に成長している。
現在、1年6ヵ月だ。
B1地区は活着率が大変よく、植えたほとんどが葉を携えている。
このB1が飛び抜けて成長がいいのには理由がある。
それは地盤高の高さである。
先ほどの現場Aの写真と比較しても分かると思うが、地面の高さが30cm程度高い。
その為、浸水時間が短くなり、呼吸や光合成が現場Aより行いやすいということだ。
もう一つが現場Bのある位置である。
現場Aと現場Cに囲まれているため、外側からの波の影響を受けにくいこと。
この2つの条件があった為に、
B1地区は素晴らしい活着率で順調に成長しているのである。
このB1地区には、植林したフタバナヒルギに混ざって、
自然構成のヒルギダマシ(Avicennia)やマヤプシキも生えている。
私たちが植えたフタバナヒルギと仲良く育ってくれている様子だ。
人の手で植えたマングローブと自然のマングローブ。
融合しあって、いつか立派な森になってくれる日を期待している。
Ayo menanam bakau!!