色覚を意識して生きる インタビュー⑥(プロサッカー選手編) | 週刊!あやし眼科

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こんにちは。院長の伊勢屋です。

連載6回目となる色覚異常のある大人のインタビュー

今回インタビューさせて頂いたのはサッカー日本代表でも活躍された羽生直剛さんです。1979年生まれの41歳です。



写真提供FC東京

色覚検査の結果ですが

パネルD15 フェイル

「D型強度の色覚異常」という検査結果でした。

羽生さんが、色覚異常だと気がついたのは小学校低学年の頃に学校で行った色覚検査だそうです。そこで自分だけ検査数字が読めず、眼科で再検査することになります。そして色覚異常が確定してショックを感じたそうです。
それ以降、絵を描いて色を塗る時は、クレヨンでも絵の具でも、太陽は赤色、空は青色、木の緑は緑色にすると、気を使ったことを覚えているそうです。
そんな羽生さんですが、3歳頃からサッカーを始めて、小学校からはチームに入って本格的にサッカーを始めます。チームではエース的なポジションになります。相手との実力差もあったため、相手チームとユニフォームが区別つきにくい時はパスをせずに自分でドリブル突破していたそうです。
そして高校は八千代高校に入学します。高校3年に出場した全国高校サッカー選手権大会の準々決勝で記憶に残る出来事があるそうてす。対戦相手は帝京高校のユニフォームは黄色。自分のチームのオレンジ色のユニフォームと区別がつきにくいと感じたそうです。そのため監督にセカンドジャージで試合に望みたいと頼んだそうです。結局試合には負けてしまいます。この時八千代高校にとって14年ぶりの選手権大会進出だったこともあり、高校のOBや関係者としては伝統のファーストジャージで試合して欲しかっただろうなと考えたりして、ほろ苦い思い出だそうです。
大学は、高校時代の活躍もあり、推薦で筑波大学に入ります。大学時代は青色のユニフォームだったこともあり、相手チームとのユニフォームは区別ついたとのこと。そこでも活躍して、プロになることを決意します。色覚異常があることはプロサッカー選手になる選択をする上で特に気にならなかったとのこと。
大学卒業後、Jリーグのジェフ市原に入団します。初年度から試合で活躍します。その翌年から監督はオシムさんに代わりました。オシム監督というと、多い時には8色ものビブスを使ってボール練習をしていたそうです。例えば青と赤と白は味方で、黄色と緑と黒は敵チーム、紫とピンクはまた別の働きみたいに。
見分けにくい色はありましたが、「見えにくい」と言って練習を止めることも憚られ、先輩選手への遠慮もあり、味方選手の顔を覚えて練習していたけど、ビブス割が複雑だと分からなくなって、パスミスも多かったとのことです。
赤系と緑系の色のビブスが分かりにくいというのは色覚異常あるあるですね。
30代になってからは、「自分は色覚異常があるから見えないんだ」と言ってビブスの色を変えてもらうようになったそうです。
現役引退後は2年間スカウトの仕事をしていたそうです。スカウト候補の選手の試合を見に行って、対戦相手とのユニフォームの色が区別つかなくて、苦労するなどという経験もあったそうです。
また普段の洋服は、無難な「白のシャツ」に「ブルージーンズ」というような選択をして、ちょっとおしゃれな服を着たい時は奥さまにコーディネートしてもらって、次回以降もその組み合わせにしているそうです。結婚前は洋服屋の店員に、自分は色覚異常だからと言って、合うコーディネートを選んでもらったり、自分が苦手な赤系や緑系の服は買わないなど気をかけていたそうです。

以前に行った、色覚異常がある大人のインタビューで、「私は色覚異常があるのがバレたくないから団体スポーツを選ばなかった」という話を聞いたことがありましたし、色覚異常当事者の集まりの会でも、「集団生活の中で色覚異常を人に知られたくなくて消極的に生きて来た」というような話も聞いているので、サッカー日本代表までになった羽生さんに、ぜひ聞いてみたいと思っていたんです。
羽生さん、わざわざ仙台まで来て頂き、貴重なお話をありがとうございました。

最後に、毎回書いていますが私としては、先天色覚『異常』と、異常という言葉を使うのは、配慮の足りない医学用語であると感じます。
以前は、軽度の色覚異常を「色弱」、強度の色覚異常を「色盲」と表現していました。色盲であっても、色が全く分からないということではありません。そのような誤解もあり、『色覚異常』と変わりました。
現在も色覚異常のある方は、軽度、強度に関わらず自分のことを「色弱」と表現することもあります。私も状態を説明する言葉としては「色弱」の方が良いと感じています。
しかし医学的には、色覚異常と表現していますので、混乱を避けるために『色覚異常』という表現を使わせて頂きますね。