横須賀市の大楠山の麓には「エコミル」というゴミ処理場が存在します。その"エコミル"が供用を開始するまでは、横須賀市のゴミ処理場といえば神明町にある南部処理場でした。横須賀市民の方であれば、粗大ゴミといえば南部処理場、という認識の方も多いと思います。

一般的に南部処理場に向かうルートとしては、国道134号尻摺坂の中盤にある交差点を曲がり、処理場まで一直線に進む道(横須賀市道7777号と言います)を辿る経路が挙げられます。その市道7777号区間はわずか1km強であるにも関わらず、3本の隧道と2本の橋が存在する、ちょっとマニア心を擽る区間です。今回はその3本の隧道をまとめてご紹介します。

行程の都合上、南部処理場跡地側から国道134号合流地点方向に紹介していきます。
南部処理場跡地を出て直ぐに現れるこちらの隧道が「神明第三隧道」。この名前が出た時点で、残り2本の隧道が何という名前なのかがバレてしまったも同然。
殆どゴミ処理場への需要だけなのを体現するような飾り気のない坑門と、無いに等しい幅の歩道が印象的です。
右には「歩行者危険 ライト点灯」という看板があります。この看板、この先全ての隧道に設置されていますが、解釈次第では歩行者の通行をやんわり止めているようにも捉えられる気がします。何の問題もありませんけどね。
反対側の坑門です。入口とは違い、綺麗に弧を描く坑門が印象的です。ここから次の隧道までの間に分岐があり、曲がってしばらく歩くとイオン久里浜店の付近に出ることが出来ます。
【神明第三隧道】
供用年:不明(恐らく1980年?)
全 長:291m
 幅 :7.8m(推定)
高 さ:5.5m(推定)
3本の隧道のうち、ここだけ主要な情報がどこを探しても記載されていません。もしかすると、後述する2本よりも古い隧道なのかもしれません。

こちらが次の隧道「神明第二隧道」。左右法面のコケや暗さも相まって、大変美しい隧道です。

トンネルを抜けると、次の隧道と共に「宮の谷戸橋」という橋が現れます。こちらは久里浜花の国を跨ぐ橋で、季節次第では端からポピー等を見ることが出来ます。

反対側の坑門です。先程の第三隧道とは違い、こちらは両側とも同じデザインです。
【神明第二隧道】
供用年:1980年
全 長:233m
 幅 :7.8m
高 さ:5.5m

橋を渡るとすぐに、最後の隧道「神明第一隧道」が現れます。この時点で出口が見えています。

反対側の坑門。国道から入って1本目の隧道だからか、青色を基調とした美しい装飾が施されています。ここも例に漏れずお決まりの看板がありますが、その横に古ぼけた看板があるのが見えるかと思います。拡大すると…

よくある駐車禁止の看板かと思いましたが、よく読んでみると「この道路は南処理工場の管理用道路です」という記載があります。先述の通り、この道は市道7777号というれっきとした公道の筈で、管理用道路というポジションではないと考えていただけに、少し引っかかる記述でした。
恐らく、この看板ができた当時は市道ではなかった、という話だと思いますが。
【神明第一隧道】
供用年:1983年
全 長:241m
 幅 :7.8m
高 さ:5.5m

隧道を出ると、最後に「神明橋」という橋を渡り、国道134号に合流します。この橋はプレートがありましたので、その写真も貼っておきます。
国道に合流したあとは、バスで京急久里浜あるいは野比の駅に出ることが出来ます。

横須賀市は2020年に行った点検で、この隧道群を総じて「早晩、利用者に対して影響が及ぶ可能性が高いため、早期に対策を講じる必要がある」と評価しています。隧道の健全性は、最も危険性が高いとされる「Ⅳ」から二番目の「Ⅲ」評価。市が管理する隧道で「Ⅲ」評価を受けた道路隧道は、50本中5本しか存在しません。そのため、今後何かしらの対策工事が行われる可能性が高い隧道です。

この隧道を徒歩で訪問される際は、路面の濡れとヤスデに十分注意してください。特に第三隧道はヤスデがうようよしています。また南部処理場が現役だった当時に比べて格段に交通量が減っているとはいえ、平日であれば多少車の往来があります。前述の理由から歩道を外れて車道を歩く際は、十分に注意してください。

訪問日
2024年6月3日
出典(市道名/隧道名/全長/完成年/健全性)
横須賀市 道路トンネル長寿命化修繕計画
(道路トンネル個別施設計画)令和2年3月策定 より