以前に本社で研修中の新人社員が、自分がいる現場に研修に来た時、その新人社員から、政治はAIがするべきだ、という話を聞いたことをブログに書きました。
今回その研修中の新人さんと本社で会ったのですが、その時に貸したい本があるんてす、といって渡された本があります。
「今、若い人たちの間で読まれているし、政治に関心のある大学生にも共感を得ているんですよ、政治に興味があるとこの前言っていたのでぜひ!」と言って渡された本、それが「成田悠輔の22世紀の民主主義、選挙はアルゴリズムになり政治家はネコになる」です。
それほど厚い本ではないのですぐに読むことができましたが、以前に新人社員が「政治はいずれA Iがするようになる…」との発言の理由がこの本で分かりました。
内容を簡単に説明すると、政治や選挙はアルゴリズムでするべき、というもの。
SNSやネット上の書き込み、ブログ、様々な意識調査、アンケート、街角インタビュー、その他様々な民意を反映した媒体から幅広く情報を収集し、個別のテーマごとにアルゴリズムによって最適な政策を決定実行してもらうというもの。
また税制などもアルゴリズムによって最適な税率を決定、いずれ官僚も経済学者もそういった仕組みやシステムに置き換わるとしています。
その世界では政治家はもはや象徴的な存在でしかなく、マスコットキャラクターでもよい、なんならネコでもよいのでは?との成田氏の考えが本書で述べられています。
成田氏の考えの元にあるのは、現在の民主主義、そして様々な業界との癒着し腐敗した政治家に対する不信、がありますが、確かに自分も今の民主主義が正しく機能しているとは思えないし、また信頼できる政治家は本当にごく少数だと感じています。
本書では高齢者が大多数になり若者が少数派になれば、政治家は当選するために高齢者に有利、若者に不利な政策を決定する。
その結果、若者が子供が産めなくなるような環境になり国が徐々に衰退する危険性があると指摘。
それゆえに国家として永続するために、若者に不利にならないようなプログラム、を組み込んだアルゴリズムで決めてもらおうと、提言しています。
この意見は確かに興味深いものはあります。
高齢者を支えるために、これ以上現役世代から税金を取れば、経済は縮小し続け日本の未来はありません。
また成田氏は政治家の掲げた政策の目標達成率などで個別に点数をつけ評価するべきとも述べています。
この点においては自分も賛成です。
会社などでも普通に目標を設定させ、その到達度で評価したりするのは、今や当たり前です。
官僚や政治家にそういう仕組みがあっても良い感じはします。
ただ成田氏の言う、アルゴリズムで政策や選挙、を決定する仕組みには、やはり自分には賛成できません。
というのは、民意が必ずしも正しいとは限らないからです。
具体例として、選挙によって選ばれたナチスがその後ドイツにどのような運命をもたらしたか、を考えてみれば、民意が絶対正しいとは言えない時もある。
なので国民は選挙で先見性のある人物を選び、率いてもらわねばならないのです。
場合によっては、その時はあまりにも先を見すぎていて、国民の民意とは離れている政策が打ち出されることめあるかもしれません。
しかし政治家は国民に批判されようと断行しなければならない時もある。
それは、AIやアルゴリズムにはできないことです。
もちろん部分的には参考意見としてAIやアルゴリズムを使ってもよいでしょう。
しかし何もかもがプログラムや機械で決める世界は、何が違うし危ない感じがします。
人間の主体性を奪っていく世界は幸福からは程遠い。
幸福という言葉が、AIやアルゴリズムとは対極に位置する…自分はそのように感じられてなりません。
そしてやはり最後に残るのは、どのようして優秀な政治家を選ぶか?です。
それはやはり国民一人一人の民度を上げるしかないと思います。
自ら学び、何が善悪であるかを知り、空気に左右されない意見を持つ…そのような人々が増えないかぎり、いかなる政治システムも正しく機能しないでしょう。
今回描いたイラストは仙人です。
山の高みから俯瞰する視野を持ちたいものです