治療が難しい10代女子アスリートの骨量減少/産婦人科医が語る

 

聖路加国際病院の百枝幹雄副院長(産婦人科医)が、「世界摂食障害アクションデイ2018」で、「10代の時期にいかにエネルギー不足を防ぐかが、一生を考えて非常に重要なことだ」と力説されました。

以下は、その時に百枝幹雄副院長の演説されたお話を簡単にまとめたものです。

女性アスリートの健康上の問題をテーマにしていますが、アスリートに限らず、特に思春期(10代)の女性とその親御さんは是非知っておいてほしい情報です。

 

女性アスリートの三主徴「無月経」「骨粗しょう症」、そして、摂食障害予備軍の「利用可能エネルギーの不足(LEA=Low energy availability)」は、継続的な激しい運動トレーニングが誘因となり、それぞれの発症が相互に関連している。

 

 

LEA(利用可能エネルギーの不足)は、使っているエネルギーを食事で十分に補えていない状態のこと。2007年までは、この状態のことを「摂食障害」としていたが、予備軍の存在も無視できないことから、このような分類となった。

 

●無月経

食事制限、体重管理や激しいトレーニングなどで心身に大きな負荷がかかると、運動を原因とした「運動性無月経」になりやすい。女性アスリートに多く見られる症状。特に、「見られる、見せる」競技(体操や新体操、フィギュアスケートなど)に多い。

 

●骨粗鬆症

骨密度(骨の強度)が低下し、骨折しやすくなる病気。古い骨を溶かし、新しい骨を作るバランスのとれた骨代謝には、エストロゲンという女性ホルモンが深く関係している。

エストロゲンが低下する閉経後には骨量も急激に低下し、骨粗しょう症のリスクが高くなる。

強い骨を作らなければならない10代に無月経になってしまうと、エストロゲンが十分に分泌されず、骨がスカスカになり、疲労骨折の引き金になる。最大骨量獲得時期に、そのピークを十分に上げることができず、女性として必要な骨密度が得られなくなる。

 

要するに、骨を作る大切な時期(10代)に無月経になってしまうと、その後も十分な骨密度を得られなくなってしまうということ。若いのに、老人と同じような問題(疲労骨折、複雑骨折)が増えてしまう。

 

●無月経の治療

ホルモン療法ではなく、「エネルギー不足の改善」を優先している。

摂取エネルギー量(食事量)と消費エネルギー量(運動量)のバランスを正常化させ、自前のエストロゲンを出す方針を立てる。

ホルモン療法(エストロゲン投与)をすれば骨粗しょう症を予防できることは分かっているが、これから骨が作られる思春期の女性に投与していいのか、明確なエビデンス(医学的な根拠)がない。

 

無月経は、即効性のある治療法がなく、治療自体が難しい。その理由は、下記の通り。

*体重増を拒否する子がおり、思うように治療が進まない。

*アメリカでは、食事改善などを1年実施しても月経が再開しない16歳以上の選手にのみ、ホルモン療法を行っても良いとのガイドラインを設けているが、国内では同意が得られていない。

*中高年で有効とされる骨を強くする薬もあるが、若い女性への安全性は確保されていない。

 

以上です。