前回のブログでもお話しさせていただきましたが過日、京都四条河原町にございます老舗料理屋・京料理ちもと様にて 吉澤暁子きもの着付け教室 2025年の新年会を開催させていただきました。



大阪、京都教室の皆様はもとより、東京教室、岡山教室からも約30名の方がお着物姿でお集まりくださいました。


お楽しみの一つとしてドレスコードを〈縁起物〉とテーマを設けておりしたが、皆さんそれぞれに趣向を凝らして考えてきてくださって、それぞれに素敵な着姿でした。



そして私は本年の新年会へは振袖を着て参加してまいりました。


今日は私が新年会に振袖を着て皆さまをお迎えした理由をお話しさせてください。







宝尽くしのグレーの色留袖を用意していた私が、今回お振袖を着て新年会に参加しようと思ったのは年明けに開催された栗山工房さんの〈大人の振袖撮影会〉に着付けで呼んでいただいた時の事がきっかけの一つでした。


今年の新年会は教室にとっても私にとっても、いつもと違う特別な意味のある会でした。


〈吉澤暁子きもの着付け教室〉の創立者であり、みんなの先生であり、師匠である吉澤が他界し、昨年は弔意をもって新年会を開催せず静かに新しい年を迎えました。


本年は2年振りということと、吉澤がいないはじめての教室の新年会ということで、晴れやかな気持ちだけでは臨むことができず胸中複雑な想いでおりました。


お生徒様やお集まりくださるお弟子様には一年のはじまりの晴れやかな気持ちで集っていただきたいし、教室の代表として前に立たせていただくこととなるので、きちんとした正装でお迎えしようということは決めて準備をしていました。


けれど私は、心変わりをしてお振袖を着て行く事となりました。


年が明け、成人式も終わった次の週、京都で和染紅型の工房を構えていらっしゃる栗山工房の西田裕子さんが発起人となっておよそ10名の方が思い思いのお振袖姿でスタジオにてプロのヘアメイク、プロの着付け師による着付け、そしてプロのカメラマンによるスタジオ撮影で振袖姿の写真を残される〈大人の振袖撮影会〉を開催されました。


教室に声をかけていただき、着付け師数名とアシスタントとで当日お支度をさせていただきました。


事前にお振袖を見せていただいたり、スタイリングのご相談に乗らせていただき、小物や帯などを合わせさせていただいたりとそれもとても楽しい時間でした。


私の勝手な気持ちですが、吉澤がやりたがっていたことでもあり、その想いも汲み取って西田さんがYouTubeの動画の中でその事にも触れてくださった事で、私たちの気持ちも昇華してもらえた事は感謝というだけには余りある気持ちでいます。


そして撮影に参加された皆さんが本当に楽しそうでキラキラしていて、着物を着ること振袖を身に纏うこと、装うこと、自分以外の他のみんなの装いを見る事も楽しまれていて、その日1日を楽しむためにいっぱい考えて準備されていて、それも楽しまれていて、終わったあともお写真選びも楽しそうで、次に何をしようか、またすぐに相談されているのも楽しそうで、振袖との思い出を思い出してお話ししてくださるのも、その話に皆んなで一喜一憂しながら共に過ごされる様子も全てが愛おしい時間でした。


そして、私も「振袖が着たいな!」心からそう思いました。


そんな皆さんの様子を見ていて、私はプライベートで着物を着ることがとても少なくなって、着物を着ることも仕事の一部のようになってしまっているかもしれない。そんな風に感じました。


私自身がここまで楽しんで着物を着ていないのに、「着物は楽しいからみんな着物着ましょう!」なんて言えないな。そういう反省もありました。


そこまで思わせてもらえたのは、他のどんな着物でもなく〈振袖〉こそのチカラでもあったように思います。








私は振袖が大好きだし、振袖の魅力というのは、着物の良いところ好きなところがもれなく全部しかもたっぷり詰まっているところだと思っています。


特別感も豪華さも華やかさもエレガントもキュートも、もれなくすべてことごとくたっぷりと。


成人式のお嬢様方に振袖をお着付けすることも大好きです。


とはいえ、それを大人になった女性が着る時、仮装のようになってしまうのは着物をファッションとしてだけではなく、着物文化としても大切にしていきたいと思っている身として、それは本意ではないのです。


よく「着物はルールが難しく厳しい」と思われていてそう言われることが多いのです。


着物だって衣服でありファッションとして楽しんだらいいのだから、好き勝手に着ればいいじゃない!というのとも私の考えは少し違っています。


それがお洋服であれ、着物であれなんであれ、ファッションもそのシーンによりルールが難しい場合とそうでない場合がわかれていると思っています。


教室でもよく例にあげてお話ししますが、だったらノーベル賞の授賞式に洋装で出席しないといけないシチュエーションになった場合、何着ていっていいかわかりますか?カンヌ映画祭に呼ばれたらどうしましょうか?


テレビなどで見る限り男性は燕尾服ですよね。

では女性は?ドレスです?よね?

袖は付いてていい?半袖?長袖?

長袖のドレスとかある?寒いけど?ジャケット?スーツじゃおかしいの?

靴はヒールがないと正装じゃないですか?靴脱ぎますけど、ドレスに靴下履きますか?アクセサリーは?


一方で、お友達とカフェに行くのですが、この着物着てもいいですか?

それについては「何でも好きなの着ていいよ」です。


こうなるともはや着物だから難しいのではなく、フォーマルな場でのマナーを知っているか知らないかの違い、守るか守らないかはお相手を慮ることができるかどうかだと思っています。


とは言え、着物のほうが知らない事が多い方が多いのが現状なのでそんな時、着付け講師だったり着付け師である我々がお困りの方のお役に立てるように勉強しておかなければなりません。


今回の新年会の事で言えば、自分自身が主宰で「好きな装いできてください」というドレスコードでお伝えしており、正式な式典の類ではないので、基本的には何を着て参加をしてもOK。


お稽古事の年の最初のご挨拶という点を考えればどちらかというとカジュアルすぎない装い(Tシャツにジーンズではちょっとちがうかなの感覚)の方が場に相応しい。


私の立場としては会の主宰側で先生であり、お忙しい中お集まりくださる皆さんをお迎えするので、敬意を示すためにもかしこまったキチンとした正装でという気持ち。


振袖は未婚女性の第一礼装であり、私はその条件に当てはまるのでルールを外してはいません。


そうでなければならない。というルールではなく、私がそうしたい!と思ったから。です。


華やかな中にも大人の落ち着いた雰囲気も演出したいという思いから、黒留袖によせて黒色の振袖を選び、色数の少ない金色地に松の柄の袋帯を二重太鼓に結び、小物はフォーマル用で全体の格が上がるようにシンプルではあるけれど私の中ではここ1番とばかりに全て和小物さくらさんで新調した新年会用のものばかりで装いました。





自分が楽しむ為でもありますが、皆さんをきちんとお迎えしたいという気持ちと、私の装いも目で楽しんでいただきたいというおもてなしの心を込めたつもりでおります。


悪ふざけのように写ってガッカリされる方がいたり、失礼にあたると感じら方もいるかもしれない。と少し悩みましたが、雨予報だったのに当日スッキリ晴れた空を見て、ふと「自分のやりたい事をやってほしい」とおっしゃってくださっていた師匠の言葉を思い出して背中を押してもらいました。


お守りがわりに吉澤印の雪輪の末廣を胸にさして、こうして皆さまの前に立たせていただきました。







そんな想いを込めた私なりの渾身の大久保の今年の新年会コーディネートは以下の通りとなります。


-- お振袖 --

アンティーク/吉澤暁子collection(La soie 〈ラ ソワ〉所蔵)

-- 帯 --

袋帯/吉澤暁子collection(La soie 〈ラ ソワ〉所蔵)


-- 帯締 帯揚 草履 --/和小物さくら さん

-- 半衿 --/ワタマサ さん

-- 髪飾り --/おはりばこ さん

-- 末広 --/大西常商店 さん(吉澤暁子きもの着付け教室オリジナル)

-- 足袋 --/ゑびす足袋本舗  さん



長々となりましたが最後に我らの師匠の残した言葉を一つ

〈着物を着るということは知性を身に纏うということ〉


吉澤暁子きもの着付け教室では、ご自身が着物を着て楽しむ事の大切さもですが、そしてそこにお相手への想いを乗せる事の素敵さも同じように皆さまと共有していける教室づくりをしていきたいと思っております。


皆さま何卒本年もよろしくお願い致します。


吉澤暁子きもの着付け教室

大久保縁


#吉澤暁子きもの着付け教室

#吉澤暁子きもの着付け教室新年会2025 

#吉澤collection

#大人の振袖

#振袖コーデ