■書評■ 実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ
『本は10冊同時に読め』の著書を持ち、多読家として知られる成毛眞さんが、ご自身の読書術を余すところなく紹介してくれている非常に読み応えのある一冊。
成毛さんは同書で「適切な本を選んで多読を心がける、そして並列に読む」ということを書いていらっしゃったのだが、そうした多読並列の読書は中心に置くべき本を間違えると効果がなくなってしまう。
そのため本書では「そもそもどんな本を読めばいいのだろうか?」という内容を伝えてくれるものになっている。
それ自体、いろいろと考えさせられ、参考にさせていただきたい箇所が多い内容ではある。
しかし、それはまた別の機会に譲らせていただき、今回は多読家として以外に、書評家としても知られる成毛さんが第4章としてまとめられた「書評の技術」がドツボだったので、そちらを紹介しながらまとめておきたい。
数多ある「書評ブログ」の中の小さな一つを運営している身として、非常に参考になる内容だ。
※ただし、成毛さん自身は「プロの書評家」とは明確にご自身を区別されている点に留意されたい。
まずは、こうした自分自身の基本スタンスを確認しておきたい。
僕は、元々は「せっかく読んだ本はアウトプットを通じて少しでも血肉にすべし」と思ってブログをはじめたのだが、今では成毛さんとほぼ同じスタンスで書評を書こうという考えに変わっている。
自分自身のアウトプットだけのためならブログである必要はあまりなくて、ノートにでも書いておけばそれで十分だと思ったのが一番の理由だが、ブログに書くということは他人に見られることを前提とするわけだから、見る方に少しでも役に立つ方がいいに決まっているだろうと思ったということもある。
(これは、よほどの面白系でもない限り赤の他人の日記ブログを見るようなことがないのに通ずると思っている。)
ITジャーナリストの佐々木俊尚さんがこうしたスタンスの書評家を"キュレーター"と言ったそうだ。
キュレーターというのは、wikiによれば、もともとは欧米における博物館等における館の運営責任などまで負うような展示・紹介などのプロフェッショナルのことらしい。
成毛さんは本書の中で「専門家ではあるが、評論家ではなく、推薦人」と書いている。
確かに、自らのお勧めを書評という方でブログという博物館・図書館に自らのセレクトにおいて陳列するという捉え方をすればその通りだ。
この言葉、気に入ったなあ… あまり名乗っている人もいないようだから、いっそ名乗ってしまおうか(笑)
質のいい展示棚を創りあげていきたいものだ。
ちょっとだけ違うのは献本いただいた本かな。
成毛さんはこの点については特に触れていないけれど、僕自身は今のところいただき過ぎて困るなんて状態にはほど遠いので、「読んで感想を聞かせてほしい」という趣旨で献本いただいたものについては極力紹介するようにしている。
ただ、献本いただいた本が「お勧めしたい」と思えるようなものであればいいが、残念ながら僕にとってはそうでなかった場合でも、書き方に苦慮する面はあるけれど、できる限り誠意をもって対応はさせていただいているつもり。
これは他の書評ブロガーの方々を見ていても、献本自体を受け付けていない方もいらっしゃるし、スタンスはそれぞれ。
僕はひそかに「献本いただけるような書評ブロガーになりたい」というマイルストーンを置いていたので、ご提案はありがたくお受けしているけど。
あんまり増えると「お勧めしたい」と自分が思った本の書評を書く時間がなくなるという事態にもなりかねないので、そうなったら改めて考えなければいけない問題だなとは思う。
これはあくまでも成毛さんご自身の心構えだが、参考にさせていただきたい内容だ。
先のキュレーターという意識を持つのであれば、読む本を増やして、その中からベストなものを自信をもって陳列したいという気概になる。
そう考えると第一の点は至極納得がいく。
第二の点については、僕のブログの読者層が正確にわかっているわけではないけれど、メインターゲットを若手ビジネスパーソンに置いているし、僕自身も過去の名著に学ぶところが大きい現状がある以上、そうしたものもベストだと思えば棚に並べていきたい。
この辺は、成毛さんとの読書経験の圧倒的な差があるので、右に倣えで真似てしまえるところではないなと思う。
ただ、以前から思っていたことだが、他の大御所などがひとしきり紹介してしまっているような書籍を僕があらためて紹介することに、どんな付加価値があるのか…という悩みはあるので、まだ大勢の方が紹介する前の新しいものを紹介したほうがニーズは高いだろうなとも思う。
第三の点は、個人的な好みの問題もあって意識的にシンプルにしているので、まあそうかなと。
第四の点も、キュレーターとしての志向として、同じジャンルを集めて紹介したいという企画展もあるだろうし、個人的にはそれぞれのいいところを紹介するという形で紹介していきたいと思う。
セカンドベストにまで手を伸ばすというのではないけれど、ベストを一つに絞りきることも経験の積み重ねが成せる技だということを、書評を書き続けるようになって実感しているところだし。
最近、少しだけこの感覚に近い形で取り組んでいる。
何十倍とはいえないけれど、ブログで書評を書いている本は、読んだ本の中の何分の一かの量だ。
自分の中で紹介したい度合いで順序をつけて書評を書いている。
ただ、紹介したいとは思うけれど、書けない本があったりもするのだが…。
それは成毛さんでもそうらしい。
成毛さんほどの方でも消化しきれないような本があるということに安心感。
実は、山ほど紹介したい本があるのだけれど、どう書評に落とし込んだらいいのか分からなくて手付かずになってしまっている本がいっぱいあるのだ。
ほんの少しでも僕のブログを見に来てくれている方々がいるということを考えると、力量不足を申し訳ないなあとは思う。
工芸品を作る職人さんの世界と同じように、続けていきながら、自分の中に消化していける本を増やし、コツコツと「作品」を創りあげるよう精進していくしかないらしい。
もちろん、成毛さんのスタンスが絶対ではない。
しかし、自分自身のスタンスを認識していなければ、キュレーターにも職人にもなれやしない。
他人に読ませる「書評」を書いていこうと思うブロガーなら必読として推しておく。
■ 関連リンク
著者ブログ: 成毛眞ブログ
■ 基礎データ
著者: 成毛眞
出版社: 角川書店(角川oneテーマ21) 2010年7月
ページ数: 188頁
紹介文:
読書をしない人間に成功などありえない。しかも本は多く読めば読むほどいい。たくさんの本を同時に読みながら、独自の視点や広い視野を獲得するための手法や、書評の技術も紹介した超実践多読術。
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