■書評■ ゲーム理論の思考法
ゲーム理論という学問に初めて触れたのは、大学2年生のときだった。
当時の僕は「なんて面白いんだ!」と軽く興奮し、出席しない授業の方が圧倒的に多かった学生生活の中にあって、これは出席しなければと思ったものだ。
当時使っていた教科書が『経済学のためのゲーム理論入門』だったはずなんだけど、Amazonの情報によれば1995年7月刊となっているから、出版されてすぐだったんだな…と今更ながらに思う。
当時はそんなことを気にかけたこともなかった。
まあ、「面白い!」と思ったことが「分かる」ようになるかどうかはまた別の話で、習ったはずのことのほとんどは、今や忘却の彼方へと旅立ってしまったようだけれど。
さて、そんな僕と一緒にまずはゲーム理論とは何かというところからおさらい。
こんな理論は、ビジネスパーソンが学んでおくべき価値が高いと思うし、実際に学ばれている。
そして、知っていると知らないとでは大きな差がつくことになるものでもある。
著者の川西さんは、こう書いている。
「ある程度ゲーム理論を理解している人は、突発的な行動を起こす前に、自分と相手の選択肢を吟味し、ゲームの構造を把握しようとします。(p.29)」
僕も意識する場合もしない場合もあるけれど、振り返ってみればゲーム理論のフレームワークを用いて考えていると言える。
記憶自体は忘却の彼方に消え去っても、理解し身についたことというのは活かせるのだなと実感する瞬間だ。
さて、そもそもゲーム理論には、大きく分けて次のような3つの目的があるという。
この3つの目的って、実は企画を考えたり、事業戦略を考える上では当たり前のように考えなくてはいけないこと。
そんな視点に立てば、ゲーム理論がいかに僕らビジネスパーソンにとって必須な知識であるかが分かってくるのではないだろうか。
例えば、本書で挙げられている例を紹介してみよう。
こういう状況において、ゲーム理論の方法を用いれば、起こりえる結果をシミュレーションすることができるというわけ。
(こういう状況をシミュレーションする機会がそれほど多くの人に頻繁に起こるわけではないだろうけれど…)
ただし、起こりえる結果において、意思決定主体(この場合はA工場とB工場)が得られる利得がどの程度のものかということを主観的に設定せざるをえず、ここが間違うとシミュレーション結果が間違うのだが。
本書では有名な「囚人のジレンマ」から「コーディネーション・ゲーム」「チキンゲーム」「ホテリング・ゲーム」「ダイナミック・ゲーム」などを簡単に紹介し、僕らの思考のフレームワークを形作ってくれる。
こうしたフレームワークは多くの型を自分の中にストックし、現実の事象を見た時に「あっ、これはあの「ゲーム」のフレームワークに当てはめて考えられるケースだな」と引き出せるようになっておくことが大切。
著者の川西さんが書いている通り、経済分野の専門家を目指すのでなければ、ゲーム理論に関するむずかしい専門書を読む必要なんてなくて、理論の基礎と、実生活への活かし方を本書で学べば十分である。
特に、問題解決能力を高めたいと思う人で、ゲーム理論を学んだことがない方には是非お読みいただきたい一冊。
また、僕のように学んだ内容が消し飛んでしまっている人にも、必要十分な基本を簡単に学び直せる本として推奨させていただきたい。
なお、本書の最後では行動経済学とも関連付けられて話が展開されているので、併せて『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』も読まれると尚よし。
(当該章のタイトルが「人間は「不合理」に動く 感情+ゲーム理論」とされていることは、本書を意識してのことではないかと推測しているのだが…)
※参考: 【書評】予想どおりに不合理
■ 関連リンク
川西諭のホームページ
■ 基礎データ
著者: 川西諭
出版社: 中経出版 2009年9月
ページ数: 255頁
紹介文:
「上司と部下の人間関係」、「企業間での競争」、「政治のかけひき」。ゲーム理論では、あらゆる問題をひとつの「ゲーム」ととらえます。
起こっている問題がどのような構造になっていて、どんなルールに支配されているかを考える際、その全体像を「ゲーム」と呼んでいるのです。
あらゆる問題を「ゲーム」として見ることができれば、「ゲームの構造(問題の本質)」を俯瞰的に見ることができ、より質の高い思考を行なうことができます。
本書の目的は、ゲーム理論の代表的なゲームを学びながら、その「戦略的思考」を身につけることにあります。
■ 他の方の書評記事
知識をチカラに:
『ゲーム理論の思考法』川西諭(著)
活かす読書:
ゲーム理論の思考法
