市場売上が減るのは花農家が減っているから | 宇田 明の『まだまだ言います』
新型コロナウイルスに関する情報について

宇田 明の『まだまだ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『まだまだ』発信します。

新型ウイルスは世界に拡大。
リーマンショック以上の世界大不況が予想されています。
花産業への影響ははかりしれない。
業界の苦悩は大きい。
まず生産者。
昨年秋の台風15号、19号などの被害。
暖冬で開花前進、物日の的を外す。
起死回生の3月が、思いもかけなかった新型ウイルスで大はずれ。
大きな傷、小さな傷を負った農家。
経営をあきらめる農家も多いだろう。
減りつづける花農家。
花屋さんもおなじ。


では花いちばはどうか?
新型ウイルスがなくても年々売上は落ちている。

20世紀末のピーク時から、40%減。

花産業のマーケットが40%も小さくなった。

2019年は推定で前年比マイナス2.2%。(図1)
いちば取扱高は消費税込みの金額。
10~12月の3か月は10%増税で、2%のゲタを履かせてもらっている。
3月末が決算の市場はもっと大きく落ちこむだろう。


図1 花市場取扱高の推移

    2019年3,392億円は東京都中央卸売市場データ等から宇田推定値

 

売上金額よりも利益率を重視する考え方もあるが、集荷、配送、荷取扱、コンピュータシステム維持などのコストがアッし、利益率は売上以上に悪化しているだろう。
では、苦悩の花いちば、どうすれば売上がアップするのか?

今回のお題は、「市場の売上が減っているのは花農家が減っているから」という真っ当なはなし。


図2は、花農家の数と、全国の花いちばの取扱高(売上)との相関図。
両者には強い相関(R2=0.9499;1に近いほど相関が大きい)があることがわかる。
その回帰式、
y=539.02x+738.47
yは、いちば取扱高、xは、花農家数
花農家数(x)が1戸減ると、いちば取扱高(y)は1,300万円減る計算。


図2 花農家数と市場取扱高の相関

    花農家数は農水省農林業センサス

 

逆に言うと、生産者が1戸減るのを食いとめると、いちば取扱高が1,300万円減るのを防げる。
数式を駆使すると、いかにも科学的に見えるが、年ごとの花農家数、いちば取扱高を打ちこむとエクセルが自動的に計算しただけ。
農家は、つくった切り花、鉢もの・苗ものは、ほぼすべていちばに出荷しているのだから、廃業して出荷をやめればいちば取扱高が減るのはあたりまえ。

生産サイドでは、新陳代謝がないので、新たな生産者が現れないので、1戸が止めるとそのまま出荷量が減る。
 

問題はその次。


では、花農家がアメリカのようにゼロになったら、花いちばの取扱高はどうなるか?(アメリカには花いちばはありませんが)
数式から、x=0で、y=738.47(億円)
花農家がゼロになると、市場取扱高は738億円になる。

市場取扱高はゼロにはならない。
これは国産が減ると、需給バランスをとろうとして輸入が増える。

ただし、いちばに入荷するのは738億円しかない。

多くは市場外流通。


2019年の市場取扱高は推定3,392億円だから、国産がゼロになると、いちばは現在の2割ほどの規模で営業することになる。

もはや、問屋のようなもの。

つまり、これ以上花農家が減ると、いちばの経営が成りたたなくなる。


対策はカンタン。
「既存生産者の維持+新たな産地開発」


 

これはまさに、花いちばの本務であり、過去の栄光の歴史そのもの。
日本の花生産をここまで作りあげたのは、国・都道府県、ましてや農協でもない。
花いちばがつくった。
現在のいちば経営者の先代、先々代のちから。
たとえば、淡路島の花づくり。

「兵庫県花卉園芸の沿革」1961年兵庫県花卉協会から以下引用。
「昭和初めの世界大恐慌の影響で、農村経済は疲弊。
東北では餓死者が出て、娘を売ることもあったという。
淡路島の若い農会技手(いまの農業改良普及員)は、1931年(昭和6年)12月に郷土の困窮を救うべく、関東の花産地先進地に視察に出かけた。
視察先は、静岡県浜松、芳川村、飯田村、神奈川県横浜市杉田町、房州保田、富浦、東京玉川温室村。
先進地視察で花づくりに将来性を見いだし、翌1932年(昭和7年)夏、3日間にわたり花卉栽培講習会を開いた。
講師には、神戸高級園芸市場の畑中宏之佑をむかえ、座学だけでなく、実地にも丁寧な指導を受けた。
園芸家は栽培技術を公開しないのがあたりまえの時代に、大々的な講習会を開くことは革新的な出来事であった。
淡路島に花の栽培技術を指導した畑中宏之佑は、森祐造のあとの兵庫県生花(梅田生花)の社長をつとめた故畑中隆博の父である。」

神戸高級園芸市場は現在のJF兵庫県生花(神戸花き・梅田生花・大植)の前身。
 

このように、戦前から戦後にわたり、いちばの担当者が全国に花の産地をつくり、自らが販売した。
今日の花生産の礎を築いたのは花いちばといって過言ではない。
それは、いまもかわりがない。


農林水産省、都道府県の農政の本流は稲・麦・大豆。
その本流を歩むひとたちは、産地を育成するのは行政しかないと思いこんでいる。
かれらは生産を振興するだけで、売ることは意識にない。
いまだに、稲や麦の生産・価格を国が管理した「食糧管理制度」から抜けだせていない。
それが行政主導でつくった花産地が成功しない原因。
花は自由主義経済・市場経済の申し子。
買い手がいて、生産がある。
それを用意するのがいちば。
行政・農協はいちばの力を借りなければ、産地を維持・育成できるない。
いちばも売上を維持、さらにはアップするには、行政とともに国内産地を維持・育成するしかない。
それが、いちばの役割であり、原点。


図 花産業の弱点

  従業員のモチベーションが低い

 

いちばが、本来の役割である産地育成の最大の問題点、

従業員のモチベーション低下。

売上ダウン→待遇ダウン→満足度ダウン→モチベーションダウン→売上ダウン→・・・


花産業の問題点は、すべてここに至る。
負の連鎖を断ち切るには、ひとへの投資しかない。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.219. 2020.3.22)


2015年以前のブログは

http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けます