物日の切り花貯蔵は株の取引ではなく安定供給 | 宇田 明の『まだまだ言います』

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宇田 明が『ウダウダ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『まだまだ』発信します。

前回は、

「物日が物日でありつづけるためには、生産者は、花屋さんがほしいときにほしい量を出荷しなければならない」でした。
そのためには、

生産者の開花調節技術の精度を高めることはもちろんですが、生産者の努力だけでは物日ぴったり開花は難しい。
業界あげての対策が不可欠です。
それは、
(1)貯蔵
(2)仏花・墓花の花材にはこだわらない

前回は、

(2)を取りあげました。

2019年9月1日「物日にはモノがあってコトが成りたつ」

https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12516519501.html

 

今回は(1)の貯蔵を考えます。

切り花貯蔵は、花産業にとって古くて新しい、永遠の課題です。
50年以上チャレンジしてきましたが、いまだに確立した技術はありません。

それはなぜか?

ボタンの掛けちがい。

今回のお題は、

切り花貯蔵のなにをまちがえていたのか?
令和新時代の貯蔵はどうあるべきかを考えます。


1.切り花貯蔵の目的をまちがえている
切り花貯蔵が失敗してもチャレンジを続けてこれたのは、人間には「欲」があるからです。
「欲」は経済活動の原点」。
欲があるからハイリスクにもチャレンジできる。
→物日には花が高い
→物日に多く出荷すれば大儲けできる
→物日ぴったり開花だけでは量が不安定
→安値の花を貯蔵しておいて、高値の物日に売る


これは経済の原則、市場経済の神髄。
すなわち、株で儲ける鉄則とおなじ。
「安値で買って高値で売る」
科学技術の世界ではなく、一か八かの勘と度胸の世界。


画像 切り花貯蔵の目的は株の取引ではない

    株の鉄則は「安値で買って高値で売る」

    「安い花を買って貯蔵し、物日の高値で売る」では貯蔵は闇の技術

    貯蔵の目的は「安定供給」

 

切り花貯蔵の目的は、

「物日の安定供給」。
物日に切り花が不足して、価格が高騰し、花屋さんや消費者に迷惑をかけ、花離れをおこさないための手段です。

なにもかも貯蔵する必要はありません。
物日需要に影響が大きい「輪ギク、小ギク、リンドウ」で十分。

 

 

2.貯蔵の技術的課題
(1)切り花は農産物であり、工業製品ではない
切り花は、

見かけは同じようだが、中身がバラバラ、

昨日切った花と今日切った花はまったく別物、

まして、春の花と秋の花はまったくちがう。
そのことは、

日もち検査室の室温は25℃、湿度、照明などは一定に保たれているが、日もち日数は検査のたびに異なることからも明か。
すなわち、

見かけは同じでも中身=貯蔵養分とカビ汚染程度が、収穫日ごとにちがう。
したがって、

実験のたびに結果が異なる。
切り花貯蔵とはそういうものだと割りきる。


(2)貯蔵した切り花にはどんな問題点があるのか?
出庫時と、消費者に届いてからの両面で問題が発生する。
①出庫時
・カビがはえている
・葉が黄色くなっている
・外観的にフレッシュさがない
②消費者段階
・つぼみが開かない

・葉がすぐに黄色くなり、枯れる
・日もちが短い


(2)貯蔵の成否はリスクの大きさで検証
中身がバラバラの切り花を貯蔵するのだから、

成功することもあれば、失敗することもある、成否もバラバラになる。


貯蔵とはそういうものだと割りきり、

出庫後の成否の調べかたをかえてみよう。

 

現状は、

出庫後のカビ発生率や日もちの平均値を比べて、貯蔵方法(冷蔵温度、冷蔵日数など)の良し悪しを判断。
カビの発生率が10%だから成功で、50%だから失敗ではない。
カビは発生したらすべてアウト。


貯蔵をくりかえしていると、

なにも特別なことはしていないのに、フレッシュな切り花と遜色がないことがある。
反対に、

さまざまな前処理を加え、エチレンをカットしても、カビが大発生することもある。
これが現実。


実際場面の貯蔵の成否はリスクの大きさで判断する。
10回貯蔵して10回とも失敗するか、5回が失敗か、1回だけか。
失敗が限りなくゼロに近づくように、貯蔵条件をかえていく。


貯蔵そのものとしては、貯蔵温度×日数。
加えるに、

冷蔵庫環境(湿度、炭酸ガス濃度、殺菌など)。
貯蔵前の切り花処理(前処理、糖など)とカビ対策(切り花を直接殺菌など)。
貯蔵切り花の選択(品種、産地、生産者など)。

画像 切り花貯蔵の成否は平均値の比較ではなく、

    リスク管理。

    リスクが限りなく0になるように技術を組み立てる

 

(3)貯蔵は、出荷ケースごと貯蔵する「乾式貯蔵」。
切り花栄養剤を入れた容器に切り花をたてて貯蔵する「湿式貯蔵」は効果があるが、コストがかかる。
大規模な貯蔵には適さない。


3.だれが貯蔵を担当するのか?
花産業で、

大規模に貯蔵ができて、さまざまな試験ができて、リスクをとれるのは量販しかない。
専門店は、

フレッシュ、高鮮度をウリにして、貯蔵には手をださないほうがよい。
市場、仲卸はマンパワーが不足。
社員の疲労からくる人為的ミスで大やけどをする。
生産者、産地は、

物日ぴったり開花の精度向上につとめるのが与えられた役割。

4.冷蔵庫はあるのか?

物日前に冷蔵庫がなければ貯蔵はできない。
量販の手持ち冷蔵庫は日常の切り花保管で満杯。
物日用切り花を貯蔵する余裕はないだろう。
物日には、冷蔵庫業者の冷蔵庫を借りるか、船舶用冷蔵コンテナをレンタルすればよい。

船舶用冷蔵コンテナはすぐれものである。

画像 レンタルのリーファアコンテナ

 

今回は、

貯蔵の考え方を述べるにとどめ、冷蔵温度や冷蔵日数とリスクの関係、冷蔵前の前処理など技術的課題はスルーしました。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.191 2019.9.8)


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