爺さんの財布 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

母の日お疲れ様でした。
「遅れてごめんね」もよろしくお願いします。

今回のお題も爺さん。

前回。
60歳以上の年寄り、老人は29歳以下の10倍弱も切り花を買っている。
29歳以下1,400円、1千4百円!。
60歳以上 13,000円、1万3千円!。
(世帯(2人以上世帯)年間切り花購入額 総務省家計調査2014)
「年寄りを大事にせい」(2016.5.1)
http://ameblo.jp/awaji-u/entry-12155746321.html

将来のことを考え、若者に花に親しんでもらうことは大切。
しかし、
今日で廃業しようか、明日までがんばろうかを思案している地方の花屋さん、農家には先のことを考える猶予はない。
今日をどう生きぬくか。

それには目の前にいるお客さまを大事にする。
それは年寄り、老人、シニア、爺さん婆さん・・。

幸いなことに、年をとると花(鉢もの・花壇苗を含めて)を買うようになるのは日本人の性(さが)。
さらに幸いなことに、地方には年寄りしかいない。


図1 年齢別切り花購入額の2000年、2014年比較

図1は2000年と2014年の世帯主年代別の世帯あたり切り花購入額。
(家計調査で年齢別切り花購入額がわかるのは2000年から)

全年代平均の購入額、
2000年の11,551円が、2014年には9,707円と16%減少。
しかし、年代別の購入傾向はまったく同じ。
若者は少なく、年寄り、老人は多い。
時代が変われど老人は強し。

切り花購入額は、全年代、同じように減ったわけではない。
年齢に反比例(図1の折れ線グラフ)。
若いほど大きく減らし、年寄り、老人は減り方が小さい。
29歳以下の減少率58%に対して、60歳代は17%、70歳以上は9%。

つまり、
一生懸命活動している花育にはいまだに成果がみえないが、
なにも対策をしていない老人は、けなげにも切り花を買い続けている。

なぜか?

切り花購入額は消費支出に連動。
景気が悪くなり、収入が減ると、当然支出も減る。
消費支出が減ると、切り花購入額も減る。
新春の定番「どうなる?今年の○○」(2016.1.6)
http://ameblo.jp/awaji-u/entry-12115807721.html


年代別消費支出を2000年と2014年を比較(図2)。


図2 年代別消費支出額 2000年と2014年比較

2000年の消費支出 月額31.7万円が2014年には29.1万円、
8%減った。
ところが60歳代は1%減っただけ、
70歳以上はまったく同じ。

つまり、
年寄り、老人は現役世代より収入、支出は少ないが、
景気の影響が少なく、安定。
さらに、もともと生活に必要なものしか買っていない。
老人には、仏花、墓花、家庭用の花は生活必需品。

結論
老人が地方の花産業を支えている。

その老人たちがないがしろにされている。
店員に無視されている(というヒガミ)。
年寄りはおだてられるともっと花を買う。
政府のおだてにはうさんくささを感じているから、
財布のひもはきつくしめる。

総務省家計調査は2人以上の世帯あたりの切り花購入額。
年齢は世帯主(たいがいは男性)だが、
切り花を買っているのは女性、婆さん。

男性、爺さんは花など買いに行かない。
買い物自体しない。

だから、
もっとものびしろが大きいのは
若者世代ではなく、爺さん世代。

仏花、家庭の花は婆さんが固定客。
爺さんは、
記念日の花、孫のイベント用の花、お見舞いの花、プレゼントの花・・
購入予備軍。

しかし、爺さん、お客としては手強い。

若者は学生生活から社会人になって日が浅い。
人生経験が乏しいので、画一的、十把一絡げ(じゅっぱ ひとからげ)。
つまりみんな一緒。
猛暑の最中(さなか)、リクルートスーツの異様な集団を見よ。
よい子、坊ちゃん、嬢ちゃんの整然とした入社式を見よ。
それにひきかえ、
いまだに卒業式で日の丸、君が代を拒否する年輩教師がいる爺さん予備軍。

画像 こんなスーツで面接にいく学生はいないのか
   矢沢永吉 66歳


年寄りは学校卒業後、40年以上にわたり、それぞれの社会で生き抜く、
さまざまな人生を歩んできた。

若者はひとくくりにできるが、
爺さんはひとくくりになんてできない。
若者世代の年齢差は10歳そこそこ、
能力的、肉体的なちがいは小さい。

爺さん世代は60歳から85歳(一応ここまでが購入世代)まで年齢差は25歳。
能力的、肉体的なちがいは大きい。
25歳の年齢差は親子に相当。
同じ時代の空気を共有していない。
ひとくくりになんてできない。

ではどうするのか?

共通点はある。

①老人だからといって好好爺(こうこうや)ばかりではない。
波平さんのような爺さんはいない。
爺さんはキレやすい。
社会の荒波で自分を殺し、さんざん苦労してきた。
いまさらガマンなんかしない。


画像 波平さんは54歳らしい。爺さんではない。
   いまの時代なら若者。


②花屋からは「年寄り入店禁止光線」がでている。
店員の冷たい目光線で、命が縮む。
要領よく欲しい商品を注文できない。
さぞ痴呆老人と思われていることだろう。

③痴呆老人予備軍には花の買い方がわからない。
・ケーキ屋のように、アレとコレとソレを下さいと指さすのだろうか?
その場合、包装代はどうなるのだろうか?
めんどくさがれないか?

・孫のピアノの発表会の花束をくださいとたのむのだろうか?
そんな個人情報を店員に明かしたくない。
店員からあれこれ聞かれるのはごめん。

・3,000円の花束をくださいと値段で注文するのだろうか?
高慢ちきそうな店員に、
「お客さま、お店をおまちがいでは?」
「当店では1万円以下の花束は承っておりません」と
すげなくあしらわれ、すごすご退散するのか。

④老人は待たされるのをガマンできない。
花屋はなにごとにもスロー。
レジに客をならばせることが、ステータスか。
先客が一人いると、店員はそっちにかかりきり。
いつまでたっても目もあわせない。
人事を担当したこともある爺さんは、
要領の悪い店員にイライラ。
そんな店員しか雇えない経営者につきあっていられない。
さっさと店を出る。

⑤爺さんは「早飯、早○○、男のたしなみ」がモットー。
スピード重視、効率重視。
自分はもたもたしているが・・。
店に入って、見て、買って、払って、出る。
店員にべたべたまとわりつかれるのはいやだけど、
無視されるのはもっといや。

⑥洋服に、
オダーメード、イージーオーダー、既製服があるように、
花にもいろいろな売り方、買い方がある。

キレやすい爺さんには、
花屋の無愛想なおやじ、おしゃべりな嫁、ふくれっつらの店員に腹をたてずにすむスーパーの置き花がよい。

もうすこし高級感があればなおさらよし。
しかし、花束を持って食品レジにならぶなんてまっぴら。

そんな客はうちの店には来るなといわれそう。
今回も人生幸朗でした。チャンチャン。


画像 人生幸朗・生恵幸子「ぼやき漫才」
   「なにぼやいてるねん!このどろ亀!」



画像 遅れてごめんね

「宇田明の『まだまだ言います』」(No.19 2016. 5.8)

以前のブログは
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