ゆうれいみたり(前編2)

(前篇1より)

「なんだぁ? みんな、ワシが恐いことに出会うことがそんなに変かのお?」
 1人カカンバーだけがのんびりとそう言う。その言葉にみなごくりとつばを飲み込むとカカンバーの方を向いた。
「いや、ちょっと驚いただけで、別に変じゃないよ」
 ウェインの言葉にみなウンウンと頷いた。恐いが聞いてみたいという好奇心に勝てなかったのである。
「そうかぁ? じゃあ、話してええかのう?」
「も、もちろん」
 少し震えたキキの言葉が合図となった。
「この間この第三教導中隊であった話なんだけどなぁ」
 カカンバーはそこまで言ってからちょっと妙な表情をした。
「ワシが公爵に変な気に入られ方をしとるのはみんな知っているかのぉ?」
 その言葉に誰もが首を傾げたあと、こっくりと頷く。
 ガチムチホモが好きなシュテファン公爵はこの第三教導中隊に突然現れては、カカンバーと料理長の親方を追いかけ回している。もちろん二人とも公爵の趣味には興味がないのでいつも丁重にお断りしている。が、すでにあしらい方を知っている親方と違って、素直で純朴で呑気なところがあるカカンバーは、知らずに巻き込まれてしまうことも多々あった。
「そんならええんやけど、この間ワシ、この三教の見回りの番やったんやのう。珍しく公爵さんが邪魔しに来なかったからその晩は1人で見回るいうてエルシトリンさんとは別れて見回ったんや」
「カカンバーが見回り当番というと一週間ぐらい前か?」
 隊員のスケジュールが頭に入っているのか、アルノーが余計なことを思い出す。
「ゲ、かなり最近の話じゃないか?」
 案の定ウェインの顔が青ざめる。
「こりゃぁ、トリにふさわしい盛り上がり方やで?」
 ブレンダが冗談めかして言ってみたものの、
「やだ! これ以上聞くの恐い!」
 シェーンはギュッと一也にしがみついた。しがみつかれた一也の方も青い顔をしてシンシアの方を見る。
「この世界の幽霊は魔法とかで何とかなるんだよね?」
 聞かれたシンシアは困ったように肩をすくめる。
「それが、私もあったことがないから分からないんだよねぇ」
「竜術でなんとか……ってわけにいかないかな?」
 キキの質問にも
「さぁ、なんとも?」
 首を傾げるばかりのシンシアにみな背筋を寒くしながら顔を見合わせた。
「ど、どうする?」
「このまま続ける?」
 そう疑問形で聞いてみるが、どの顔にも続きを聞きたいという気持ちが色濃くでていた。
「カカンバーの話が本当なら調べてみる必要もあると思う」
 この中で一番の常識派であるアルノーですらこう言い出す始末だ。
 アルノーの言葉に勇気づけられたようにみなカカンバーの方を向いた。
「それで?」
「ん、それでなぁ」
 カカンバーは話の深刻さと反比例にあくまでのんびりと話を続ける。
「見回りの間、どうも誰かに見られている気がするんじゃ。誰だろうと思って振り返ってみたんだけど、誰もそこにはおらん。おかしいからエルシトリンさんに聞いてみたんだけど、彼女は何も感じなかったと言うんだのう」
「そ、それで?」
 すでにみな、カカンバーののんびりとした口調が気にならなくなっている。しんと静まりかえり、カカンバーの話に一心に耳を傾けていた。
「それでなぁ、ワシの気のせいじゃないかということになって、その晩のワシの見回りは終わったんだのう」
 カカンバーのその言葉にシェーンはほうっと安堵のため息をつく。だが、
「で、ワシがベッドに入ってうとうとしかけた時じゃ」
 カカンバーの話には続きがあった。
「気が付くと体が動かんのじゃ」
「金縛りだ!」
「カナシバリ?」
 一也の言葉にシェーンが首を傾げる。だがしーっと静かにするようにキキにたしなめられ、二人は慌てて口をつぐんだ。
「腕を動かそうとしても、体をひねろうとしても強い力で体が締め付けられてちぃ~とも動かん。しかも首筋に生暖かい息がかかってきたんじゃ。ワシはこわ~て、こわ~て。もう、身が縮むかと思った。だけどのぉ、勇気を振り絞って力の限り暴れてみたんじゃ」
 誰知らずゴクリとつばを飲み込む音がする。
「そこには……」
「そこには?」
 カカンバーはみなの顔を見回した。みな真剣な顔つきでカカンバーの話に耳を澄ませている。カカンバーはわずかに首を傾げて最後の言葉を紡いだ。
「公爵さんがいたんじゃ」
「はぁ?」×7
 キョトンと鳩が豆を食ったような顔をする面々。その顔を見渡しながらカカンバーはみんな何を期待したんだろうといぶかしんだ。
「公爵って、あの公爵?」
「ガチムチホモが好きな、才能の無駄遣い、ついでに権力とお金の無駄遣い公爵?」
「ブレンダ、それは言いすぎだと思うけど」
「ホンマのことやん」
 ブレンダは軽く唇を尖らせる。公爵のことはあまり好きではないらしい。
「まぁ、それはともかく」
 ごほんと咳払いしながらアルノーは所在なさげにみなを見回しているカカンバーを見た。
「カカンバー、本当にシュテファン公爵様だったのか?」
「んだ。間違いない」
 こっくりと頷くカカンバーだが、怪談を期待した面々はあまりの期待はずれのオチにガックリとした表情をしている。
「そもそも、なんでシュテファン公爵がカカンバーのベッドにいるんだよ?」
 不満げにそう聞くキキにカカンバーはちょっと首を傾げて答えた。
「我慢が出来なかったそうだけどのう?」
「え?」
 ぴしりと固まる面々。
「うわ! 寒! 今ぞくぞくっと来た!」
「うえ~ん、鳥肌立っちゃったよぉ!」
「恐い! それは恐い!」
「よく無事だったわねぇ」
「まさかの一番の怪談だね」
「一也君、ホンマやわ。カイダンすると涼めるもんやね」
「いや、カカンバーさんの話は怪談とはちょっと違うような……」
 ブツブツという一也の言葉をさえぎってウェインがさらに爆弾を投下する。
「公爵は空間転移の高位術者だもんなぁ。三教に遊びに来るなんてお手の物かぁ」
 みなぞくりとした顔でウェインを見た。
「うっわぁ、忘れてたぁ」
 頭を抱え込むブレンダ。
「カカンバーさん、ファイト!」
 カカンバーの手をギュッと握り励ますシェーン。
「頑張ってどうにか出来るものじゃないけど、まぁ、気をつけて」
 アルノーも困ったようにアドバイスを送るが、
「んだ。気をつけてみる」
 当の本人だけは呑気な笑顔を浮かべていた。

(前篇完→後篇に続く)

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

カカンバーさんの口調が上手く書けない。
シラ様、このプラリアを読んでいらっしゃったら、ご指摘をお願いします。
あ、その前に。
カカンバーさんを勝手に出して申し訳ありません。m(_ _ )m
前篇がなんとか完成したのでちょっとずつアップします。
今日はもう遅いので、以前予告としてあげた分だけ。前篇の残りは明日アップします。

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

12月はクリスマス。
1月はお正月。
2月にバレンタインがあって、3月にはホワイトデー。
と、冬はイベントが目白押しなのに、夏は何にもないなぁとプラリアネタに困っていたCiaですが……

肝試しを忘れていた!!( ̄□ ̄;)!!

こんな面白ネタ見逃すとは!?
と、もう秋風が吹いているにもかかわらず、大慌てで「肝試し」ネタを振ります。


ゆうれいみたり(前篇)


「……と、そのとき遠くの方からぽたり、ぽたりと水が滴る音がするのです。そして、コンコンとドアをノックする音が……そしてドアがギィィィと開く音がして……『ここでもない』……ポタ、ポタ…コンコン…ギィィィ『ここでもない』。音はだんだん自分に近づいてきます。……ポタ、ポタ…コンコン…ギィィィ『ここでもない』。……ポタ、ポタ…コンコン…ギィィィ『ここでもない』。……ポタ、ポタ…コンコン…ギィィィ『ここでもない』。……ポタ、ポタ…コンコン…ギィィィ『ここだぁ!!』。」
「うひゃあああ」
「きゃああああ」
 ろうそくの明かりに照らされたウェインの顔がくわっと声と共に恐ろしげな表情になる。
 その表情にたまらず、シェーンとブレンダは悲鳴をあげた。
 それからほぉとため息をつく。
「ああ、恐かったぁ」
「ホンマやわぁ。ウェインさん、演劇の才能があるんとちゃう?」
「あはは。そう言っていただけると話したかいがあるな。はい、僕の番は終わり」
 そう言ってからフウッと持っていたろうそくを吹き消した。
 ウェインのろうそくの明かりが消え、ブレンダたちを取り巻く闇はますます暗さをます。
「うわぁぁ。どんどん雰囲気出てきてるよぉ?」
「そやなぁ。こりゃ、ホンマにホンマ、モノホンが出てくるんとちゃう?」
「や、止めてよ、ブレンダ」
「そうよ、それはしゃれにならないわよぉ」
 ブレンダの冗談にいつになくシンシアがまじめな表情で返した。
「物理攻撃は効かないし、私の魔法攻撃もどこまで効くか分からないのよ?」
「そうなん? そりゃ大変やな」
「とはいえ、カイダンが降霊術になるのかどうかは知らないけどね。一也く~ん、こんなので本当に霊ってやって来るの?」
 シンシアが首を巡らせるとそこには自信なさそうに首を傾げている一也がいた。
「いや、僕らの世界でそう言われているけど、本当に霊が現れたという話は……」
「ないの?」
「そういう噂だっていうか……その話すら一つの怪談っていうか……」
 戸惑ったようにつぶやく一也をブレンダは不思議そうにのぞき込んだ。
「つまり、本当か嘘か分からん話を怖がっているちゅうわけなん?」
「いや、そう言われるとそうなんだけど……」
 と一也は少しムッとした表情をブレンダに向けた。
「と言うか、ブレンダはいっつも僕の言うことに色々つっこんでくるけど、嫌ならやらなきゃいいじゃないか」
 そう言って席を立とうとした一也を慌ててブレンダは止めた。
「待った待った一也君。ごめん、ごめんって」
 ブレンダに腕を掴まれて一也は渋々という顔で椅子に座り直す。
「そやなくて、うちは一也君ところの文化に興味あるだけや。一也君が教えてくれたそっちの風習はホンマに試してみたいんや。やけど、うちらの風習と違うところがたくさんあるから、色々戸惑うだけなんや」
 「な?」と説得するブレンダに一也は不承不承頷いた。

 新しい物好きのブレンダにとってニホン人の風習はどれも興味をかき立てられるものだった。
 今回もいつも以上に暑い夏の夜、夕食後食堂で涼んでいたとき何気ない一也の一言で始まったのだ。
「こんな時ニホンでは怪談や肝試しをするんだけどなぁ」
 ピクリと真っ先に反応したのはブレンダだった。
「カイダンってなんや?」
「教えて教えて」
 と続けて反応したのはいつも一也のそばにいるシェーン。
「そんな降霊術の方法は知らないけどぉ?」
 一也の説明を聞いて首を傾げたのはシンシア。
「ニホン独自の魔術かもしれないな」
 真面目に受け答えたのはアルノー。
「やってみたら分かるんじゃない?」
 そう提案したウェインに
「やろうやろう!」
 大はしゃぎしたのはキキだった。
 結局その場でいた者でカイダンと肝試しを体験してみることになったのだった。
 ろうそくを用意し、一つ話し終わるごとにろうそくを一つ消す。全部のろうそくが消えると幽霊が現れるという一也たちの風習は、実のところブレンダたちにとって不可思議以外何ものでもないものだった。
 まず、そんな降霊術は聞いたことがない。
 魔法陣も呪文も使わない魔術が効力を表すということをブレンダたちはまったく信じていなかった。もし信じていたら、暗黒魔法に通ずる行為をやろうとはしなかっただろう。
 次に、恐い話をして涼むという風習も理解不能だった。
 恐い話をしようが楽しい話をしようが暑いものは暑いのじゃないか。それでどうやって涼むのか。
 そういった疑問を解消するためにも、まずはやってみようということになったのだった。

「……とそこには、パンがぎっしりつまった人の形したものがあるだけやったということや」
「うはぁ。なんか夢に出そうな話だね」
「恐~い。ブレンダそれ、本当にあった話なの?」
「さぁ? そういうことがあったという噂やで」
 ブレンダがわざと声のトーンを落として脅すように言うとシェーンは真っ青な顔をして隣にいた一也にしがみついた。
「私、今度から変な草は絶対に食べない」
「胸が大きくなるという草でも?」
「うっ」
 ウェインの言葉に一瞬逡巡したシェーンだが、すぐに我に返ってウェインを睨み付けた。
「ウェイン、後で覚えていなさいよ!!」
「さて、これでうちの話はおしまいやな」
 ブレンダフウッと自分のろうそくを消す。ろうそくのか細い灯は消え、雰囲気は否が応でも盛り上がった。
 ろうそくの火は後残すところ一つだけである。
 そのろうそくの火にみなの視線が集まった。
「残すところはトリのみやな」
「あと、誰が話していなかったっけ?」
 アルノーの疑問に巨漢の男性がのっそりと答えた。
「ワシやけど」
「あ、カカンバーさんか」
「ん~、でもワシ、みんなが話していたようなこと話すのはちぃ~っと無理かなぁ?」
 自信がなさそうにそう言うカカンバーをキキが励ました。
「大丈夫だって。自分が恐いなと思った話をすればいいんだよ。ウェインみたいに芝居がかることないんだから」
「そうかぁ?」
 不安げにみなを見回すカカンバーをみなそうそうと言うように頷く。それだけで、今までさんざん恐い雰囲気だった場がほっこりと温かい雰囲気になってしまうのは人徳のなせる技だろう。
「じゃぁ、ワシやってみる。ホントにあった話だけど、いいかなぁ?」
 カカンバーはもう一度確認するようにみなを見回した。その何ともいえないのんびりとした口調にみなカカンバーの言葉の意味すらも吟味せず、何となくほのぼのとしながら頷いた。
「OK!」
「もちろん!」
「楽しみにしてるよ!」
「じゃぁ、この間この第三教導中隊であった話なんだけどなぁ?」
「へ?」×7
 だからこの一言目でみな頭から冷水を浴びせかけられたような気持ちになった。
「こ、ここで!?」
「ホンマにあった話やって!!」
「やだ! 恐い!!」
 思わずカカンバーから身を引き彼を凝視する面々。
「カカンバー、それ本当にここであった話なのかい?」
 なんとか冷静さを保とうとするアルノーの言葉にカカンバーはこっくりと頷く。
「んだ」
「よくある、怖がらせるための前置きとかじゃなくて?」
「前置きってなんだぁ?」
「カカンバーさん自身が体験したことなんか?」
「ワシが体験したことだ」
 みなおそるおそるお互いの顔を見回した。
 幽霊なんていないと信じていたからこその怪談である。だが、もしいるならこれはとっても危険なことをしているのではないだろうか。

 (前篇2へ続く) 
衝動的にプラ・リアです。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
PoDの世界を色々考察しよう5
PoDの世界を色々考察しよう5.1

上記話の続きです

「はあぁぁぁぁぁ」
「何? ベティ。盛大なため息ね?」
「ああ、ごめん。フロル」
 そうは謝ってみるが、遠距離通信機の前でまたもや盛大なため息が漏れるベアトリスだった。
「一体何があったのよ?」
 苦笑する幼なじみにベアトリスも苦笑を返す。
 いつもの報告はあらかた終わっている。この辺で女王と騎士ではなくただの幼なじみ同士に戻ってもいいだろう。
「実はな……」

「ふふふ。相変わらず手を焼いているみたいね」
「笑い事ではないぞ、フロル。まったくあいつらと来たら」
 わざとらしく眉間に皺を寄せているベアトリスだが、本当に頭が痛くなるような王都の事案と比べればたわいない悩みだ。だからついつい笑みが漏れるフロルヴァーナである。
「面白い子たちじゃないの。こんな状況なのに絶望もしないで悪戯をするなんて」
「私としてはもう少し緊張感を持って欲しいんだがな」
「うふふふふ。そんなこと言って、本当は17歳のブレンダにすら見合い話が来ていることを妬いているんじゃないでしょうね」
 冗談のつもりで言ったフロルヴァーナであったが……。
「うっ!」
「あら? 意外に図星?」
 唇を引きつらせて固まったベアトリスに「あらら」とフロルヴァーナは眉を上げる。
 それから破顔一笑、おなかを抱えて笑い出した。
「おっかしい~! ベティったら! 気にしていない言いながらすっごく気にしているじゃない!」
「別に、気にしているわけじゃ……ただ、17歳で見合いの話って来るんだって思っただけで……」
「ベティの17歳は、剣、剣、剣だもんね~」
「フロル、フロル、剣、フロルだ」
「あら、恋人が出来なかったの私のせいにするの? 剣、剣、私、剣でしょ」
「自分がそこに入ることは認めるんだ」
「認めますよ~。でもベティが結婚できないのは絶対私のせいじゃないですよ~」
「…………」
 いつもの軽口のつもりで言ったのにベアトリスが黙ってしまったから、フロルヴァーナはギョッとした。
「え、え~と、ベティ?」
「剣、剣、剣はやっぱりまずかったかな?」
「…………」
 どうやら真剣に悩んでいるらしい親友にフロルヴァーナはこらえきれずに吹き出した。
「あはははは」
「そりゃ、フロルはすでに子供がいるからさ……」
 遠距離通信機の向こうで口を尖らせている親友の様子にさらに笑いが込み上げる。
 ひとしきり笑い、苦しい息の中でフロルヴァーナは何とか口を開いた。
「いいじゃないベティには。かっわい~部下がいるんだから。ね?」
 フロルヴァーナのその言葉にベアトリスは首を傾げた。
「確かに部下は可愛いが……それとこれとどう関係があるのだ?」
「うふふふ。別に~。ベティは部下が大事じゃないの?」
「いや、だから部下は大事に思っているが……どうも言葉に含みがないか?」
「うふふふふふ」
 夜のしじまを縫って楽しそうな笑い声を上げる女王としきりに首を傾げ続ける忠実なる騎士。
 いつもと変わらぬ日常が今夜も更けようとしていた。

「はっくしょん!!」
「あれ? アルノー、風邪?」
「う~ん、最近ちょっと冷えてきたかな~」

END

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

女王と隊長コンビ好きです~(=⌒▽⌒=)
なんかこのコンビに突然会いたくなって、突発的に没ネタを引っ張り出してきました。
どちらもNPCなので、マスターのイメージを壊していたらスミマセン。m(_ _ )m
まぁ、ネタの一つと思って読んで下さい。
あ、ちなみにブレンダは
「面白そうだから隊長とアルノーさんをくっつけてみよう( ̄▽+ ̄*)」
の会員です。
でもCiaとしては
「この二人は最終回が終わって後日端になっても朴念仁のままなら面白いな(b^-゜)」
と思っています。(←悪魔)
実はあまりキャラクターもストーリーも作り込んでいません。
書きながら作り込んでいます。

同時にチビチビとブレンダのプラリアと言いますかアルヴァの過去ばなしを考えています。
ブレンダの過去ばなしのためだけに生み出したけど、このキャラ好きだ~。

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
アーシャ:お転婆少女。自分が興味を持った剣術しか習わないため、学校の成績はいまいち。だが、剣術にはたぐいまれなる才能を秘めている。攻撃系魔法を得意としているが安定性にいまいち欠ける。14歳。

アリヤ:アーシャの姉。若くして剣術と魔術の師範代を務める。ただし、攻撃系の魔法を得意とするアーシャとは対照的に支援系の魔法を得意とする。21歳

コーニャ:異世界から来た男の子。生まれはカナダらしい。14歳。

*****

ミーシャ:コーニャの兄。大学生。21歳。

ジンジャー:“海の女王”号の船長の娘。14歳。

ベンジー:“海の女王”号の船員。

グレアム:“海の女王”号の船長。

*********************

「*******」
「*******」
 耳鳴りがひどい。
 わんわんと何度も頭の中でひびく。
 じりじりと照りつける太陽も熱い。
 ーー太陽?
 空はどこまでも青いのに、何か違和感を感じる。
 ーー青い?
 どこまでも青い空にも何か違和感がある。
 ーー何だろう? 何かがおかしいのに何がおかしいのかが分からない
 夢を見ているときと同じ感覚。
 だけど、肌にあたる大地の感覚は夢ではなく

「ベンジーさん、あの?」
 僕は戸惑った顔をベンジーに向けた。そんな僕の顔にベンジーは苦笑を返した。
「紹介するよ。彼女はジンジャー・グレアム。船長の一人娘」
 ベンジーの言葉にも彼女は僕の方を見ない。ツンとすましたままテーブルについている。
「それからジンジャー、彼がコーニャ。君と同室になる男の子だよ」
「同室!?」
 僕は慌ててベンジーを見た。
「君は船長の家族が使う部屋に泊まるんだよ。聞いてなかった?」
 ベンジーの言葉に僕は急いで首を振る。そんな僕にベンジーは肩をすくめて見せた。
「いきなり女の子と同室でビックリしたか。でも船長の部屋は特等室だから、同室といっても部屋は別々だっただろ?」
 僕は慌てて自分の部屋を思い出した。扉が二つあったのは覚えている。一つは船の廊下に、そしてもう一つはきっとクローゼットだと思って開いてはいなかった。あの扉がジンジャーの部屋につながっているのだろう。
「確かにそうだけど……でも……」
「パパの部屋よ」
 突然女の子、もといジンジャーが口を開いた。
「パパが私と過ごすための部屋よ」
 彼女はそう言いながら僕を睨んだ。何か文句でもあるのかと言いたげな瞳だ。
 僕は何となく彼女のその言い方にムッとし、わざとらしく頭を下げた。
「どうもありがとうございます」
 当然という顔でジンジャーは前を向く。その態度に僕はさらに腹が立った。
「さぁ、席に座って」
 ベンジーはそう言いながら僕の席を引いた。僕は渋々その席に座った。彼女とかなり気まずい食事になりそうだが、ベンジーがいるから大丈夫だろう。
「じゃあ、僕はこれで用事があるから」
 ところが僕が席に座るとベンジーはさっさとどこかへ行ってしまった。本当はものすごく忙しいのに僕のために時間を割いてくれたんだとは思うけど、ジンジャーと二人きりにされて僕はそんなベンジーを恨めしく思った。
 しーんと気まずい雰囲気の中、黙々と食事は進んでいく。
 ジンジャーは一言も口をきかず、僕としてもあえて彼女の機嫌を取る気もなかった。
 船の奥ではピアニストが次々とヒットソングを奏でている。
 その音楽だけが頭の上を通り過ぎていく。
 僕はただひたすらに食事を口に運び、この気まずい空間から逃げ出そうと考えていた。
 おかげでせっかくの豪華な食事も味すら感じなかった。
 やがてデザートが出て来ると僕はホッとした気分で最後の詰め込みのために手を伸ばした。
 だがジンジャーは途端にくるりとステージの方を向いた。
 何が起こるんだろうと僕はちらりと視線を走らせる。
 ステージにはマイクが備え付けられていた。
 ジンジャーの食いつきは真剣で、今から起こることの全てを見逃すまいという態度だった。出てきたデザートにも紅茶にも手をつけない。
 ジンジャーの態度がそうだから僕はついついあまのじゃくな気持ちで、わざとステージに興味がない振りをした。
 さっさとデザートを食べて席を立とうとした瞬間、ステージがパッと明るくなって船長が出てきた。
 ーーああ、そうか。
 僕は納得した。
 自分の父親が出るから、ジンジャーは真剣にステージを見守っていたのだ。
 はっきり言ってそんなジンジャーに対抗するために僕はさっさと自分の部屋に帰ろうかと思ったが、船長には部屋のことも含めてたくさんお世話になっているのでさすがに失礼に当たるかと思って座り直した。
 僕が船長に無礼なことをするとそれはつまり僕の父親が船長に迷惑をかけたことにもなるからだ。
「皆さん、ようこそ“海の女王”号へ」
 ステージの上でグレアム船長はにこやかに挨拶をする。父親の挨拶にジンジャーは今日初めての笑顔を唇の上にのせていた。
 僕は船長の挨拶より船長の言葉に一つ一つ表情を変えるジンジャーの顔を見つめていた。
 何だかとっても面白くない気持ちだったからだ。
 僕だって自分の父親は好きだ。たとえ、夏休みの約束を反故にしようと自慢の父親だ。
 だけどここまであからさまな態度はしない。
 しかも他人を無視してまで父親への好意を見せつけたりしない。
 彼女の態度に嫌みな雰囲気を感じ、僕はますます彼女が嫌いになりそうだった。

「やぁ、楽しくやっているかい?」
 挨拶が終わると船長はまっすぐ僕たちの席にやってきた。
 満面の笑顔になるジンジャーに対して僕はわずかに作り笑いを浮かべる。
 だが、船長が真っ先に僕に声をかけたので、ジンジャーの瞳は突然険しくなった。
 ーー何なんだよ、この子!?
 ステージの上ではウェルカムパーティーが始まり、歌手やダンサーが次々と出てきた。大人たちは中央のフロアでダンスを始めたが、僕とジンジャーも含めて数人の子供には退屈なものだった。
 僕の視線を追って船長はわずかに苦笑をして見せた。
「子供向けじゃないからつまらないか」
「いえ、そんなこと無いです!」
 僕は慌てて首を振った。
「料理も美味しかったですし、とっても楽しんでいます!」
 僕の言葉に船長はおかしそうに笑った。
「コーニャ君、無理はしなくていいよ。子供向けのパーティじゃないんだ。ちょっとぐらいは若い子向けの曲を弾くように言ってはいるのだが、今の子がどんな曲が好きかはおじさんには分からないからな」
「お父さん、でもそれは仕方ないことでしょ。船の旅をする子供は少ないのだもの」
 ジンジャーはそう言いながら僕を睨む。少しでも父親が非難されることが嫌らしい。
 その瞳にカチンときたが、自分の父親のためにも我慢をした。
「そうです。僕は船に乗ること自体が楽しみでしたので、パーティなんてどうでもいいんです」
「どうでもいいか」
 船長の苦笑に僕はしまったと舌打ちをした。案の定ジンジャーの瞳は険しくなっている。
「あ、いえ、その」
 何か言いつくろうとする僕に船長は笑いかけた。
「いいよ、コーニャ君の言うとおりだ。まだ仲のいい友達もいないのにパーティなんて楽しめないな。一応船ではいくつか子供向けのイベントを用意しているから、気が向いたら参加してくれないか?」
「あ、はい」
 僕の返事に船長はにこやかに笑うと別のお客に挨拶するために去って行った。
 そして後に残されたのは食事前より冷ややかなブリザードだった。
「…………」
 無言で僕を睨み続けるジンジャー。
 何か言うべきかとしばし思い悩んだが、彼女が実は一言も僕に話しかけていないことに気付き、何も言うべきではないと思い直した。
 そもそもパーティを楽しめなかったのは彼女のせいなのだ。
 僕が悪いわけではない。
 僕は大急ぎで紅茶を飲み干すと、「おやすみ」と形だけの挨拶をして自分の部屋へ帰った。
 部屋に帰るとそっともう一つの扉を開けてみる。
 扉の先はリビングになっていて、ソファとテレビが置いてあった。その先にはもう一つ扉がある。きっとあれがジンジャーの部屋だろう。
 彼女と部屋が隣同士ではないことに安堵しつつ、何となく先行きが不安になってきた旅路にため息をついた。
 友好的ではない彼女と顔を合わせたくはないが、お互いの親の関係上そうもいかないだろう。
「なんか、めんどくさいなぁ」
 早く横浜について父親の顔を見たいと、この時ばかりは真剣にそう思ったのだった。

 海は飽きるほど穏やかで船の上の僕は3日でその日常に飽きた。
 子供向けのイベントは、どうせジンジャーが参加しているのだろうと初めは遠慮していたが、彼女がいないと分かって顔をのぞかせてみると退屈なくらい幼い子供向けで、この船が僕とジンジャーのために航海しているわけではないことを嫌と言うほど思い知らされた。
 そもそもこの船に乗っている10代の子供は僕とジンジャーだけである。
 あとは、50代、60代のおじいさんやおばあさん。それと暇をもてあましている大学生ぐらいだった。
 ちょっと身なりのいい新婚夫婦や幼い子供を連れた若夫婦もいたが、どこか声をかけづらい雰囲気があって自然遠慮をしてしまった。
 正直なところ特等室はそういう客が多かったけど。
 ジンジャーはいつもデッキにすわって本を読むか、ペットの猫を相手に絵を描くかしていた。
 僕は船に備えられているプールで泳ぐ毎日である。
 時にはベンジーが釣りに誘ってくれることもあった。
 ベンジーたち船員はみないい人ばかりで、僕はついつい船倉の彼らの部屋に入り浸るようになっていった。
 コックのジミーはよく味見をさせてくれるし、ジャズシンガーのジャンはポップソングを歌ってくれた。カイルは僕にポーカーを教え筋がいいと褒めてくれたし、船医のレオン医師はそんなカイルを叱っていた。
「僕、特等室じゃなくて三等室が良かったな」
 ある時僕はため息混じりにそう言った。三等室の方がベンジーたちがいる部屋に近かった。
 ジンジャーとは一言も口をきいていない。そもそもリビングにすら顔を見せていない。
「うらやましい悩みだな」
 そんな僕の言葉にベンジーは笑う。
「でも、その方が色々気を遣わなくてすむじゃん」
 口を尖らせる僕をベンジーは大笑いした。
アーシャの冒険といいながら、いまだにアーシャが出て来ないワナ。
登場人物紹介は地味に設定を変えています。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
アーシャ:お転婆少女。自分が興味を持った剣術しか習わないため、学校の成績はいまいち。だが、剣術にはたぐいまれなる才能を秘めている。攻撃系魔法を得意としているが安定性にいまいち欠ける。14歳。

アリヤ:アーシャの姉。若くして剣術と魔術の師範代を務める。ただし、攻撃系の魔法を得意とするアーシャとは対照的に支援系の魔法を得意とする。21歳

コーニャ:異世界から来た男の子。生まれはカナダらしい。14歳

イリス:アーシャたちの村の村長。若い頃、アーシャたちの国を救った救国の英雄でもある。

シジー:別名「氷姫」と呼ばれている都の神官。

マリア:アーシャやアリヤたちと同じ村で生まれた少女。幼くして魔術と剣術の才能に秀で、都の王立学校に特待生待遇で入学した天才少女。17歳。

ユーリ:防御系魔法を得意とする槍術師。19歳。

ゾフィー:多彩な魔法を扱う弓術師。26歳。

*****
ミーシャ:コーニャの兄。大学生。21歳。

ジンジャー:“海の女王”号の船長の娘。14歳。

ベンジー:“海の女王”号の船員。

グレアム:“海の女王”号の船長。

*********************


「*********」
 わんわんとなる耳鳴りの向こうで何かの音が聞こえる。
 ぱたぱたと頬にあたる水しぶきが冷たい。
 焼け付くようなのどの痛みが、これが夢ではないことを教えてくれたけど。
 それでも僕は、ただぼんやりと青い空を眺めていた。
 これが夢ではないなら、現実って一体何なんだろう。

「コーニャ、お父さんからの手紙よ」
 母が僕に渡してくれた白い紙を僕はひったくるように受け取った。
 船の上から出したと分かる消印をちらりと確認して、父の手紙をむさぼるように読む。
 胸は期待でドクンドクンと脈打っていた。
 『やぁ、コーニャ。元気かい。約束を守れなくてごめん』
 父のお決まりの謝罪の言葉を慌てて読み飛ばす。僕が今聞きたいのはそんな言葉ではない。
 『……ということで、父さんは上海まで行かないことになったんだ』
 そう書かれてあった父の言葉に胸が躍った。
 ということは父さんは早くに帰ってくるということなのだろうか。
 だが、次の言葉に僕の胸が急速にしぼんでいくのを感じた。
『とはいえ、帰りはこの船に乗って帰ることになるから、コーニャの夏休みには間に合わない。そこで提案なんだが、』
 ところがその次ぎに書いてあった父の言葉は、父が今まで僕に提案した中で一番素敵な提案だった。
『コーニャは夏休みになったらすぐに父さんの船を追いかけて横浜まで来るというのはどうだろう? ちょうどその頃なら“海の女王”号が出港するはずだ。あの船は知っているよね。航海士も機関士もみんな父さんの知り合いだし、いい人だ。きっと無事にコーニャを横浜まで届けてくれると思う。そして横浜から今度は父さんと一緒に帰ろう。コーニャの年では大きすぎる冒険かもしれないけど、挑戦してみる気はないかい?』
 僕は父の手紙から顔を上げた。心配そうに僕を見つめる母とニヤニヤ笑う兄。
 その二人に僕は大きく頷いた。
「母さん、兄さん。僕、行くよ。一人で船に乗って父さんのところへ!」

 それからは大変な毎日だった。
 パスポートを作り、荷造りをし、帰りは少し授業に遅れるので学校に報告に行き。
 そして母さんは、僕を“海の女王”号の船長のところへ連れて行き、挨拶をした。
 船長はニコニコ笑いながら母に言った。
「私の娘も乗るんですよ。ジンジャーと言うんですがね。コーニャ君と同じ年だし、すぐに仲良くなりますよ」
 同い年の子が女の子だということにはガックリきたが、その方が逆にうっとうしくなくていいかと思い直した。
 そんなことぐらいで僕の心に灯った冒険の火が消えたりはしなかったのだ。
 すでに学校の友達には自慢をしまくっていた。
 いつも僕に夏休みの自慢をしていた子たちも僕のこの大冒険には心底羨ましそうで、僕は初めて優越感に浸ることが出来た。
 そう、あとは夢に描いた大冒険を体験するのみ。
「ねぇ、母さん。船って沈むかな?」
 港へと向かう車の中で母にそう尋ねると母はミラー越しに呆れたような顔をよこした。
「コーニャ、今から乗る船はとても大きいから簡単には沈まないのよ」
「でも、嵐が来たらどんな船でも沈むって父さん言っていたじゃない。あのタイタニック号だって」
 僕は数年前に見た映画を思い出していた。大昔にあった有名なこの沈没事件は何度も映画化されて上映されている。
「だから、“海の女王”号だって」
「コーニャ!」
 ミラー越しに母は僕を睨んだ。
「不吉なことを言わないで」
 母の頬が若干青ざめていることに気付き僕は口を閉じた。
 “海の女王”号は父さんが造った船だから絶対安心だと思っていたし、それに僕は泳ぐのが得意だから大丈夫だと言おうと思ったが、やめておいた。
 僕にとってもそうだけど、母さんにとってもこれは大冒険なのだ。
 14歳の僕に1人で海を渡らせるなんて。
 運転している母の代わりに兄が振り返って僕にニヤリと笑いかけた。
「お前、タイタニック号ごっこなんかするなよ」
「あのね」
 僕は呆れたように兄を睨んだ。
「そんな馬鹿馬鹿しいことするもんか。兄さんじゃないんだから」
 兄はまたもやニヤリと笑って前を向いた。
「したくても相手がいないかぁ~」
 あまりに馬鹿馬鹿しい兄の言葉に返事するのもあほらしくて、僕はしらけた視線を兄へと向けた。
 だがそれはすぐに、窓に映った景色へと奪われた。
 税関の古めかしい建物のそばを通り抜けると、そこにはまぶしい海と白い船体の“海の女王”号があったからだ。
「うわぁぁぁ!」
 窓にへばりつき夢中で“海の女王”号を見つめる僕を見て、兄と母が視線を交わしあったがそんなのはすでに関係なかった。
 あれに乗って1ヶ月近く海を渡る冒険が目前まで迫っているのだ。
 そんな些細なことが気になるはずがない。
 出国手続きと搭乗手続きが終わると僕の胸はもう張り裂けんばかりだった。
 タラップを駆け上がり、甲板から埠頭を見ると手を振って見送る兄と母が見えた。
 こちらも負けずに手を振ると大きく手を振り返してくれる。
「元気でね! 風邪引かないようにね!」
「父さんによろしくな!」
 大声でそういう二人にこちらも大声で答える。
「分かった! 兄さんと母さんも元気でね!」
「腹壊すなよ!」
「分かってる!」
「変なもん食うなよ!」
「分かった!」
「おねしょするなよ!」
 兄の最後の言葉にいい加減腹が立って何か言い返そうとしたとき、ぼぉ~と大きな汽笛が鳴った。
 出港の合図だ。
「コーニャ、気をつけていくのよ! 船長さんたちにご迷惑かけちゃダメよ」
 母の声がわずかに震えていることにわざと気付かないふりをする。
「うん! 横浜でお土産一杯買ってくるね!」
 ガラガラと碇が船へと巻き上げられていく。
 岸にたくさん引っかけられていた綱がどんどん甲板へと放り投げられ、巻き上げられていった。
 そしてやがて海中からたくさんの海藻を引っかけた碇が姿を現す。
 がしゃんとそれが船縁に巻き上げられた瞬間、ぐらりと船が揺らいだ。
 ぼおぉ~っとまたもや大きく汽笛が鳴る。
「お前、俺がいなくても泣くなよ!」
 まだ兄さんは馬鹿なことを言っている。僕は大きく舌を突き出すと、
「兄さんこそ、僕がいなくても泣かないでよね!」
 と返した。
 船はぐらりぐらりと揺れている。
 やがてそれはゆっくりと岸を離れ始めた。
「じゃあね! 行ってくるね!」
 大きな声で叫んでみたが、返ってきた二人の声はもはや言葉となっていなかった。
 岸に立つ二人の姿が初めはゆっくり、そしてどんどん早く小さくなってしまった。
 船が最後の汽笛を鳴らしたときには、二人の姿どころか岸まで見えなくなっていた。
 あとは、ただ、前に広がる大海原だけ。
 僕の一世一代の大冒険は、今ここから始まるのだった。

 会ってみて分かったのだが、ジンジャーという女の子はとても嫌な子だった。
「ここが、今日から君の部屋だ。何か困ったことがあればすぐ僕に言ってくれればいいけど、今はちょっと忙しいから夕食時に部屋へ行くよ。それまでは船の中をどこでも探検していいよ」
 部屋に案内してくれたベンジーという船員は兄より少し年上で、親しみやすい青年だった。
 彼となら楽しくやっていけそうだと思っていたのに、夕食の席にいたのはつんと取り澄ました栗毛の女の子だった。