アルノーさんの部屋に本が山積みの理由
①書庫では本は読めない(照明が暗い。読む場所がない)
→読みたい時は部屋へ持って行って本を読む
→一冊一冊取りに行くのは面倒なのでまとめて借りる
→ついでにブレンダたちが探してくれと頼んだ本も借りておく
→借りに来たブレンダたちが書庫に返さずアルノーさんの部屋に返す→本が山積み
②実は全部アルノーさんの私物
で、ファイナルアンサー?
あと、鎧については自分の半知半解ぶりが色々露見しちゃっています。
やっぱり、詳しい人の解説待ちます。
ということで、驚きの二部構成になった「部屋の事情」、皆さんの応援に応えての続きです。
5.12事件
「やっぱりやめましょうよ。アルノーさんに悪いわ」
「ええやんええやん。面白そうなんやし」
「そうそう。こ~んな妙齢の美女たちがベッドにいるのに、無視しているアルノーさんが悪いのよ」
「シェーン、美女は図々しいで。せめて美少女にしとこ」
「ふふ。ブレンダも」
「おーい、君たち、もうちょっと静かに」
「やっぱり悪いわ」
「はいはい、アニスちゃんはちょっと外に行こうね」
「あ、ちょっと、キキさん!」
『経済白書』の最後のページをめくりながら、アルノーは心の中で首を傾げた。
なぜだろう。どうも背後が騒がしい気がする。
しかし、あと1ページで本が読み終わるという誘惑に勝てなかったアルノーはそのまま読み進めようとして、「ムニ」と妙に柔らかい感触を背中に感じた。
いや、「ムニ」というか「ムニュ」というか「ズシ」というか、こう、柔らかくてしかも妙に弾力のあるちょっと重い物が背中に乗ったのだ。
「え!?」
と我に返る暇もなく生暖かい息がふぅっと耳をくすぐる。
「アルノーくん? ちょっとお願い事があるんだけど、いいかなぁ?」
「ええ!? シ、シ、シシシシ、シンシア!?」
「そう」
ふぅっともう一度シンシアの息がアルノーの耳をくすぐった。と同時にさらにムニッと柔らかいものがアルノーの背中に押しつけられる。
「ちょっとアルノーくんにぃ、教えてもらいたいことがあるんだけどぉ、いい?」
「え、いや、そ、それはいいけど」
「ホント?」
「う、うん。いいけど、その、ちょ、ちょっと離れてくれるかな?」
「えぇ~、どうしてぇ?」
「いや、どうしてって、その、えっと、あの、あたっている、あたっているから」
「何がぁ?」
「えっとね、君の、あのね、その……と、と、とにかく、ちょっと離れて」
「え~」
シンシアはアルノーのいうことを聞くどころか、さらにギュッと胸をアルノーの背中に押しつけた。何とも言えない感触がアルノーの背中に広がり、アルノーは頭の先まで血が逆流するのを感じた。
「とっ! とにかくっ、ちょっと離れてくれないか!」
慌ててシンシアの体から身をはがそうとした時、ごうっと風が起こり、びりびりと壁が振るえた。
「え?」
窓へ視線を移すと、この世で最強の生き物と呼ばれる者の顔がある。
「オ、オ、オルタァ!?」
アルノーの愛竜オルタが、むっとした表情でアルノーを見つめていた。もし竜に表情があるならば、だが。
「待て、誤解だ! これは、何でもないんだ!」
まるで浮気現場を妻に見つかった夫のようにアルノーは慌てふためきながら腰を椅子から浮かした。
途端に何かがピンと椅子を引っ張る。
素早く身を翻し、アルノーから離れるシンシア。
ハッと気付いて慌てて身を翻したアルノーの目の前にガンとタライが落ちてきた。チッと舌打ちが起こる外野。
だが、そのタライをよけるために一歩後退したアルノーは床が滑るもので塗りたくられていることに気付いた。
「う、うわ!」
つるつると滑りながらも何とか体勢を整えようとつかまるものを手探りで探すアルノー。
ようやくつかんだと思えば、それも何かにつながっている感触がある。
慌てて身を翻せば、バフーと粉のようなものがやはり目の前に降ってきた。オオッと今度は歓声が上がる外野。
「き、君たち!」
ようやくどういう状況かつかめ始めたアルノーはキッと戸口を睨んだ。
が、これが失敗だった。
つるりと体勢を崩してしまったアルノーはどしんと床にしりもちをつく。
その時何かが足に引っかかる感触がし、バサッと壁から何かが飛んできた。
ゴロリと横転がりしてそれを避けたアルノーの傍らをシーツがもう一方の壁へと飛んでいく。パチパチと拍手が起こる外野。
「この!」
さらにゴロゴロと転がってくる桶や、床から飛び上がってくる網を避けたアルノーはバンと、怒りにまかせて薄く開いている扉を開けた。
その瞬間。
ザバァー。
最後のとどめとばかりに水がアルノーの頭にふりそそぐ。
ガコッとひっくり返った桶がアルノーの頭にかぶさるおまけ付きで。
うわぁぁぁと拍手喝采の外野を見渡せば、満面の笑みのブレンダ、シェーン、ウェイン。そしてちょっと心配そうにおろおろしているアニス。
ちらりと部屋の中を見れば、げらげらとおかしそうに笑っているシンシアと満足げな笑みを見せながら窓から部屋へと降り立ったキキがいた。
「さっすがキキさんやなぁ。イタズラを二段、三段どころか四段五段まで仕掛け、相手が油断した頃合いを見計らって最後の隠し球を仕込んでいる。なかなか真似できひんわぁ」
「そうだよねぇ。初めにシンシアさんでアルノーさんを油断させ、次にオルタで混乱させるのもさすがだよね」
「いやいや」
ブレンダとシェーンの褒め言葉にキキは大満足の微笑みを見せながら手を振る。
「シンシアちゃんとオルタの案はウェインだよ。あたしじゃここまでは凝れないよ」
「いえいえ」
キキの褒め言葉にウェインは恐れ入ったように彼女にお辞儀をする。
「キキの案があればこそだよ」
「いや、もともとはウェインの案だよ。それに、乗ってくれたシンシアちゃんや皆さんにも感謝☆」
ぺこりとキキもウェインや皆にお辞儀を返した。
わぁ、とまた拍手が起こる。
その中、一人取り残されていたアルノーにアニスがおろおろと声をかけた。
「あの、大丈夫ですかアルノーさん。私、一応止めたんですけど……」
おろおろとタオルを渡すアニスのタオルを受け取り、心配させないように彼女に微笑んだアルノーはくるりとウェインたちを振り返った。
「ウェイン~、キキ~、それに、ブレンダ、シェーン、シンシア~
」
部屋を見渡せばタライや桶、シーツや網、油や水でぐちゃぐちゃのどろどろ。
そんな中で5人は互いの健闘をたたえるかのようにハイタッチをかわしている。
わざわざベッドや本など邪魔になるものを廊下に出しているのが小憎らしい。
そう、自分が座っていた文机だけが唯一の聖域のように部屋の奥で鎮座ましましていた。
「君たちは~
」
怒り心頭のアルノーだが、5人は全く反省の色も見せずけろりとした顔をアルノーに向けた。
「アルノー、これは身から出た錆だよ。ここまでの大仕掛けをしている間君は、一度たりとも顔を上げて辺りを見回すという行為をしなかったんだから」
ウェインが諭すようにそうのたまうと、そうだそうだとブレンダとシェーンも相づちを打つ。
「そやそや。年頃の娘がベッドにいても気付かへんぐらいなんやからな」
「そうだよ。シンシアさんの胸には気付くくせに~」
「いや、あれは……」
つい、モワンとその感触を思い出して顔が赤くなるアルノー。
「そう、むしろ感謝して欲しいですね」
とウェインはニヤニヤ笑いながらアルノーの肩を叩いた。
「いい思いしたでしょ」
「ばっ!」
耳打ちするウェインに真っ赤な顔で怒ろうとするアルノーだが、ハッと気付いたように窓を見た。
「ちょっと待て、まさかオルタも……」
「そう、今回は参加者だよ」
キキが窓から顔を出して手招きすると、アルノーの竜オルタとキキの竜イカルガが同時に顔を見せた。
「結構ノリノリで助かったよ」
「オルタ~」
恨めしげな視線をオルタへ向けると、「フンだ。鼻の下伸ばしていたくせに」と言わんばかりにオルタはそっぽを向く。
「いや、あのさ。あれは不可抗力というか。いや、だから、機嫌なおしてくれよ」
途端に言い訳を始めるアルノーにブレンダたちはゲラゲラと笑い転げた。
「アハハハ。アルノーさん、ホンマにオルタの尻に敷かれているなぁ」
「仲が良くてうらやましいな~」
「案外、女性に縁がないのもオルタのせいではないですか?」
「試してみるぅ?」
ニッコリと無邪気な、だが少しばかり邪悪な笑みを見せるシンシア。
オオッと色めき立つ背後だが、アルノーはまだ気付いていない。
こっそりとアルノーの背後に忍び寄ったシンシアは、再びアルノーの背中に抱きついた。
「アルノーくん、ごめんなさぁい。悪気なかったんだよぉ?」
「え、あ、シンシア? あ、あの」
ムニムニと押しつけられる胸の感触に耳まで真っ赤になるアルノー。
ゴウッと巻き起こる風。
「ま、待て、オルタ。落ち着け」
一目散に部屋の外へ退避するブレンダたち。
「話せば分かる~~~!!」
アルノーの絶叫を最後に、ドカンと轟音が宿舎中に響いた。
THE END
あと、もうちょっと続くかも……