夏が近づいて、緑が鮮やかに照り映える草むらに。。。
その女はいた。
ひとり立ち尽くし、悲しみにくれているその後ろ姿を。。
しばし呆然と眺める。
女は時々嗚咽をもらし、静かに泣いていた。
「どうなさったのですか?
私に力になれることなら。。。」
つい声をかけてしまった。
「アナタ。。。」
夕暮れのため息のように密やかに、あまりにか細い声で女が囁いた。
「見たわね?」
謎めいた言葉とともに、女は振り向き。。。
チロリと舌を出して、妖艶に笑った。
「私をこの夕暮れに見てしまったモノは、もう帰れないのよ、何処にもね。。。」
「ついていらっしゃい」
私は、確認することもなく、背を向けて草むらの中へと分け行る女をフラフラと追っていた。
足元に、小さな虫の亡骸があったことにも気づかずに。。。
頭と細い四肢がバラバラに散乱した虫は、キラキラと光っている草の葉の先を
もう見えない眼に、虚しく照り返していた。
逢魔が時。。。
夕暮れは、魔に出会うトキ。。。
今宵は、ちょいと怪談風ですにゃ ペタ。